セントルイス連銀の記事から: 「インフレ予想について -Expected Inflation Near and Far」 by David C. Wheelock

えーっと、『道草』でポールくんのディスインフレネタに出てきた “TIPS (Inflation-Protected Tresury Securities) ” の参考にするために訳していたもの。原文は『Monetary Trends, Feb 2007. by Federal Reserve Bank of ST. Louis.』 (PDF直リンク)。アメリカのセントルイス連銀の記事ですね。


原油価格や非金融的現象の変動は、インフレーションの短期的な見とおしによるものとみなされることが多い。経済学者の多くがこの考えを受けいれているものの、長い期間ではインフレーションは金融政策で決まる。したがって、長い目でみた時のインフレ予想というものは、おもに金融政策当局が目標とするインフレを国民がどう考えるかを反映するものだということだ。言いかえると、金融政策当局があるインフレ目標にコミットしているとみなされれば、原油価格やその他の非金融的現象は国民の見方にはあまり影響がないのである。

予想インフレ率を測定する際、研究者やアナリストはふつう調査や市況をみる。例えば、通常の財務省証券やインフレの影響を受けないよう調整された財務省証券 (TIPS) の同じ満期のものを選んで、そのイールドを比べるのだ。TIPS より通常の財務省証券のイールドが上昇していれば、市場の人々がその証券の満期までにインフレ率が上がると思っていることがわかる。[原注1]

図は 5 年満期の TIPS のスプレッドの月毎の値を 2004 年 1月から 2006 年 11月にわたってプロットしたものだ。2004 年と 2005 年のスプレッドの変動は大きく、不安定な原油価格とカトリーナとリタというふたつのハリケーン後の経済的見とおしの不確実さがあらわれている。それ以降のスプレッドの変化もエネルギー価格の変動と連動している。例えば、2006 年後半にスプレッドの値が急落しているのは、74 ドル/バレルだった 7月の原油価格が 10 月には 60 ドル/バレル以下まで大幅に値を下げたのと同期しているのである。

5 年満期の TIPS のスプレッドの値のような短期の予想インフレ率のものさしはエネルギー価格と緊密に連動しているが、より長期の予想インフレ率のものさしはエネルギー価格の変動の影響はあまり受けない。例をあげると、5-year forward TIPS のスプレッド (5年先以降の5年間の予想インフレ率を反映する) をみると、その値は原油価格より今から 5 年先までをカバーする TIPS のスプレッドに連動している。[原注: 2] 図には 5-year forward TIPS のスプレッドも示してあるが、その値は 2004 年以降 2.25 と 2.75 の間で、原油価格が下がった 2006 年後半でもそこそこ値を下げただけだ。フィラデルフィア連銀が発表する 「Survey of Professional Forcasters」 のように長期間の調査では、予想インフレ率はさらにずっと安定した値をしめしてきた。「Survey of Professional Forcasters」 による 10 年平均の CPI インフレ率の見とおしの中央値は 1999年以降、2.5% から上下 0.10% の幅におさまっているのだ。[原注: 3]

長期にわたる予想インフレ率のほうがより安定しているのは、市場の人々が原油価格の変動の影響は一過的なものだと考えているのをしめしている。国民が連邦準備銀行はインフレ率の低維持にコミットしているということをしっかり信じつづけていたのがはっきりわかる。万が一、長期間の予想インフレ率が急上昇するようなことがあっても、それは原油価格を反映したものではなく、連邦準備銀行がインフレをチェックして抑制するというコミットメントの信頼性が問題になっているのである。

- David C. Wheelock


[1] An increase could also refrect an increase in inflation-risk premiums. For a discussion od the use of the TIPS yield spread as a measure of expected inflation, see Kevin L. Kliesen and Frank A. Schmid, “Monetary Policy Actions, Macroeconomic Data Releases, and Inflation Expectations,” Federal Releases Bank of St. Louis Review, May/June 2004, 86(3), pp. 9-21.

[2] The 5-year forward TIPS spread is obtained by dividing the total inflation expected over the entire 10 years [(1 + 10 -Yr TIPS Spread)5] and then taking this ratio’s 5th root (equivalent to raising it to the 0.2 power) to get the average annual rate.

[3] See www.philadelphiafed.org/econ/spf/index.html