金融引締めの二都物語

以下はBarry Eichengreen “A Tale of Two Tapers“(11 July, 2013)の訳です。誤訳等あれば御指摘頂けると幸いです。
7月15日追記:@keynes_2013の指摘に基づき、第7・第8パラを修正


アメリカの連銀と中国の人民銀行は、一般的には似ていないと思われている。しかし、ここ数週間で両者は同じような出来事を経ており、そしてそれはどちらも好ましくないものだった。

FEDの消化不良の症状はベン・バーナンキ議長による6月19日の記者会見によって始まった。その場において彼は、経済が好調を続ける、とりわけ失業率が7%以下に落ちた場合にはFEDの長期債券購入の削減が始まる可能性があることに注意を促した。株価はそのショックを反映し、アメリカ財務証券の利回りは急騰した。アメリカからの資金の流れが逆転することを恐れ、新興市場の通貨は下落した。

全くもってこうした反応が激しく、また憂慮すべきものであったために、FEDの面々はその意図を明確化する必要性を感じた。彼らの説明によれば、FEDの「量的緩和」政策の削減の可能性ということと、それをやめるということは異なるということだった。いつどのように長期債券購入を削減するかは将来のデータに基づくことであり、特に年末までに失業率が7%まで下がるかどうかについては何ら保証はなかった。

奇遇にも、6月19日という日は中国人民銀行が国内の逼迫化した信用市場に対する、さらなる流動性の供給を行わないということを決めた日でもあった。中規模銀行2行が債務の不履行を行ったという噂が流れ、中国の銀行間短期金利は(訳注;人民銀行の決断の)2週間前から上昇していた。銀行間レートは5%から7%近くまで上昇した。投資家たちは人民銀行がさらなる金利の上昇と経済成長の鈍化を避けるために、常のように介入を行うだろうと考えていた。

ところが、人民銀行は何ら手を打たなかった。政府は銀行が不動産開発業者や国営大企業(両者は大抵同じものだ)に大して余りにも自由に貸し出しを行ってきていることを憂慮しており、銀行がその資産管理部門を通じて、高リスクの投資をファイナンスするためにオーバーナイト市場から過大に借り入れを行っていることを気にかけていたのだ。

中国においても、市場の反応は猛烈なものだった。中国における主要な株価指数である上海総合は大きく下落した。金融システムの安定性に対する深い懸念が高まることで、銀行間金利は25%にまで急上昇した。

これは中国政府が予想していたことではなかった。同業であるFEDと同様に、彼らは意図の明確化と政策の撤回の必要性を感じ、「市場金利を合理的な枠内に誘導する」ことを投資家たちに約束するとともに、信用供給を行うことでそれを裏付けた。

(訳注;アメリカと中国における)2つの出来事のどちらも、件の中央銀行の評判を高めるようなものではなかった。6月19日は「不名誉な日付として残る」ことはないのかもしれないが、これをしっかりと心に刻むセントラルバンカーはほとんどいないはずだ。

しかしセントラルバンカーたちは、その以外である私たちと同様に、自らの失敗から学ぶべきだ。今回の教訓とは何であろうか。

第一に、6月19日の出来事は中央銀行のコミュニケーション戦略が未だ発展途上にあるものであることを私たちに思い起こさせてくれる。FEDは自らの政策をより良く説明するように繰り返し模索してきた。しかし、もし少々の比較的穏やかな言葉がこのような強力な反応を引き起こすのであれば、それはつまり投資家がFEDの意図について、困惑していないとすればだが、当然ながら未だ疑いを抱いているということだ。

人民銀行の行動は、その新たな対投機戦略のために市場になんら準備を施さなかったために、FEDよりも不味いものであった。中国の当局は人民元を第1級の国際通貨に高めようとしている。しかし、6月19日の出来事は、人民銀行を始めとして全般的に中国の政策決定機関が、人民元と彼ら自身の双方に対して必要とされる信頼を浸透させるまでには、道のりが遠いことを示している。

第二の教訓は、中央銀行は直近の少々のニュースに対して過剰反応をすべきでないということだ。量的緩和の終了を示唆するFEDの声明は、経済が上向いているというごく直近の証拠に基づいていたように見える。今、市場が反対方向に反応したことによって、投資家の一部は経済が悪化しつつあると心配し始めている。FEDはその政策や言葉遣いを変更する前に、これから出てくるのデータをもっともっと待つべきだ。

同じように人民銀行も、銀行の信用バブルを示すデータに過剰反応したようだ。実際には、これらの証拠とされたものの一部はミスリーディングなものであった。というのも、規制基準の変更によって隠れていた貸出が表面化したことを反映したに過ぎないものだったからだ。人民銀行は、会計上の問題とトレンドを区別できるように、さらなるデータを待つべきだったのだ。

最後の教訓は、資本市場の問題を解決するには貨幣政策は大雑把すぎる手段であるということだ。インフレ率が安定している中でFEDの長期債券購入の削減を導いたのは、主に新たな資産バブルに対する警戒感であった。同様に、不動産価格に対する心配が人民銀行の突如の方針の変更を招いた。

バブルは警戒しなければならないが、アメリカと中国における6月19日の出来事はバブルへの第一義的かつ主要な担当が規制当局にあるということ思い出させてくれる。セントラルバンカーたちもバブルを無視できる立場にいるわけではないが、過敏過ぎる反応を行わないよう用心すべきだ。それよりもやるべきことがあるのだから。