MMT(現代金融理論)のエッセンス! ウオーレン・モズラー「命取りに無邪気な嘘 6/7」

この文書の原文の説明および、ガルブレイス教授による序言はこちら

 

これまでの目次

  • 嘘1:政府は支出するために、まず税金や借入によって資金を調達しなければならない。 あるいは、政府支出は、徴税能力と借入能力に制限されている。
  • 嘘2:政府赤字は、子供たちの世代に債務という負担を残すことになる
  • 嘘3:政府赤字が貯蓄を奪う
  • 嘘4:社会保障制度は崩壊している
  • 嘘5:貿易赤字は、職業や産出を奪う

 

命取りに無邪気な嘘 その6:
投資には、先立つ貯蓄が必要だ

事実:
投資が貯蓄を増やすのだ

 

嘘は残すところあと二つとなったが、これは大事だ。この嘘がこの経済全体を覆っているために、実物資源の議論が実物部門から逸らされ、金融部門の議論にすり替えられてしまっているからだ。その結果、実物投資が公共の利益から切り離されてしまっている。私の見立てでは、この嘘のために有用な産出と雇用の20%以上が毎年毎年捨てられている。これは人類史上、比類のない規模だ。そしてまた、いま経験中の金融危機を直接導いたものは、これなのだ。

経済学の教科書で「倹約のパラドックス」と呼ばれている話がスタートだ。こんな感じだ。経済全体の中で、産出物が全部売れたときの総支出は必ず総所得(利益を含む)と等しい。(次の文に行く前に、これを理解したかどうか必ず確認せよ)。もし誰かが消費を所得以下に抑えようとすれば、他の誰かが所得以上に消費しない限り、産出物に売り残りが生じることになる。

売れ残った産出物は過剰在庫になり、売上不足から生産調整そして雇用カットとなり、結果、総所得が減少する。この所得減少分は、貯蓄のために使わないことにした金額と等しい。こう考えてみよう。ある人が貯蓄(収入以下の支出しかしないようにする)しようとすれば、それは失業しつつあることになる。売れ残りが出るなら雇用主はもうその人を雇わない。

つまり、このパラドックスはこうだ。「収入の一部を使わずに貯蓄しようとすることが、収入を減らし貯蓄を不可能にする」。反対に、借金して収入以上の支出をしようとすると、収入が増え、実物投資と貯蓄ができるようになる。極端な例で考えてみよう。国民全員が国内自動車業界に新型ハイブリッドカーを注文したとする。自動車業界も、突然それほど多くの車を製造することはできないので、私たちを雇用し、新しい需要を満たすべく、まず新工場を建てるための借金をする。そうすると、私たちは皆、新しい工場と設備(これらは資本財だ)を使って働き、所得を得るようになるだろう。しかし、まだ世界には買いたい車が存在していないので、新車が組み立てラインから出てくるまでは、得たお金を「貯蓄」しておかなければならない。新車を買おうと決めた結果、しまいには支出より貯蓄が多くなっている。同時に、生産用の資本財への支出を賄ったのは、まさに実物投資であり、これは貯蓄と等しい。

私はこのことをよくこう表現する。「貯蓄とは、帳簿に記録された投資だ」

教授

1996年、ニューハンプシャーのカンファレンスでバシル・ムーア教授とこの話をしたところ教授は、こんど書こうと思っている本でこの表現を使っていいかとお聞きになった。その名前の本は出版され、聞いた話では面白いそうだ。(本にサインするチャンスを待っている)

不幸なことに、この事実、議会もマスコミも主流経済学者も完全に取り違えてしまっている。将来の投資を賄うためには、先にもっと貯蓄しておかなければならないと結論してしまう。ミクロレベルではまったく正しいこの話も、やはりマクロレベルでは正反対の誤りなのだ。ちょうど、銀行の貸出が預金を作るのとまったく同じように、投資が貯蓄を作るのだ。

ころが、無限の知恵をお持ちの我らの指導者たち。消費の低迷で投資が落ち込むときに彼らはどうしているだろう。ぜったいこう決意する。「我々はもっと貯蓄しなければならない。そうすれば投資のためのお金が増えるだろう。」(私は主流経済学者たちからの反論を一度も聞いたことがない)。議会はこれを実現するために税構造を変え、貯蓄が有利になるようなインセンティブ設計をする。年金基金やIRAその他の税優遇機関が、税を繰り延べたい資金を積み上げ易くなるようにする。そうなれば簡単に予想できるように、そのインセンティブは総需要(購買力)を除去する方向に働く。つまり、われわれ自身が生産するものを購買するための貨幣を奪う働きをしてしまう。これが経済を減速させ、民間部門の債務が拡大し、結局公的部門は、単にそれを補うためだけの赤字財政支出を余儀なくされることになる。 

