戦争は子供たちにとって有害だ。他の生物にも、そして経済にとっても by Russ Roberts

Roberts, Russ  War is bad for children, other living things, and the economy (Cafe Hayek, September 6, 2010) の訳。

クルーグマン「2010年にやって来る1938年」への批判的意見も読んでみようと思い、ついでに訳してみました。拙いので、小人さん、ご指導よろしくお願いします。


ジョン・パポラから聞いた話だが、ポール・クルーグマンは、さらなる政府支出を正当化するのに歴史を持ち出したそうだ。

経済的な観点から言えば、第二次世界大戦は何よりも国債を原資とした政府支出の爆発だった。それは他では決して承認されないような規模だった。連邦政府は第二次大戦にいたる過程において1940年のGDPのおよそ2倍もの借り入れをした。これは現在の約30兆ドルに相当する。

戦争のだいぶ前にはその端数といえるような支出の提案に対してでも人々は今日言われているのと同じことを言っただろう。彼らは破滅的な負債とランナウェイ的なインフレーションを警告したはずだ。また、不況は大部分過剰な負債から生じたのだとも言っただろう。そして、この問題をさらなる国債発行で解決することは不可能であると宣言したはずだ。

でも、何が起こったと思う?赤字財政支出は好況を作り出したんだ。そしてその好況が長期にわたる繁栄の基礎になった。

だが、それ(赤字財政支出)は好況を作り出さなかった。戦争が経済を刺激するという考えは、これまでで最大、かつ最も危ない経済神話だ[1] 。戦争は、経済の軍需部門を刺激するだけだ。

なるほど、1940年から1945年の間、経済の規模は成長した。だけど、民間部門は成長しただろうか。消費は好調だったかな。爆弾や戦車や銃に費やされた政府支出はケインズ乗数によって民間部門が好況な時代を作り出したんだろうか。

第二次世界大戦中を生きた誰かに尋ねてみるといい。イギリスは繁栄していたかい?ドイツは?アメリカは?いいや。経済の成長が測定されたにもかかわらず、人々の経済活動はみじめだった。戦時の経済活動は、経済の大部分が戦車や爆弾の製造につぎこまれてしまうために、みじめなものとなる。民間消費を作り出すのに十分な資源がなかったからだ。 測定された経済が好景気を示したのは、そこにあらゆる軍需製品を含めたからだ。

そう、たしかに失業率はゼロに近かった。それは政府が人々を徴用して軍隊に送り込んだからだ。そういう方法で失業者を取り除くのは容易い。でも、それは経済的繁栄をもたらさなかった。真実はそれ(繁栄)とは反対だった。悲惨な時代だったんだ。

ロバート・ヒッグスは、世の中に肉や靴下や砂糖があまりなかったとしても、経済の測定規模が好況を示しえる理由を説明している[2] 。それがいったいどんな好況だっていうんだろうか。偽の好況じゃないか。ケインジアンたちの説にはぴったりはまる好況だ。でも、とても人の誤解を招きやすい好況だ。

終戦後、ケインジアンたちは、経済破綻を予言したけど、彼らは間違っていた。軍需産業への政府支出が減れば、総需要の減少が起き、大量失業を招くと決めてかかった。でも彼らは間違っていたんだ。

戦争は子供たちにとって有害だ。他の生物にも、そして経済にとっても。


やらかしたことに後悔はしていません。でも色々反省しています。それから、himaginaryさん、山形さん、「道草」の方々、bradexさん、tomorrowkeyさん、tomoattoriさんに勝手に感謝しています。

  1. 訳注:クルーグマンは過去に、一時的な巨額の財政出動ショック(第二次世界大戦によるもの)が、経済をもっと有利な均衡へと押しやった、という話を“part of the folk wisdom”って書いています。Krugman, Paul “It’s Baack: Japan’s Slump and the Return of the Liquidity Trap,” Brookings Papers on Economic Activity, 1998. pp.26.-27 []
  2. Higgs on the Great Depression  Robert Higgs Hosted by Russ Roberts []