「臆病すぎるFed? NGDP目標の採用に向かうイギリスと日本?」 by Brad Plumer

以下は、Brad Plumer, “Think the Fed has been too timid? Check out Britain and Japan.”(Wonkblog, December 13, 2012)の訳。


過去数年にわたり、沈滞したアメリカ経済を救出するべくベン・バーナンキとFedは前例のない数々の手段の採用に乗り出してきた。その一方で、「Fedはまだもっとやれる。もっともっとやれる」と考える経済学者も存在している。Fedに手厳しい彼らのアドバイスは海を越えたイングランドの中央銀行で好意的に聞き入れられることになるかもしれない。

順を追って説明しよう。今週の水曜日、少なくとも失業率が6.5%を下回るかインフレーションが2.5%を上回りそうな見込みがない限りは政策金利を現在の低水準に据え置く旨がFedによって宣言された。簡単に言うと、Fedは経済が力強い回復軌道に乗ることができないでいる間は刺激策から手を引くことはないと宣言したわけである。

しかし、経済学者のスコット・サムナー(Scott Sumner)-彼はこれまでも折に触れて「Fedは臆病すぎる」と批判してきた-はFOMCのこの宣言にもそれほど心を打たれた様子ではないようである

知的な観点からすると重大な決定だと言えるが、政策的な観点からするとそうではない。というのも、Fedは既に経済が回復するまでは金融緩和を続けることにコミットしているからである。今回の決定はその約束を一層明確にしたものであり、確かにそれはそれとして望ましいことではある。しかしながら、水準目標(level targeting)とはまだかなり距離がある。今回Fedが行ったコミットメントは、過去20年間にわたって日本経済が辿ってきた経路-名目GDP成長率ゼロ経路-とも完全に整合的なものなのである。

ここで簡単に説明を加えさせてもらうと、サムナーは名目GDP水準目標の推進者である。サムナーによれば、2007年以降アメリカ経済は年率およそ5%で名目成長すべきであったところが-「名目」というのは実質成長とインフレーションとが混合されたものである-、現実には名目GDPは大きな落ち込みを経験することになってしまった

名目GDP水準目標が採用された場合、バーナンキはアメリカ経済がトレンド[1] に回帰するまでは何でもする-資産を購入することから経済に貨幣を注入することにわたるまで何でも-旨を宣言することになるだろう。名目GDP水準目標の下では、経済に対してかなり強力な刺激が加えられ、おそらくはかなり高めのインフレーションが生じることになるだろう(NDGP目標に関する入門的な解説としては本ブログのこちらのエントリーを参照してほしい)。

これまでのところ、バーナンキはNGDP目標の採用には異議を唱えている。しかし、このアイデアは海を越えたイギリスで聞き入れられることになるかもしれない。つい最近のことだが、カナダの中央銀行からイギリスの中央銀行へと移るマーク・カーニー(Mark Carney)-イングランド銀行の次期総裁-がNGDP目標について好意的に語ったのである(拙訳はこちら)。

トロントのCFA協会でカーニーは次のように語った。深刻な不況下においては、「経済がより順調な経路に沿って推移することを促すために、中央銀行は経済が上向き、インフレーションが上昇する気配を見せた後においても極めて緩和的なスタンスを維持することに信頼のおけるかたちでコミットする必要があるかもしれない。」

彼はさらにこう付け加えている。「それでもなお一層の刺激が必要となった場合には、政策枠組みそれ自体を変更する必要があるかもしれない。例えば、名目GDP水準目標は、多くの面で、フレキシブル・インフレーション・ターゲッティング下において閾値ベースのコミットメントを試みるよりも強力な効果を発揮する可能性がある。」

イギリス財務省も金融政策をめぐるカーニーのアイデアを好意的に聞き入れる構えのようである。ただし、だからといってNGDP目標がイギリスで日の目を見るのも確実だと言いたいわけではない。少なくともNGDP目標の採用を巡って表立って議論されることにはなるだろう。サムナーもこのイギリスでの動きには胸を躍らせているようだ

日本でも注意を向けるべき事態が生じつつある。日本は長年にわたり芳しくない経済のパフォーマンスを経験してきており、つい最近になって再度景気後退入りしたことが公式に発表された。自由民主党-自民党はきたる日曜日の選挙での勝利が有力視されている-は、日本銀行は名目GDP成長率3%目標を採用する必要がある、との主張を展開している日本においてはインフレーションは他の国よりも物議を醸しやすい。というのも、固定収入である年金で生計を立てている退職した高齢者の数が多いからである。しかしながら、今のところ、政府高官は経済成長のキックスタートを実現するためであれば何でも試みようという腹積もりであるようだ。)。

これまでバーナンキはあまりにも臆病すぎたと感じている人々に告ぐ。今後のイギリスと日本の動きから目を離すなかれ。

  1. 訳注;2007年以降名目GDPが年率5%で成長を続けていた場合に達成されるであろう名目GDPの経路 []