「カーリー効果 ~都市は落ちぶれど、支持は高まる?~」 by David Henderson

以下は、David Henderson, “Curley Effect in California”(EconLog, May 4, 2012)の訳(一部省略)。


ジェームズ・マイケル・カーリー(James Michael Curley)と言えば過去にボストン市長を4期務めた経験のある人物である。ボストン市長当時、彼は貧しいアイルランド系住民のために経済的に見て無駄の多い再分配政策に着手するとともに、扇情的なレトリックを弄することで(アングロサクソン系の)裕福な住民がボストン市から出ていくよう仕向けたのであった。カーリーが採ったこのような一連の行動の結果として、ボストン市の有権者の構成はカーリーにとって(政治的に見て)有利な方向に変化を遂げることになったのである[1] 。結果的にボストン市は経済的な停滞に見舞われることになったが、カーリーは市長選で勝利を収め続けることになったのであった。

この文章は、エドワード・グレイザー(Edward L. Glaeser)とアンドレイ・シュレイファー(Andrei Shleifer)の共著論文 “The Curley Effect”(pdf)から引用したものである。

引き続き同論文から引用することにしよう。

このような戦略-富の減少をもたらす歪んだ政策を通じて自らの政治的な支持基盤の拡大を図る戦略-を「カーリー効果」と名付けることにしよう。とはいっても、カーリーだけがこのような戦略を用いたわけではない。政治的な敵対者の退出を促す政策を推し進めることで、選挙区(都市の場合もあれば国の場合もあるが)の経済的な衰退を招きつつも自らの政治的な立場の強化を果たした例は他にも(アメリカの他の市長だけではなく、世界中の政治家の中にも)見出すことが可能である。例えば、20年間にわたってデトロイト市長を務めたコールマン・ヤング(Coleman Young)は白人がデトロイトから出ていくよう促したのであった。「ヤングが市長を務めている間にデトロイトは黒人がマジョリティを占めるアメリカのシティ(city)の一つへと変貌したというにとどまらない。デトロイトは黒人のメトロポリス(metropolis)、合衆国の中にある第三世界のシティ(Third World city in the United States)の最初のケースへと変貌したのである。その証拠[2] は至る所にある―ショーケース・プロジェクトや黒い拳のシンボル[3] 、仮想外敵の存在、そして特定個人の熱狂的なまでの崇拝。」(Chafets 1990, p. 177)。また、独立を果たした後のジンバブエでは、同国の大統領であるロバート・ムガベ(Robert Mugabe)が白人の農民に対して強権を発動し、白人が他国へと移住するよう公然と促している―それに伴ってジンバブエ経済に甚大なコストが生じる可能性もいとわずに―。

カリフォルニアでも似たような事態が進行しているのではないだろうか。カリフォルニア州ではこれまでに民主党が優勢の度をかなり強めてきている。現在民主党勢力-カリフォルニアの州議会では民主党が多数派を占めており、州知事も民主党の候補である-は極めて無駄多きプロジェクトである高速(ハイスピード)鉄道計画を推進している最中だが、「ハイスピード」 とは言っても、おそらくは「ハイ」スピードではなく、「ハイ」コストで現時点よりもさらに「ハイ」の所得税の最高(限界)税率(最高限界税率の引き上げ)(カリフォルニア州の最高税率は現時点でも既に全米で最高水準にあるのだが)という結果が待ち構えていることだろう。しかしながら、民主党勢力は(限界税率の引き上げに伴って)生産性の高い人々の多くがカリフォルニア州から脱出することになる、あるいはすでに脱出しつつあることを心配してはいないようだ。このプロジェクトの推進には彼らなりのイデオロギーが関わっているのかもしれない。確かにそういった面もあるだろう。しかしながら、民主党勢力の目的の一つは、民主党に反対する可能性のある有権者の数を減らし[4] 、そうすることでカリフォルニア州で民主党を支持する有権者が多数派を占めるように図ることにあると私には思われるのだ。

(以下略)

  1. 訳注;再分配政策を通じて貧しいアイルランド系の住民からの支持が高まる一方で、(そのような再分配政策に反対するとともにカーリーの扇情的な発言に反発を覚える)裕福な住民がボストン市から他の地域に移住することで、ボストン市の住民の中に占めるカーリーの支持者の割合が高まることになった、ということ []
  2. 訳注;第三世界の都市が備えている特徴 []
  3. 訳注;おそらくはジョー・ルイス(黒人ボクサー)の拳のモニュメントを指しているものと思われる []
  4. 訳注;カリフォルニア州からの自主的な退出を促し []