「MMTがいわゆるインフレ目標政策や中央銀行の独立を支持しない理由」by スコット・フルワイラー他 

しばしば「独立した中央銀行に総需要管理を委ねるべきではない、という」という主張がMMTからはしばしばなされます。
それはなぜか?
この点、はっきり日本語で紹介されたものが少ないように感じられるので一つご紹介。
https://ftalphaville.ft.com/2019/03/01/1551434402000/An-MMT-response-on-what-causes-inflation/

(編集部による紹介)

今週、連邦準備制度理事長のジェイ・パウエルは上院金融委員会において現代貨幣理論についての証言を求められた。 「自国通貨建てで借金ができる国においては財政赤字は問題ではないという考えは間違っている」と述べた。これは現代貨幣理論がもはや避けて通れないものになったという意味で、ある意味一つの勝利だ。 次は上院委員会でも取り上げられることになるはずだ。

Twitterの金融経済界隈で行われている議論はバカバカしい話に見えるかもしれないが、そうではない。あそこで書いたり読んだりしている人達は、新聞記事や学術論文で経済学を説明する側の連中だ。

昨日、先日のこの記事(第二次大戦中の米国の資金調達に関する記事)に対して応答したいというメールを貰った。発信者はカンザス・ミズーリ大学の経済学教授のスコット・フルワイラー、コーネル・ロースクールの博士研究員ロハン・グレイ、モダンマネーネットワークの研究ディレクターであるネイサン・タンクス氏。 以下は、彼ら自身が書いたものだ。


(ここから本文)

この20年間、我々と、我々を志向を同じくする仲間たちが提唱してきたのは「自国通貨建ての債務と変動為替レート制度を持つアメリカのような貨幣主権国が『破綻する』ことはありえない」という考えだった。 我々はこのことと、そしてこの考えから生まれるおびただしいマクロ経済学的な含意について書き続けてきた。それが今、現代貨幣理論として知られているものである。

エキサイティングなことに、先月アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員がMMTが「議論の一部」になるべきだと言い、そのことによって私たちのものの見方に注目が集まり、経済学と金融メディア界隈での議論が燃え上がった。議論を通じて「政府支出の制約になるのはインフレのみである」という合意は広く得られるようになった。MMTのこの重要な主張は新しいものとして歓迎されている。 ついこの間まの経済学界隈は、MMTは雑な新理論であるとか、債券市場が米国の国債を買うことを拒否するであろうとか、債務危機を引き起こす可能性について、不安で不透明な言葉で語られるのが普通のことだった。すでにそうした段階は過去のものになり、今や広いマクロ経済論争の場所にたどり着いていることに興奮を覚えている。

残念なことは、マスコミはこの重要な主張までは同意しても構わないとしてくれているものの、そこから出てくる帰結には追随してくれる気がないようだ。 ジョシュ・バローがニューヨーク・マガジンに書いたこの記事では、報道上のMMTに対する新手の反応が明瞭に記述されている。

 経済が完全雇用かそれに近い状態にあるときに政府が紙幣を印刷し支出をするとインフレにつながる。MMTはこのことを(正しく)指摘する。もしそうなったら総需要を抑制するために増税で財政赤字削減せよと言う。 これは原点に戻っただけのことではないだろうか? MMTの見方をするにせよ、ケインジアンの見方をするにせよ、政府が支出を増やしていけば遅かれ早かれより増税が必要になるだろう。 [...]連邦準備制度にどのようなデメリットがあるにせよ、暴走するインフレを防ぎ、経済を安定させるために議会が増税法案を通すとする考えは、安心感がある。

 

バローが言う「原点に戻った」という論評は全く当たっていない。MMTのアプローチは、物価の安定を考慮したグリーンニューディール(GND)政策の予算と設計を立案するためのマクロ経済政策の枠組みを与えているものなのだが、そのアプローチは現在の議会の慣行とは根本的に異なるもので、類似の提案も見当たらない。

