失業率統計は機能していない by Tim Harford

10月18日にFinancial Timesに掲載されたTim HarfordのUnemployment stats aren’t workingの訳。誤訳の指摘お願いします。


失業率はまったくもって単純な経済統計に見える。それはイギリスでは現在7.7%だ―つまり手に職がある幸運な人12人ごとに仕事を探している不運な13人目がいるということを意味する。

労働市場の現実はもう少し複雑だ。例えば、生産年齢(昔ながらに16歳から64歳と定義される)のうち「非労働力(economically inactive)」である人々の数は失業している人々の3倍だ。これらの人々は仕事がなく、原則として働く意欲のない人々だ。もしそのような人々と失業者との区別を理解したいなら、失業者とは働く能力があり積極的に仕事を探している人々のことで、非労働力である人々はそうではない。それは政府の統計学者が容易に観察しうる差異ではない。

きちんとした工学の学位を取得する途上にある20歳の学部生について考えてみよう。彼女は積極的にバーやレストランでのパートタイムの仕事を探して彼女の負債を制御下に保ち続けようと努力しているが、そのような仕事が見つからないので、請求額を支払うのに教育ローンに頼ってしまっている。一方で50歳の健康問題を抱える元炭鉱労働者は就業不能給付を受け取っている。手に職をつけたいと思っているものの、仕事が見つかるだろうと少し楽観して、探しているふりをするのをやめてしまっている。常識では中年の男性が失業していて、若い女性はそうではないことが示される。しかし国家統計局は逆の結論に達するだろう。

おそらく失業率について最も不思議なのはそれが安定性に与える影響だろう。昨今の深刻な景気後退とその後の停滞の中で失業者の数は100万人以上増加した。しかし失われている仕事の数は2000万に近づいている―これはイギリスの労働力全体の大きさからすれば少なくはない。

何が起きているのだろう? 撹拌だ。イギリスでは典型的な3ヶ月の間に、雇われている人のおよそ80人に1人が職をやめたり失ったりしている(これは控えめな表現だ。ただちに新しい職へ移る人々は含まれていない)。同じ期間内に、失業者の3〜​​4人に1人は仕事を見つける。深刻な景気後退であってもこれらの数字にあまり影響はなかった。四半期失職率は2009年の時点で一時的に50人に1人となり、次の停滞の年では70人に1人だった。仕事を見つける率はやや低くなってはいるがなだらかだ。

思いがけない真実は、不況のさなかのとりわけどの四半期に失業した人々であっても、ほとんど皆結局失業していただろうということだ。マイケル・ブラストランドとデイヴィッド・シュピーゲルハルターは、リスクに関する近著The Norm Chroniclesで、停滞している間3ヶ月毎に500人に1人分失業リスクが高まるとしている。

不況はもちろん幻想ではない―もし失業の可能性が少し高まり新しい職を見つける可能性が少し下がれば、そのうち失業の水準は大きく膨れ上がるだろう。幻想なのは、好況のときは不況のときより十分大きな雇用保障が提供されるという考えだ。そんなことはないのだ。

失業率は職を見つけたり失ったりする数百万の個々の物語の結果だ。そこで失業率を下げる方法が複数ある。古い仕事が消滅する速度を遅くしたり新しい仕事が創り出される速度を速めたりするのだ。これらの2つの選択肢のどちらがより動的で創造的で高成長している経済と連動していきそうかを知るのは難しいことではない。また、なぜとても多くの労働者が将来の職の抽象的な約束よりもすでにある職を守ることに当然のように価値を置いているのかを知るのも難しいことではない。

仕事を創り出すことは人々に雇用が保障されていると思わせることと同じことではない―全く違うのだ。

  • W. Shito

    炭鉱労働者の話ですが,with little optimismというのは,楽観的観測が少ししか無いという意味ですので,「悲観的になっている」ということです.意訳すると,「彼は職につきたいとは思っているが,職を見つけることに悲観的になっていて,職探しを辞めてしまった.我々の感覚では,この中年男性が失業中で,女子学生はそうではないと思うところだが,統計上はそのようには扱われない.」ということです.

  • W. Shito

    後半は,大分意訳しないと原文の意味が伝わらないと思います.原論文では,2点,通常考えられている点が間違っていると指摘しています.1点目は,「失業率が安定している」または,「失業率があまり変化しない」と考えられている点,2点目は,「好況時の方が職が保証されるという幻想を抱いている点」です.シュピーゲルハルターの著作の引用は,「不況時に失業する確率は少ししか増加しないから,結局のところ,好況時にも失業するんだよ」ということを言うために引用しています.この辺を加味して,大胆に意訳したほうが,日本語文だけで原文の意図がより伝わるのではないでしょうか.