ステファニー・ケルトン「財政赤字は気にしなくていい」

The deficit doesn’t matter: Thinking morally about the economy with Stephanie Kelton

by Daniel José Camacho, on the Christian Century, dated January 4, 2018 (ttps://www.christiancentury.org/blog-post/practicing-liberation/deficit-doesnt-matter)

財政赤字は気にしなくていい -ステファニー・ケルトン教授、経済を道徳的に考える-

インタビュアー:ダニエル・ホセ・カマチョ(クリスチャン・センチュリ、2018年1月4日)

クリスマスの直前、トランプ大統領は共和党の税制改革法案に署名した。これはアメリカの貧富の差を拡大すると多くのひとが予想した法案だ。分析によると、一兆ドル以上の追加赤字が発生する。

国の財政赤字に課する議論や、健康保険や教育を改善する財政的な余裕が政府にはないのはなぜかといった議論は、幾重にも重なった根深い偽善を明らかにした。財政赤字についての議論が政治的想像力を制約し、如何に経済を無情で魂のないバランスシートに詰め込んだかを示したのだ。今月上旬、この問題について警鐘を鳴らし続けているこの国の指導的経済学者の話を聴いた。

ステファニー・ケルトン氏はストーニーブルック大学の教授であり、米上院予算委員会の民主党メンバーのひとりでもあった。もし予言的経済学者がいるとしたら、彼女がそうかもしない。彼女は現状維持を揺さぶることを恐れない。バーニー・サンダース氏の元アドバイザー(サンダース氏と共にバチカンを訪れたことを彼女は思い出す)であったケルトン氏は、現在はバーバー牧師による新しいPoor People’s Campaign[1] の経済対策のアドバイザーでもある。

ケルトン氏が発表した研究は、共和党民主党両党にある財政赤字に対する恐怖が如何にして政治家たちを本当の経済問題の解決に集中できないようにしたかという点で話題を呼んだ。

インタビュアー、ダニエル・ホセ・カマチョ(以下、ダニエル):ニューヨークタイムス紙のレポートによると、両院の合同租税委員会による税制改革法案の分析の信用を共和党は傷つけようとしたそうですね。しかし、2015年に重大法案に経済的分析を必須にするようルールを変更したのは共和党です。

ケルトン:あれは私が上院で職務についてすぐのことでした。下院は法案を可決し、民主党幹部たちにダイナミック・スコアリング[2] とは何か説明するための白書を書くように依頼されました。

ダニエル:政治家の動機を過度に心理分析したくはないですが、これほどの急変が起こっている中で、財政赤字に対する懸念はどれくらい本物だと思いますか。

ケルトン:まったく懸念などしていませんし、みんなそうだと知っています。彼らは財政赤字なんて気にしてないのです。気にしないのが正しいのです。正直なところ、私が気にしているのは、財政赤字については共和党は偽善者だと、その一方でヒステリーを起こすときは彼らは正しいのだというメッセージを、民主党が根気よく送り続けてしまうことです。それは私が望むものではありません。どちらかといえば「聞いた?正当な理由があれば次の10年間に1.5兆ドルの財政赤字を計上してもいいって共和党が言ってるわ」という風に民主党が行くことです。受け取ればいいのです。贈り物として。贈り物を受け取って、「わかりました、共和党は1.5兆ドルを計上する用意がある。私たち民主党にもある。でもあなたたち共和党はその小切手をこの国の裕福な大企業やお金持ちに渡そうとしてる。私たち民主党が1.5兆ドルをどう使うか見せましょうか。ここは道徳観が重要なところ。私たち民主党は、貧しいひとびと、困難を抱えているひとびと、そして健康保険を持っていないひとびとに、この小切手を渡します。この1.5兆ドルで私たちならそうします」といえばいいのです。

ツイッターで民主党は1.5兆ドルでどんな健全な投資をするのかと聞かれました。こんなことができます。インフラ整備に6500億ドル、公立大学の授業料無償化に7500億ドル、プエルトリコに1000億ドル。あるいは、1.4兆ドルですべての未払い学生ローンの棒引き。または、社会保障拡大に1.2兆ドル。共和党がもうお金なんて必要ないお金持ちにただ同然に渡したがっている1.5兆ドルを、アメリカ国民に渡すのです。

国の財政赤字があるという理由で憤慨して朝目覚めるひとはいません。彼らが怒っているのは、給与が上がらなくなったから、退職後が心配だから、そして子どもたちを学校に通わせ続けられるかどうか心配だからです。もし民主党が財政赤字を心配するのがトランプ大統領に投票した有権者を振り向かせる方法だと考えているなら、それは間違いです。

ダニエル:財政赤字について現在優位にある経済的哲学を変えるには何が必要でしょうか。

ケルトン:負債や財政赤字を重大な考慮事項のように話すのは止めなければなりません。両院の合同租税委員会と予算事務局はワシントンDCにある立法機関の門番です。両組織が事実上、許可証を出します。ワシントンDCで両組織が提出する調整前予算スコアが絶大な尊敬を有しているのは大きな問題です。将来財政赤字がたいして増えないから気候変動について何か出来るなんてことを説明する予算事務局から予算スコアが出てくるのを待っていたら、人類という種として私たちは本当に困ったことになります。この場合、私たちは破滅です。そんなところに私たちはいるのです。もし予算事務局が許可証をくれなかったら何も法的に決められないのだとしたら、私たちは本当に大きな問題を迎えることになるのです。

