名目支出を新目標に! by Scott Sumner 

元日のFT.comより。へたれな訳者はリンク張りません!

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/201da1fe-4d23-11e2-a99b-00144feab49a.html?ftcamp=published_links%2Frss%2Fcomment%2Ffeed%2F%2Fproduct#axzz2GrdAJCTf


2012年、現代の中央銀行運営の教義が不適切だったというコンセンサスが広まった。1970年代以降、主要な中央銀行はインフレ目標に舵を切った。この政策レジームはその後四半世紀に渡って安定成長と低インフレをもたらし、うまく機能しているように思われた。しかし昨今、この標準的モデルにはどこか間違いがあるということが明らかになりつつある。

財政政策をめぐる論争を見ればいい。インフレ目標は需要刺激としての財政政策を時代遅れにするものと考えられていた。結局のところ金融政策も財政施策も同じ変数、つまり名目総支出、経済学者が「総需要」と呼ぶものに影響を与えるものなのだから。

中央銀行がインフレ目標を設定する際、この総需要の経路を設定することが不可欠だ。かくして財政刺激に残された役割はないということになる。にもかかわらずこの数年間も財政刺激の賛否について相変らず激しい論争が続いた。また、ほとんどの先進国において需要がもっとあった方が利益にかなうということが広く認知されていたのにもかかわらず、中央銀行家たちは成長に消極的だったり成長が不可能だとしているかのようだった。

インフレ目標が間違っていたのは二つの意味においてである。第一にインフレ率が、総需要を評価するための指標として貧弱だった。第二にインフレ目標は「流動性の罠」(中央銀行のお気に入りツールである金利が機能しなくなってしまうようなゼロ金利に近い状況)の影響を受けてしまう。

ここ数年、イングランド銀行は高いインフレ率を許容し過ぎていると批判され、その同時期にキャメロン内閣は財政緊縮しすぎだと批判されていた。この二つの批判のうち片方が正しい可能性はある(私は怪しいと思うが)が、両方が正しいことはあり得ない。英国の需要は過多なのか過少なのか? おそらく需要は過少なのであり、他方インフレ率は付加価値税や輸入物品価格の影響を受ける貧弱な需要指数だったというわけだ。

インフレ目標が間違っていたもう一つの理由は、物価「水準」でなく物価成長「率」を目標としたことだ。2009年の米国で物価が下落した際に、FEDはインフレ率を高めに誘導して下落分を修復することをしなかった。「過去を水に流す」アプローチを採った。これでは名目金利のゼロ下限制約という状況において実質金利を下げることは難しく、むしろかえって経済を流動性の罠に張り付けることに資することになってしまう。

そうなる理由は、経済が弱いとき、需要刺激に必要な力強いインフレ期待を生み出すには2%のインフレ目標でさえ十分でないからだ。膨大な貨幣がすでにあるが、これを循環させるためにはもっと高い支出の成長期待が必要だ。

ただしこれまでのさまざまな量的プログラムに意味がなかったという事ではない。それらによって資産価格が押し上げられ、より深い不況に落ち込むことが回避された。しかし迅速な回復を生み出すには不十分だったのだ。ユーロ圏は回復してすらいない。2013年、世界の主要な中央銀行は物価成長率でなく名目支出を目標とする新しい政策枠組みに移行する必要があることは明らかだ。

マーク・カーニーは12月11日のトロントでインフレ目標を名目GDP水準目標に置き換えることで金利を上昇させることを示すスピーチを行った。セントラルバンカーたちを前にして、だ。中央銀行は名目GDPの成長経路を4から5%に設定する。そしてそれを下回ったり上回ったりした場合には軌道に戻すということを約束する。名目GDP目標はインフレ目標よりも景気過熱時に緊縮的、不況期に緩和的であり、ビジネスサイクルをより安定化する。NGDPはまた、概ね安定した長期インフレ率を提供しつながらこれを行うことができる。

他にも多くの優位点がある。もし投資家たちが2008年にあのNGDP下落が直ちに修復されると知っていたら資産価格があれほど下落することはなかったし、需要もあれより安定していただろう。株や商品、財の価格はそれらの向こう数年の予測価格に強く影響される。つまり2008年暮れの厳しい資産価格下落は、中央銀行がNGDPをトレンドラインに復帰させる行動をとることができないと思われたことを反映していたのだ。

NGDP目標に移行するとインフレ率のアンカーがなくなってしまうと心配する向きもある。しかし実際のところ、インフレに関連すると思われている問題のほとんどはむしろ高く不安定なNGDP成長に関連している。賃金は国民所得の成長と連動する傾向がある。NGDPが低く安定している限り、賃金とコアインフレ率はアンカーされる。

NGDP成長が安定経路に乗ることは他の面でもより良い政策決定をもたらす。財政支出は名目需要に働きかける役割から解放されるので、費用対効果に基づいて判断されるべきだろう。失敗した企業の救済コストもより透明になるだろう。救済された企業での雇用が他の場所の雇用を奪うことがより明確になるからだ。また、中国の輸出が職を奪っていると主張する人々はそれが「需要を食う」以外のメカニズムを示す必要に迫られ、主張を維持できなくなるだろう。そして最も重要なことには、国家は公共債務の問題に正しく向き合うことができるようになる。財政緊縮が雇用減をもたらす心配をする必要が無くなるのだから。