日本の構造改革は必要だが、他のG7諸国よりというほどではない by Lars Christensen

http://marketmonetarist.com/より、“Japan badly needs structural reforms, but not more than the rest of the G7 countries”(May 26, 2013)。この人は民間アナリスト。もともとサムナーのブログの常連コメンテーターで、マーケット・マネタリズムの名付け親です(こちらを未読の方はぜひ!)。MM一派の中で日本に一番関心を寄せているのはこの人でしょうか。


日本の金融緩和への論調の一つに、日本の本当の問題は金融でなくむしろ供給側のそれだ、というのがある。日本経済は深厚な構造変化に直面しているという点には強く同意したい – 特に高齢者の増加と労働力の減少だ。しかし、他の先進経済圏よりに比べて日本の供給サイドの問題は特に大げさに見積もられる傾向があるとも感じられるのだ。

そこでこのエントリでは日本の構造問題を他のG7諸国と比較してみよう。

米国の保守系シンクタンク Heritage Foundation が毎年、経済自由度指数というものを発表している。指数の計算方法については議論もあるだろうが、これは異国間の経済的自由度の水準の違いを非常によく記述する指数だ。そしてそう、私は経済自由度の水準は構造問題の少なさと等価だと見做す者だ。

このグラフはG7諸国の2013年の経済自由度指数ランキング。

はっきりしている。アングロサクソン国家であるカナダ(6)、米国(10)そして英国(14)は介入主義的な南ヨーロッパ諸国、フランス(62)とイタリア(83)よりも顕著に経済学的に自由だ。

日本(24)は同じく大輸出国であるドイツ(19)とともにこれらの中間に位置している。

よって改革の必要性という切り口からは、日本が世界の他の経済大国よりも大きく介入主義的だと主張することは難しい。

実際に過去10年間、日本のパフォーマンスが他のG7諸国よりも悪かったと主張することも難しい。下のグラフは2001-3の一人当たりGDPだが、日本の成長は他のG7諸国と同じくらいだ。真の劣等生は日本でなくむしろイタリアだが、イタリアの介入政策や過度な規制を考えれば驚くべきことでもない。

 

日本の構造的な弱点とは

ではデータを詳しく見て日本の構造問題の実際を探ってみよう。

下のグラフは経済自由度指数のサブカテゴリー別ランキングだ。各カテゴリーのG7の平均を100とした。このスコアが高いほど「自由」であることを表す。

基本的な傾向はそのままだ。経済自由度に関しては日本はどのカテゴリーについてもG7のちょうど真ん中くらいだ。

この分析から浮かび上がってくるのは、日本の相対的な強さと弱さである。

たとえば、日本の公的部門は他のG7諸国の平均に比べて小さく、また労働市場は相対的に自由だ。他方、規制面に問題があることも明白である。とりわけ貿易、ビジネス、投資、金融の自由という分野で顕著だ。このうち最初の三つは、過度に保護的な経済に関するものだ。この点は海外投資家も国内投資家もそして私も、日本の改革努力が明らかにフォーカスすべき分野だと考えているところだ。

アベさん、どうか日本経済を開放してください

実に単純な話なようだ。アベ総理が真剣に国の経済を改革したいならば、国内的にも対外的にも経済を競争に対して解放していく必要がある。

国内的には、他の論者も言うように小売セクターの競争が足りないことを強調したい。例えば「大店法」によって小さな小売店(パパママショップ)は、大型スーパーのようなより大きくより効率的な小売店よりも人為的に保護されている。

同様に不動産市場の危機が10年に渡って深刻化しているその一方で、都市計画法が小売セクターの競争を妨げている。

最後の点として、価格統制や高い補助金による農業セクターへの介入主義は少なくともEUのそれと同程度には悪い。最近のWSJの記事がひどい事実を伝えている。

2010年、農家は4兆6000億円の価値を生んだが、4兆6000億円の補助金を消費した。つまり、農業全体では差し引きゼロとなった。日本の平均的な農業従事者は年齢が66歳で1.9ヘクタールの耕作地を持っている。(訳注:当該記事日本語版より引用)

これは経済資源の効率的な使用とはかけ離れたものだ。以上のように小売、住宅、そして農業の再構築の必要性ははっきりしているようであり、「第三の矢」と呼ぶ構造改革の矢のターゲットとされるべき分野だ。

 貿易と投資の自由化は、アベノミクスに対する世界のサポートを強め得る

日本銀行の金融緩和努力は近隣窮乏化政策であると批判されている。私はこれは完全なお門違いの批判だと考えるものの、世界各国は日本が保護主義的だと見るようになっていることは疑う余地もない。日本政府がそのような心配を鎮める良い方法は、自ら貿易障壁や関税を撤廃しつつ海外の投資に門戸を開くことだろう。これは日本経済の最大の利益をもたらし、また日本の生産性を著しく上昇させつつ、同時に他国が日本を保護主義的だと論じることを困難にする。

金融政策に注力したことは正しく、これが構造改革をサポートする

日本には喫緊の経済改革の必要があるものの、その必要性がフランスやイタリア、さらにドイツよりも高いとは思わない。金融改革にフォーカスしたのは正しかったと私は評価しているからだ。

そして新しい金融政策レジームが日本をデフレから脱却させ経済成長を加速させようとしている(向こう2-3年)ので、アベ政権は比較的人気のない改革を実行するサポートを受けた状態にある。さらに、新しい金融政策レジームが名目GDP成長を加速しようとしているので、公的負債と銀行の問題の重みは減少しつつあり、それ自体が長期の実質GDP成長は加速する要因でもある。

まとめとして、アベ政府は概ね正しい金融レジームを確保した(私はインフレ目標より名目GDP目標が良いと思うものの)。今こそ三本目の矢を準備する時だろう。