債務についてのスウェーデン中銀の勘違いー政策金利の上昇は家計の債務比率を上昇(減少ではなく)させる BY LARS SVENSSON

以下は、Lars Svensson”The Riksbank is wrong about the debt – a higher policy rate increases (not reduces) the household debt ratio“(August 26, 2013)の訳です。


ここ数年において、リクスバンク(訳注;スウェーデン国立銀行)は、目標インフレ率よりもかなり低いインフレ率と不必要に高い失業率を招く貨幣政策を実施してきた。リクスバンクはさらに最近になって、低い政策金利は家計の債務比率(可処分所得に対する債務の比率)、ひいては債務に関連するあらゆるリスクを上昇させるとして、自らの政策(訳注;高い政策金利)を正当化した。しかし、貨幣政策と政策金利がどのように家計の債務残高に影響を与えるかについて、リクスバンクはいかなる分析も提示してはいない。高い政策金利は、低い政策金利の時よりも低い債務比率をもたらすというのは単純に所与のものとされている。

しかし、政策金利の上昇は本当に債務比率の下落をもたらすのだろうか。「”Leaning against the wind” increases (not reduces) the household debt-to-GDP ratio」と題した最近の論文で、私はこの問題を検討した。この論文では、政策金利の上昇は債務比率を下落させるのではなく、上昇させるということを示している。この結果は、一部の人たち、少なくともリクスバンクの中の政策金利の引き上げは債務比率を低下させるとの前提で物を考えているリクスバンクの面々にとっては驚くべきものかもしれない。実のところ、政策金利の上昇が債務、GDP、インフレにどのように影響を与えるかを注意深く検討してみれば、この結果はとても簡単に理解できるものだ。

ある年一年間における政策金利の上昇は、一時的に向こう数年間のインフレ、実質GDP、実質住宅価格の低下をもたらす。3~5年後もすると、インフレ、実質GDP、実質住宅価格は一時的な政策金利の上昇がなかった場合のレベルにまで回帰する。図1は0年目からスタートし、1年目に基準値よりも1だけ高い政策金利が実施された際、インフレ、実質GDP、実質住宅価格がどのように基準値から乖離するかを年単位で示している。政策金利とインフレはパーセンテージ、実質GDPと実質住宅価格は基準値から何パーセント乖離したかで表されている。


図1

一時的な低インフレは、永続的に低い物価水準と、基準値と比べて永続的に低い名目GDP、名目住宅価格をもたらす。住宅価格の低下は、新規の住宅ローンの額が低くなることを意味する。しかし、1年における新規の住宅ローンが、名目(住宅ローン)債務の全体に占める割合は、6~7%程度の小さいものでしかない。住宅ローンストックの回転率が低い(訳注;年間6~7%ずつしか新しいものに置き換わらない)ため、名目債務の全体の減少は非常にゆっくりとしたものになる。物価水準と名目GDPはそれよりもずっと速く、新たな低い基準値に落ち着くこととなる。このことは、物価水準、名目GDP、名目住宅価格、名目債務総額の基準値からの乖離を示した図2で表されている。


図2

名目債務が非常にゆっくりと下落し、物価水準と名目GDPはそれよりも遥かに速く下落するため、実質債務は物価水準の下落とほぼ同じ速さで上昇し、債務GDP比率も名目GDPとほぼ同じ速さで上昇する。数年後に物価水準と名目GDPが永続的な低い水準にまで到達すると、実質債務と債務GDP比率は基準値に向かってゆっくりと下落し始める。十年以上もした後、これら二つは基準値にまで戻り、一時的な政策金利の上昇がなかった場合の水準に落ち着く。これは図3に示されている。


図3

可処分所得はGDPと同じ方向に動くが、その大きさはそれほどまでではない。言い換えれば、可処分所得に対する債務の比率、つまり債務可処分所得比率も最初の数年間は、実質債務よりは大きく債務GDP比率よりは小さい割合で上昇するということだ。

結論として、政策金利の上昇は家計の実質債務と債務所得比率を上昇させることとなる。政策金利の上昇は確かに名目住宅価格と新規住宅ローンの額を押し下げるが、名目債務全体の減少は非常にゆっくりとしている。その一方で、名目GDPと名目可処分所得はそれよりも遥かに速く下落し、債務GDP比率と債務所得比率は上昇する。これは、リクスバンクがいくつもの貨幣政策レポートやそのアップデートで述べてきたこととは正反対だ。リクスバンクによるその政策の正当化は、全くもって間違っている!