金利と金融政策についてのコメント by Scott Sumner

サムナーのブログから、“Further comments on interest rates and monetary policy”(5. April 2013)を紹介。誤訳指摘はコメント欄によろしくです。


私が金融政策と金利をどう見ているのかについて、読者たちはまだ混乱しているようだ。まず、このテーマについての私の過去の発言を読者が理解したと思うべきではないだろう。この問題はとても微妙かつとても反直観的で、しかも私は才能ある書き手ではないから。そこでまず何が実際に正しいかを確認し、次に私の過去の発言を検討する形にしてみよう。

1. 金利は金融政策の信頼できる指標ではない。これは100回言った。

2. NGDP成長は金融政策の信頼できる指標である。これも100回言った。

3. 長期名目金利はNGDP成長率およびNGDPのトレンドからの乖離水準に強く相関する。これもしょっちゅう言ってきた。では、NGDPが信頼できて同時に長期金利がNGDPと強く相関するならば、それが信頼できない理由は? それは長期金利には他のさまざまな要因の影響を受けるからだ。グローバルな貯蓄や投資の動向などである。それでもしばしば長期金利は金融が緊縮的であったかどうかのよい指標になっている。

4. ここで混乱が忍び込む。1970年代の高金利はNGDP成長を引き上げた金融緩和の産物だったと言ったと思う。もし債権利回りが15%である時にはそれが1%であるときよりも金融は緩和されていたとする方に賭けるべきだろうともしばしば言った。読者はこれを、高金利はいついかなる場合にも金融緩和の指標であると受け取ったかもしれない。が、そうではない。金利はNGDP成長(と水準)に相関するのでふつう高金利は金融緩和を示すものだが、完璧な相関にはほど遠い。

以上は長期の傾向についての議論。ところが金融政策のアナウンス直後の市場の反応を見るときには、これとは完全に異なる問題が浮上する。

5. 私は金融緩和のサプライズは長期債券利回りを引き上げ得るし、また引き下げ得るとも主張している。数字の例を挙げて説明するとわかりやすいだろう。

仮に中央銀行による大量の債権購入のアナウンスが流動性効果により債券利回りを20ベーシスポイント下げるとしよう。他の影響がなければ債券利回りは下がることになる。しかしこの政策がNGDP成長期待を引き上げるかもしれない。この要因によって債券利回りはどの程度上がるだろうか。それは1ベーシスポイントと1000ベーシスポイント、いやそれ以上の間のどこかだ。つまり、二つの影響のを合わせると利率は19ベーシスポイント下がることもあれば980ベーシスポイント上がることもある。

もしも債権購入が中央銀行の効果的ではないジェスチャーだと見做されたならば、つまり中央銀行はNGDP成長経路を劇的に変えるまでの積極性は追求しないだろうと見做されたならば、名目金利は下がるだろう。つまりNGDP成長を最低でも20ベーシスポイント引き上げないと金利は上がらないのだ。逆にもしこの行動が1979-81型の二桁のインフレを引き起こすと見做されれば債券利回りは上昇する。もしFedが高いNGDP成長期待を計画すれば、それは再び起こり得る。

6. さらに悪いことに、ゼロ制約が物事をさらに混乱させている。日本におけるヴィクセルの均衡金利は十分にゼロ以下だとみられるので、NGDP成長期待をささやかに押し上げても単にそれをゼロに近づけるだけで名目金利は上昇しないのだ。

したがってこの構図には苛立たしいまでの曖昧さがあるのであるが、あいにく世の中はそういうも。私、そして日本の債券市場も日本銀行がNGDP成長させるのかどうかを判断する方法がよくわからないのだ。流動性効果の大きさについてはある程度の確かさがあるものの、所得効果とインレーション効果の不確実性がきわめて大きい。そんな不確かな環境下での期待利回りは、政府筋が発する将来の政策意向に関するヒントに反応し不安定なものになるだろう。これが今現に起こっていることのように見える。債権利回りはまず急落し、その後上昇した。それがどんなニュースを反映したものであるか私にはわからないが、不確実性が大きいうちはそれほど大きくは動かないだろう。ビットコインのようなものだ。

7. 私はよくこのブログで金融政策に金利が反応して「間違った方向」に動くケースを強調してきたが、これは「金融緩和はいつも低金利をもたらす」という読者の誤った思い込みを揺り動かしたいからだ。また債券市場が常に政策アナウンス通りに動くと論じたことは決してない。私は逆の反応の例(Jan. 2001, Sept. 2007, Dec. 2007)を強調するのは、それは金融緩和のアナウンスに対し金利が常に下落するわけではないことを示すためなのであって、金融緩和アナウンス後にいつも金利が上がると主張するためではない。それは不合理だろう。

まとめ:

1. 長い目で見ると長期金利はGDP成長(とその水準)を非常によく追いかける傾向がある。だからこの話題に関して低金利は金融引き締めに等しいというある種の一般化をよくやってきた。日本はまだ金融を引き締めている!彼らの期待NGDP成長は低い、というように。そして彼らの金利は依然として低い。

2. 金融政策のアナウンス直後の市場の反応については、その予測は大変難しいが、有益ないくつかの原則があるといつも主張してきた。将来の政策経路を劇的に変えそうなアナウンスは、一度限りの貨幣注入に終わりそうなそれよりも、債券利回りの「逆の」反応を呼ぶことが多い。もっと多くのことを言えればいいが、私もしょっちゅう皆さん同様に混乱するのだ。

  • http://twitter.com/vwatcher2010 voxwatcher

    翻訳お疲れ様です。

    >つまりNGDP成長を最低でも20ベーシスポイント引き上げないと金利は上がらないのだ。
    「NGDP成長を」ではなくて、NGDPの急速な成長期待によって少なくとも20べーシスポイントだけ金利が上昇するようでないと、結果として(流動性効果と所得・インフレ期待効果との総合的な結果として)金利は上がらないのだ、ということだと思います。

    >私、そして日本の債券市場も日本銀行がNGDP成長させるのかどうかを判断する方法がよくわからないのだ。
    “how determined the BOJ is to raise NGDP growth”というのことなので、「私、そして日本の債券市場も日本銀行がNGDPの成長加速に向けてどれだけやる気があるのかよくわからないのだ」、ということだと思います。

    >また債券市場が常に政策アナウンス通りに動くと論じたことは決してない。
    「また債券市場が政策アナウンスに対して常に同じ反応を見せる(同じ方向に動く)と論じたことは決してない。」、ということだと思います。すぐあとにあるように、金融緩和のアナウンスに対して金利が低下することもあれば、上昇することもあるのであって、「金融緩和のアナウンスに対して常に金利は上昇する」(=債券市場が政策アナウンスに対して常に同じ反応を見せる)なんて言った覚えはない、と。