インフレ的でない巨額財政赤字が現出する理由はこれだったのだ。

実際、議会が作り出す、支出(「需要漏出」と言われる)を減らそう減らそうとする税のインセンティブ構造こそが、私たちの購買力の多くを奪うものなのであり、結局はそれこそが、完全雇用を維持するために多額の財政赤字が必要になる事態を引き起こしている、当のものだったのだ。皮肉なもので、議会が貯蓄奨励税制を推し進めるのは、投資のためのお金と貯蓄しようと考えてのことのはずだった。財政赤字とは真逆のことをしたかったのに。

もちろん、もっと悪いことが起こる! 巨大な資金プール(この致命的に無邪気な嘘6で誕生したプールだ。貯蓄は投資されなければならない)は、将来の受益者のために管理され複利運用されなければならない。問題は、連邦政府の赤字が必要になることに留まらない。これら、複利運用される何十億ドルもの資金が、あの恐ろしい金融セクターの基盤になることが問題だ。金融セクターは何千人ものファンドマネジャーを雇っている。大部分は政府の規制対象になってはいる。ほとんどの資金は上場株式、格付き債券に投資されるが、一部は多角投資として他の戦略、たとえばヘッジファンドや商品パッシブ運用戦略に向かう。そして、これら「肥大化したクジラ」を飼っていれば、必ずサメが現れる – 何千もの仲介や金融管理産業のプロフェッショナルというサメを生きながらえさせるのが、この第6の命取りに無邪気な嘘だったのだ。


MMT、もっと詳しく!(豪州投資家向けサイトから 2019年4月14日)

オーストラリアの投資サービス会社の方(ポートフォリオ・マネージャー)が、投資家向けサイトでMMTの紹介を始めています。日本ではありえないクオリティで、おもわず。。。 後半は来月とのこと。お楽しみに! TTPS://WWW


「MMT、モデル、分野横断学」by パブリナ・R・チャーネバ(2019年4月8日)

ノア・スミスによるMMT批判(邦訳)への応答。。。と言うか。   MMT, Models, Multidisciplinarity (April 8, 2019) By Pavlina R. Tcherneva


「クルーグマンさん、MMTは破滅のレシピではないって」by ステファニー・ケルトン(2019年2月21日)

ttps://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-02-21/modern-monetary-theory-is-not-a-recipe-for-doom 翻訳者より、本エン


バラク・オバマ「アラン・クルーガーの逝去について」

“Statement from President Barack Obama on the Passing of Alan Krueger” Office of Barack Obama, March 18, 2019


モズラー氏の金融システム改革案(2010年3月23日)これで貴方も脱MMT初心者!

ttps://www.huffingtonpost.com/warren-mosler/proposals-for-the-banking_b_432105.html この文書(↑)は、ギリシャ危機の頃にモズラーが世に問


MMT 日本語リンク集

有志の皆さんが作るMMTリンク集! ここに直接作っていこうと思うので、どうか推薦ブツをTwitterで私に教えてください。。。 リンク切れなども。。。 説明 Modern Monetary Theory(MMT、現代貨幣


ジョン・T・ハーベイ 「MMT:トンでも?まとも?」(2019年3月5日)

今年に入ってMMT(現代金融理論)に対する主流派経済学者の(つまらない)攻撃が増えているのですが、MMTerではないポストケインジアンであるJohn T. Harvey先生がついに痺れを切らしてForbes氏に書いた文章


オカシオ-コルテスは政策の財源をどうするつもりなのか?紙幣を(たくさん)印刷せよ!

オカシオ-コルテス氏とMMTに関連する情報が少ないのでゲリラってみました。図表は省略で。 ttps://www.bloomberg.com/news/features/2019-01-17/alexandria-ocas


R.レイのMMT入門 第一章第五節 実物の会計と金融(名目)の会計 

メリークリスマス! 第一章目次(あとひとつ!) ↓ 第一章 マクロ会計の基本 第一節 ストック-フロー会計の基礎 第二節 MMT、部門間のバランスと動き 第三節 ストック、フローとバランスシート(バスタブの比喩) 第四節