ポール・クルーグマン Quoraの解答から

クルーグマンQuoraに現る-解答からの抜粋

経済学者ポール・クルーグマンが質問サイトQuoraに11月20日に現れ、自ら質問に解答しています。そのうちのいくつかを抜粋しました。

さて、私も参加するとしよう!
言うことがふたつある。ひとつ目は、とても良い経済成長が2四半期あった。これは例外的なことではない。成長率は常に上下する。2014年に成長率が5%を越えた期間が2四半期あったが、ほとんど誰も気付かなかった。レーガン政権時代の「アメリカの朝[1] 」景気やクリントン政権下の好景気のように何年も続いた経済のことを言っているわけではない。
これは、財政支出は経済を短期的な好景気に持っていくことができることは疑問の余地もないということだ。この経済の押し上げは過去8年の間にいつでも起こりえたが、共和党は支出削減を要求し財政赤字が恐ろしく心配だと言い張った。そしてトランプ大統領が現れ、財政赤字心配症はどっかにいってしまった。多少の〔経済的な〕加速が起こったのは驚きでもなんでもないことだ、少なくともしばらくのところは。

今のところトランプ大統領の〔経済政策の〕遺産は小さそうだ、良かれ悪かれ。財政赤字は急増しているが、大した問題じゃない。貿易戦争で脅しをかけているが、最重要事項であるNAFTAでは基本的には引き下がった。法人税を下げたが、企業はそのお金を自社株買いに使っているだけだ。オバマケアの廃案にも失敗した。
実際のところは、大統領というのは通常は経済に影響をあまり与えない、特に長期的には。今から15年後にトランプ時代を振り返ったところで、ツイッター最高司令官[2] が存在していた形跡なんてほとんどないだろう。

また私がひっかかる質問だね。トリクルダウンについての議論は存在しない。サプライサイド経済学に不利な証拠は何十年も前からはっきり出てる。ブッシュ政権のチーフエコノミストでさえトリクルダウン提唱者を「ペテン師や奇人」と呼んだんだ。トリクルダウンを真剣に受け取っている経済学者(政界の外で尊敬に値する研究をしたことのある経済学者という意味だが)を、私は誰ひとりとして知らない。
なので、トリクルダウンがまだ議論されているとひとびとはなぜ思っているのだろうか?サプライサイド・ドクトリンを支持する巨額のお金が存在するからだ。これは気候変動に対する考えを拒否するのによく似てる。地球温暖化否定主義者たち、そしてトリクルダウン経済学信望者たちは、皆、基本的には利益集団に雇われている。このお金に誘発された「議論」を、事実や理論が重要だと主張して、もったいをつけないでほしい。

OK。この質問はちょっと私にひっかかったね。ケインズ経済学は実際のところ経済危機で大勝した。問題は、我々(米国)や他の国はケインズ経済学の提言を実行しなかったことだ。
大勝したと私がいうのは、ケインジアンは不況期の財政赤字は金利を上げないと言ったが、反対派は急上昇すると警告した。ケインジアンはお金を刷ってもインフレは起きないと言ったが、反対派はハイパーインフレが起こると叫んだ。ケインジアンは緊縮財政は景気をもっと悪化させると言ったが、反対派は緊縮財政は国に信用を付けることによって経済が良くなると言った。
ケインズ経済学者たちはこれらのことについてすべて正しかった。
それで、何が問題なんだい?オバマ政権の経済刺激策は経済危機を相殺するには小さすぎたし、これは事後の正当化じゃない。私や他の経済学者も随分前から騒いでたことだ。そして経済刺激策はあまりに早く引き上げられてしまい、まだ失業率が8%以上あったときに我々は緊縮財政政策に引き込まれた。ケインズ経済学はうまくやった、ダメだったのは政治家のほうだ。

全体として、経済が弱っているときは財政赤字を出しておき、経済が強くなったら返済をするというのがベストだ。だからこそ米国政治は頭にくるのだ。失業率が8%のときに政府債務にとらわれすぎてたのに、失業率が3.7%になると共和党はどうでもいいと決めた。
だが全体としては、財政赤字と政府債務は多くのひとが思うほど重要じゃない。自国通貨で借入する米国や日本のような裕福な国は、随分なゆとりがある。財政赤字は私の重要事項トップ10の中に入らないよ。

  1. 訳注:レーガン氏の1984年大統領選キャンペーンのスローガン ”Morning in America” から []
  2. 訳注:原文ではTwitter-in-Chiefであり、クルーグマンなりの皮肉 []
  • hon. ki

    これはすごい!