「マンキューからの回答」 by David Beckworth

以下は、David Beckworth, “Greg Mankiw Answers My Questions”(Macro and Other Market Musings, October 18, 2011)の訳。


2011年の5月のことだが、私はマンキューに宛てて次のような問い掛けを行った(邦訳はこちら)。

グレッグ・マンキュー(Greg Mankiw)が自身のブログ(邦訳はこちら)でリカード・レイス(Ricardo Reis)との共著論文(pdf)に言及している。この論文では「中央銀行はどの物価指数(インフレ率)をターゲットにすべきか?」という問題が検討されているが、結論として以下のような見解が述べられている。

経済活動の最大限の(可能な限りの)安定化を目指そうとするのであれば、中央銀行は、名目賃金の水準に大きなウェイトを置くような物価指数をターゲットにすべきである。

この論文では名目賃金(に大きなウェイトを置く物価指数)をターゲットに据えることの利点がいくつか述べられているのだが、ここでちょっと指摘させてもらいたいことがある。それは、名目賃金の安定化と1人当たり名目所得の安定化とは同義であり、それゆえ名目賃金(に大きなウェイトを置く物価指数)をターゲットに据えることと名目所得あるいは名目GDPをターゲットに据えることとの間にはそれほど大きな隔たりはないのではないか、ということである。なぜわざわざこんな指摘をするかというと、マンキューはロバート・ホール(Robert Hall)と共同で執筆した1994年の論文(pdf)の中で名目GDPターゲット-特に、幅広い合意を得た名目GDPの水準に関する予測(consensus forecast of the nominal GDP level)をターゲットに据える名目GDPターゲッティング-を褒め称えているからである。

というわけで、ここでマンキューに質問である。マンキュー、今現在あなたは名目GDP水準ターゲットに関してどのようにお考えだろうか?(賛成の立場なのか、反対の立場なのか、それとも・・・?) もし1994年当時と変わらずに依然として名目GDP水準ターゲットに賛成の立場だとしたら、名目GDPは危機以前のトレンドにまで回復あるいは少なくとも現在の水準を上回る必要があるとお考えだろうか? 

あれ以降マンキューから直接的なかたちで回答をもらうことはなかったものの、彼の回答を窺い知るに十分なだけの状況証拠なら集まったのではないかと考えている。まず最初の証拠は、つい最近マンキューがマシュー・ヴァインツィアール(Matthew Weinzierl)と共同で執筆したこのBrookings Paper(pdf)である。この論文では最適な安定化政策がテーマとなっており、様々な政策オプションのメニューが検討されているのだが、金融政策に制約が課されない場合の結論として以下のようなまとめがなされている。

短期金利がゼロ下限制約に直面するや次の第2段階に移行することになる。第2段階においては、完全雇用への復帰を促すための政策手段として非伝統的な金融政策が活用されることになる。この第2段階においては、短期金利を引き下げることはできなくとも、完全雇用への復帰を促す上では長期金利の引き下げで十分かもしれないことが理論的に示されている。また、我々のモデルによると、長期的な名目アンカーの引き上げによって必ず完全雇用への復帰につながることが示されている。「長期的な名目アンカーの引き上げ」というのが具体的に何を意味するのかという点について一つの解釈を与えると、中央銀行がこれまでよりも高めの名目GDP成長率をターゲットに据えるということになるだろう。

言い換えるならば、完全雇用への復帰を促す上では名目GDPの水準にターゲットを据えた金融政策で十分ということである。これは名目GDP水準目標に対してかなり好意的な見解であるように思える。これだけではまだ証拠が不十分だというなら、ちょうど今日のことだが、マンキューが自分のブログで名目GDP水準目標を推奨するゴールドマン・サックスの論説にリンクを貼っている事実を挙げることができるだろう。この事実はマンキューが暗黙にではあるが名目GDP水準目標に支持を与えているものと見なすことができるだろう。そういうわけで、これまでの証拠に照らすと、マンキューは私の質問にはっきりとした回答を寄せている、と考えてもよいであろう。

今やマンキューはハーバード大学に籍を置く一流のアカデミックな経済学者というにとどまらない。彼は共和党の大統領候補の最右翼であるミット・ロムニー(Mitt Romney)の経済アドバイザーでもあり、それゆえNGDP水準目標のアイデアがホワイトハウスでも話題になる日がやってくるかもしれないのである。NGDP水準目標は共和党員も支持するに足るだけの好ましい特徴(こちらこちらを参照)を備えた政策枠組みである。ミット・ロムニーもこのアイデアに耳を傾けてくれたらと願うところである。