日銀の独立性が拠って立つ基盤には欠陥…若田部昌澄教授からFTへの手紙

貴紙の社説「Tokyo manoevres」(11月20日付)(邦訳)では,日本銀行の政策に対する最近の政治家の主張の危険性を警告しておりましたが,日本のコンテクストについて,より慎重に考慮していただきたかったと思います.

中央銀行の独立性は,原則として重要なものではありますが,1997年に成立した現在の日銀法には重大な欠陥があります.この法律の第2条は,物価安定を通じた日本経済の健全な発展を日本銀行の目的と定めていますが,「物価安定」の厳密な定義が欠けています.また,第4条では政府と日本銀行の協力を求めていますが,そのような協力関係を保障するための厳密な仕組みがありません.これは,英国銀行など他の国々の中央銀行の制度規定とは極めて対照的です.英国銀行が1997年に独立性を獲得した際には,政府が設定する明示的なインフレ目標を伴っていたことを思い起こしていただきたいと思います.

この意味で,野党である自由民主党総裁の安倍晋三氏の提案は何ら異常なものではありません.彼の提案は単に,日本政府と日本銀行が,他の中央銀行で標準となっている制度上の慣例を採用するべきだと言っているだけなのです.さらに,1997年以来の日本銀行のパフォーマンスは,立派なものとはとても言えません.そのほとんどの期間,日本はデフレーションを体験してきたのですから.

競争政策や規制緩和など,日本のさまざまな面で強力な改革が必要だというのは確かです.また,政治家たちは,日本経済の病のすべての責任を日本銀行に負わせるべきでもありません.しかし,長期的な物価上昇率を決定できるのは中央銀行だけだというのも,また真実なのです.

早稲田大学経済学部教授 若田部昌澄

(BoJ independence rests on a flawed foundation, Letter from Professor Masazumi Wakatabe, November 20, 2012 10:56 pm)