第一として。我々は予算制約というものをインフレ制約に置き換えよとの提案をしているが、ここでインフレがいつも過剰な需要によって引き起こされると言っているのではない。むしろ私たちの見解はこうだ。需要過剰によってインフレが起きることはほとんどない。総需要以外のことが要因になったり、総需要政策が最適ではないことによって引き起こされるインフレは多々あり得る。例えば大企業による利益率の引き上げやコストの価格転嫁、ウォール街によるコモディティや住宅への投機行動が挙げられる。

従って、インフレ率の上昇が、大企業が利益率を高めるべく価格設定力を行使し使用し公益を毀損することによって発生した場合、需要を減らすという対策は最適とはならない。最近、住宅賃料や薬価の高騰をめぐる論争が起こっているが、それは、大企業の力を監督し、大企業の価格ポリシーが公共の目的と一致するようにするための何らか代替手段が求められていることを示している。また、過去10年間の経緯は、図らずもインフレと戦うための新たな別の手段が強力になり得ることを示している。つまり10年間インフレ率が目標を下回ってきた理由の一つには、法規制により医療保険料と医療費が削減されてきたことだったのだ。

大企業の価格設定力を考慮すれば、インフレを管理する目的のために、ある一つまたは複数の行政機関だけに総需要管理を担当させれば良しとするやり方は適切ではない。そうした機関はインフレ目標維持の責務を、企業の価格決定力を規制するような他機関とも共有するべきだ。また物価指数を新しい考え方で構築し直す必要がある。明らかに非循環的であるような市場の価格は指数に含めないとするような。

第二に。我々は、過剰な需要から生じるインフレの場合でも、増税でそれに対応できるとも、対応するべきとも考えていない。我々が長年にわたり公刊してきた見解はそういったものではない。確かにMMTは「税の主な役割は収益を得ることではなく需要を抑えることだ」と主張する。税は潜在需要をオフセットする全体の重要な一部だが全部ではない。他にも金融規制や信用規制の強化がある。規制によって銀行貸出や市場からの資金調達、投機、詐欺的行為といったものを抑制する。

また、何か新しい財政支出を提案する際は、潜在的なインフレ圧力を評価すると同時に、既存の資源がどれほど活用されて「いない」かを真剣に評価する必要がある。 これには、マクロ経済学者によるマクロデータの統計的回帰計算だけではなく、さまざまな業界のアナリストによる専門的な分析が不可欠だ。

同時に、今の米国は化石燃料や不動産、防衛、金融産業が肥大になりすぎ、汚れすぎ、また国家資源を使いすぎているという事実と向き合わなければならない。何らかの方法でこれらを縮小していく必要がある。したがって、環境やその他の規制を強化し、こうした業界にある人々と資源を解放し、その資源はグリーンニューディールの幅広い経済変革の一環としてグリーン生産に再導入していくこともまた、過剰な需要圧力を相殺するための新たな手段となる。米国の現在の政治指導者たちは、このアプローチに反対する。反対する理由は、需要には上限があり、仕事は希少あり乏しいコモディティなのだから、どんなに費用をかけても既存の仕事を保持しなければならないということだ。 MMTで明らかになるのは、政府は本当の完全雇用を約束できるということだ。 仕事の質を高め、経済がすべての人の繁栄を確実にもたらすよう焦点を合わせることができるのだ。

それから、GNDは、近い将来に新しい資源を創出するものだが、グリーンな生産を拡大させ脱炭素化プロセスは、この新たな資源によっていっそう加速することになるという側面に注目すべきだ。 ここは現在のアプローチとは異なるところだ。 現在の議会予算局のやり方は、潜在キャパシティを常に実際よりも下に定義しており、低い生産性、低生産量によって定義される悪質な自己完結サイクルを作り出している。この誤りを正すには、議会調査局(および他の予算諮問機関)を拡大し、経済を脱炭素化するという課題を最適に進めるため、適切なインフレオフセット政策の組み合わせを見つけるべく必要な分析を行う必要がある。 気候変動を回避したいのであれば、それ以外の選択肢はない。