予算事務局は議会によって設立されました。議会は予算事務局に以下のように命じる必要があります:議会にフィードバックすること、議会をアシストすること、議会に提出された法案の影響を評価するのを手伝うこと。教えてください、もし私たちがこれをすると、インフレ問題を起こすリスクが生じるでしょうか。何人の子供たちが貧困状態から抜け出せるでしょうか。この国のジニ係数に何か起こるでしょうか。もっと人々に関係のある指標を出すように予算事務局に言うべきです。これがいくらいくらの財政赤字を増やすだなんて教えてもらう必要は私にはありません。私には関係ない。それは私にとって重要な数字ではないのです。もっと意味のある情報に関する政策を査定し判断することを始めてほしいのです。

ダニエル:あなたの研究はMMTに関連しています。MMTは経済、とりわけ財政赤字について、とても違った考え方をしていますね。

ケルトン:MMTは、異なった経済や貨幣制度を調査するためのレンズのようなものです。アメリカ、イギリス、カナダや日本を見て、これらの国々は独立した主権国家で不換紙幣と呼ばれるものを使用しているという意味で似ています。ギリシャ、ポルトガルまたはスペインといった国々については、異なった視点で見ることができます。これらの国々は自国通貨を使用していないので、異なった制約があるということが理解できるし認識できることになります。なので、財政政策で何ができるのかという観点での制約があります。政府のゴールが完全雇用であるなら、政府に経済から最大の成果が得られるような政策を設定してもらいたいのです。誰も経済がその可能性より低いパフォーマンスをすることを望みません。雇用できる限りの労働力や使える限りの資本の投入をして、経済がその可能性を完全に達成することを、みんな望んでいるのです。ひとびとが条件の悪い雇用のもとで働いたり失業者になったりしてもらいたくはないでしょう?完全雇用がほしいのです。

MMTが何を主張しているかというと、アメリカのように自国通貨を発行できる国はギリシャのようにはけっしてならないということです。自国通貨を持つ国の政府は、請求書が払えなくなるような状況に陥ることはありません。アメリカ政府は売られているものは何でもアメリカドルで買うことができます。それが上限です。もし私がアメリカ議会で支出の許可権限を持っているとしたら、座ってこう言います:「インフラ整備に1.4兆ドル。どうやってやるかって?私がたった今、許可しました。それだけよ」って。政府の支出はセルフ・ファイナンスである(資金調達を自ら行っている)と私がいうのは、政府支出というのは私たちが車を買いに行くときのように資金をあらかじめ用意するわけではないという意味です。私たちが車を買いに行くとき、現金を持っているか資金調達を手配します。誰かがお金を貸してくれなければなりません。アメリカ連邦政府はそのようには機能していません。国会議員が、インフラ整備、教育、社会保障の拡大などの何らかの法案を提出します。すると法案の採決があります。例えば、戦争を取り上げてみましょう。「国防にお金を使います」、するとこの法案に各国会議員は賛成か反対の票を入れます。前もって資金調達を手配したりはしません。法律が成立すること自体が、非公開で行われる、財務省と連邦準備銀行によって調整された、一連の手続きを動かすのです。要は、議会が支出を許可すれば、お金は使われるということです。連邦準備銀行が小切手を現金化するためにすべきことをしなかったから、議会が小切手の不渡りを出すなんて状況は絶対に起こらないのです。

ダニエル:では限界は何でしょうか。

ケルトン:限界は現実の経済の中にあります。もし私がアメリカ政府なら、「すべての国民の健康保険、あらゆる分野の高等教育、そしてインフラ整備の法案を通したい」と言います。私たちにはもっと病院、大学、教師が必要ですし、改良された道路や橋も必要です。もし経済が完全雇用を達成していてもう雇用可能なひとが誰もいなくなったら、どうしたらよいでしょうか。限界は現実の経済の中に存在するのです。

話を簡単にして、インフラ整備について考えてみましょう。今現在、もしアメリカが1兆ドルを壊れかかってるインフラの再建設に使うとしても、財政的にまかなうことができます。でも建築業者やエンジニア、建築士、鉄材、コンクリート、機械はあるでしょうか。1兆ドルを使って政府が雇用するインフラ投資に必要なリソースはすべてあるでしょうか。もしなかったら、政府がリソースを手に入れられる方法は競争入札によって他に使われているリソースを持ってくることです。それはインフレ圧力を生みます。そこが限界です。インフレです。大不況から抜け出しつつあるとして、不動産バブルが崩壊したときには失業中の建築業者たちがそこここにいて、巨大なインフラ投資をするには最高のタイミングでした。なぜなら誰も彼らをほしがらなかったからです。彼らは何もしていなかったのです。彼らの労働力を買うべきでした。政府は彼らに職を提供し、彼らを働きに出すことができたはずでした。インフラ整備に1兆ドルかけられるほどに経済には十分な不調があり、それをする余裕がたくさんあったのですから経済はより広い利益を得たことでしょう。今日、我々はもう完全雇用に達していてそのような需要を吸収するような余裕はもうないと一部の人々はいいます。私はそれは間違っていると思います。様々な理由で、長期には、過度なインフレを起こさずにこの経済をもっと前に進められると私は考えています。でも、限界は確かに現実にあります。建築業者、コンクリート、鉄材なしでは、道路や橋は建設できません。もしそれらのリソースが足りなくなり作り出すこともできなくなったら、手には入らないのです。

  1. 訳注:1968年にマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師により組織された貧困層救済のためのキャンペーン []
  2. 訳注:税制変更が経済成長などを通じて税収に跳ね返ってくる効果を推計したもの []

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こちのゲリラ翻訳です。http://induecourse.ca/what-hides-behind-unemployment-what-should-we-fight-for-in-the-21st-century/