一般に需要管理は、どのような政策ツールを使用するにせよ、その重点は、単純な一般物価指数の変化を追いかけることよりも、どの業界でボトルネックが出現しているかの見極めに置かれる必要がある。 特定の商品やサービスに大きく持続的なボトルネックが発生すれば、直ちに注文残の増加として表れる。 結局のところ需要管理で一番重要なことは「不足」を防ぐことにある。価格指数は需要に敏感なものではなく、総需要を管理するにはむしろ逆効果となる要因を含んでいて、政策目標として使うには誤解を招きすぎるものだ。 公的目的の事業のために大企業の活動を積極的に規制できるようになればなるほど、完全雇用の達成はより確かなものになり、価格の安定性を維持しつつGNDのために資源を回せるようになる。

第三に、インフレ圧力に対処するために増税を用いるという我々の提唱について。これは、インフレが現れた後にリアルタイムで議会が増税を試みるということではない。我々のアプローチを正確に言えば、議会がインフレのダイナミクスに注意を払わずに支出するような状況を避けることを目指している。よって我々の主張は、様々な税率とその他のインフレ相殺策を最初から予算編成プロセスに含めるべきというものだ。MMTのアプローチでは、議会予算局(CBO)に十分な情報を与えて、その法案での支出や貸付が需要をどのように増加させるのか、その条件下ではどのセクターや地域が最も影響を受けるのかについて詳細なレポートを作成させる。つまりこれは現在のCBOの評価プロセスを大幅に改善するものだ。現在のCBOの評価プロセスでは、ドルの最終合計値のみしか考慮されておらず、収入源もすべて同等と見なされている。この雑なアプローチが誤った結論を導く。エリザベス・ウォーレンの資産税案も、大規模な支出提案をまさに「賄う」ためのものになってしまいかねない。実際はこうした税は、新政府支出が向けられる分野における需要を減らすことにはならない(それが公平性の観点から望ましい支出であるとしてもこの議論は同じ)。

インフレリスクの管理を支援するという意味では、上で述べた議会の予算プロセス改善の他にも、確立された政策アプローチがある。 我々が長年推奨してきたものとして、例えば、財政による自動安定機能の強化だ。我々の中核的な政策提言はもちろんジョブギャランティープログラム(これはGNDの一部)だ。これにより、人々が必要とする雇用が自動的に創出され、経済がいったん完全雇用に到達すれば際限なく支出が増えることがない。その他の自動安定化強化の方法としては、貯蓄政策(訳者注: 国が財源としての国債をディーラーに発行するのではなく、銀行の定期預金のような貯蓄手段としての債券を人々に提供する)があり、また、課税区分のインフレ目標に紐づけて所得がインフレより早く上昇するほどに累進的に税率を合上げる方法がある。 これらのツールを使えば、現在行われているように連邦準備制度が金利を調整するといった、裁量による随時の意思決定に頼る必要性ははるかに小さくなる。

とは言え我々は、総需要を管理する裁量を持たせるようなツールをいくつかの機関に与えること自体に反対しているわけではない。この誤解がどこから生じたのかは明確でないが、学術雑誌やブログで書いてきたものからではない。私たちの仲間の一人は以前、このフィナンシャル・タイムズで、日々の需要管理の責任は独立した機関に委任するという目標を是としつつ、連邦準備制度がその機関であるとするのは誤りだと示唆し、次のように書いている:

バーナンキは財政パートナーの必要性をほのめかしたのみだったが、かつてのFRB議長マリナー・エクルズは公然と、失業と過度のインフレの両方を戦うための最も効果的な方法は財政政策を用いることだと主張した。 エクルズは大恐慌の最中に、給与税の減税を推し進め、それは消費者の購買力を刺激するために「我々にできる最も重要な一歩」だと言った。 数年後、米国の戦争支出がほぼ3倍になる直前に、エクルズは、インフレを食い止めるための給与税引き上げを議会に求めた。次の書簡で彼の特別補佐官が明らかにしているが、エクルズは財政政策(この場合は給与税の引き上げ)は購買力を削減する最も効果的なインフレ防止手段であると考えていた。

我々の提案やそのツールが議論を呼ぶものであるとの批判があるが、それはそうだろう。しかし、批判者は、まさに債務を抱え失業している人々でインフレを管理するという現行のアプローチもまた物議を醸すはずのものであるということを見落としている。実際、歴史的にも連邦準備制度は完全雇用に対し保守側に偏ってきた機関だ。 GNDが真の完全雇用を確実に創出し維持できるようにするためには、新しいマクロ経済フレームワークが必要で、そのためには、今は蚊帳の外になっている多くの機関や利害関係者を巻き込むべきであり、需要安定化の主要ツールとしての金利依存は放棄されるべきものだ。

現代貨幣理論は「原点に戻った」ものではない。そうではなく、MMT-は我々をまったく異なる政策世界に導く広範な含意を持つものだ。 新しいグリーンな雇用経済計画を物価の安定を維持しながら達成するため、GNDとは、我々が提示する政策手段のいくつかをブレンドしたものでなければならない。伝統的なCBOの方法で予算を組もうものなら、間違った方向に注意が向けられてしまい、GNDに必要な新支出がもたらすインフレリスクが相殺できなくなってしまうだろう。 たくさん種類の税はすでにある – 特に金持ちには – しかし、我々が主張してきたようにそれではGNDの支出を相殺するには全く足りない。 金持ちに課税すべきではないという意味ではない。 GND支出のインフレリスクを完全に相殺しようとするなら、議会は別のところを見なければならないという意味だ。 私たちにはGNDを実行する財政的余裕はあるし、それは達成できるものなのだ。 ただ、確実に成功するためには、ふさわしい政策ツールが必要ということになる。


ピーター・コイ, カティア・ドミトリエワ, マシュー・ベスラー「ウォーレン・バフェットはそれを嫌う。AOCはそれを支持する。初心者のための現代貨幣理論(MMT)入門」(2019年3月21日)

Warren Buffett Hates It. AOC Is for It. A Beginner’s Guide to Modern Monetary Theory Peter Coy, Katia Dmitriev


MMT(現代金融理論)のエッセンス! ウオーレン・モズラー「命取りに無邪気な嘘 6/7」

この文書の原文の説明および、ガルブレイス教授による序言はこちら   これまでの目次 嘘1:政府は支出するために、まず税金や借入によって資金を調達しなければならない。 あるいは、政府支出は、徴税能力と借入能力に制


MMT、もっと詳しく!(豪州投資家向けサイトから 2019年4月14日)

オーストラリアの投資サービス会社の方(ポートフォリオ・マネージャー)が、投資家向けサイトでMMTの紹介を始めています。日本ではありえないクオリティで、おもわず。。。 後半は来月とのこと。お楽しみに! TTPS://WWW


「MMT、モデル、分野横断学」by パブリナ・R・チャーネバ(2019年4月8日)

ノア・スミスによるMMT批判(邦訳)への応答。。。と言うか。   MMT, Models, Multidisciplinarity (April 8, 2019) By Pavlina R. Tcherneva


「クルーグマンさん、MMTは破滅のレシピではないって」by ステファニー・ケルトン(2019年2月21日)

ttps://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-02-21/modern-monetary-theory-is-not-a-recipe-for-doom 翻訳者より、本エン


バラク・オバマ「アラン・クルーガーの逝去について」

“Statement from President Barack Obama on the Passing of Alan Krueger” Office of Barack Obama, March 18, 2019


モズラー氏の金融システム改革案(2010年3月23日)これで貴方も脱MMT初心者!

ttps://www.huffingtonpost.com/warren-mosler/proposals-for-the-banking_b_432105.html この文書(↑)は、ギリシャ危機の頃にモズラーが世に問


MMT 日本語リンク集

有志の皆さんが作るMMTリンク集! ここに直接作っていこうと思うので、どうか推薦ブツをTwitterで私に教えてください。。。 リンク切れなども。。。 説明 Modern Monetary Theory(MMT、現代貨幣


ジョン・T・ハーベイ 「MMT:トンでも?まとも?」(2019年3月5日)

今年に入ってMMT(現代金融理論)に対する主流派経済学者の(つまらない)攻撃が増えているのですが、MMTerではないポストケインジアンであるJohn T. Harvey先生がついに痺れを切らしてForbes氏に書いた文章