本を値札で判断しないで by Tim Harford

8月11日にFinancial Timesに掲載されたTim HarfordのDon’t judge a book by its cover priceの訳。誤訳の指摘お願いします。


2300万ドルの値付けがされた本は、インターネットが価格透明性の時代の到来を告げるという夢とは程遠い

昨春、ある若い生物学者が普通だが絶版となっている参考図書である、ピーター・ローレンスのThe Making of a Flyを購入しようとしていた。Amazonは手頃な価格で15冊の中古を提供していた―2つあった新品は安いほうが173万0045ドル91セント、プラス送料の3ドル99セントだった。

カリフォルニア大学バークレー校の進化生物学者マイケル・アイゼンはこの話を聞いて何が起こっているのか理解しようとした。それはいたずらではありえなかった―そこには2つの売り手が関わっていたが、そのどちらとも満足している顧客が数千人いたのだ。アイゼンはAmazon上の多くの価格がコンピューターによって設定されていると聞き、それが理由かもしれないと疑った。

翌日、両方とも価格が280万ドル付近まで上昇していた。その日の終わりには高い方の本は353万6675ドル57セントになっていた。アイゼンは何が起こっているのか理解し始めた。片方の売り手であるprofnathは1日に1度、その価格が最安値をわずかに下回るような価格になるよう設定していた。もう一方の売り手であるbordeebookは数時間後にこれを見つけてprofnathの1.270589倍高くなるよう設定し直していた。時間をかけてbordeebookはその価格を上げ続け、profnathはそれを下回りながら価格上昇に付いていった。結局そのスパイラルは止まった―思うに人間が間に入ったのだろう― しかしそれはbordeebookがわずか2369万8655ドル93セント、プラス送料3ドル99セントでThe Making of a Flyを提供する前ではなかった。

多分profnathは、一貫してその他大勢の価格を少し下回ることで、本をできるだけ高く売りたかったのだろう。bordeebookはさらに不可解だが、アイゼンは独創的な理論を持っている。彼はbordeebookが全く本を持っていなかったのだろうと考えている。その代わり、評価の高い売り手に他より少しだけ多く払うことを厭わない買い手の興味を引こうとしたのだ(bordeebookには記録では10万人の満足した顧客がいる)。

唯一の問題は、誰かがその本を注文したらbordeebookはそれを確保しなければいけないことだ―それゆえ市場で優勢な価格に上乗せした価格を請求したのだ。

もちろん2369万8655ドル93セント、プラス送料は1冊の本としては高すぎる―それは、インターネットが、消費者が1番安い製品を見つけるとその価格は必然的に生産コストまで下がるという価格透明性の時代の到来を告げる、という夢とは程遠いものだ。(ドットコムバブル時代の渦中にいたすべての人がそれがインターネット企業は極めて儲かるというそのときの他の試金石原則と矛盾するということに気づいていたわけではなかった。)

実際には、なぜ価格透明性がより低い価格につながるのか明らかとはいえない。その問題は19世紀のフランス人数学者J.L.F ベルトランによって研究された。ベルトランは透明性のある価格で全く同じものを2つの競合が提供するとすべての顧客が安い方に群がることに気がついた。それぞれの企業は1ペニー安くすることで市場を丸ごと手に入れることができ、生産コストにまで価格が下がるまではその値下げの過程は止まらないのだ。

いかなる経済モデルと同様、ベルトランのモデルもいささか単純化しすぎだ。小さなひねりが彼の予測を上に向かせる: ずっとその過程を繰り返すだけなのに、だ。競合が価格を上げる方法を見つけられれば彼らに大きく利することとなる; 多分2300万ドルではないだろうが―しかし独占企業が課す水準だ。顧客の親友のように思われる価格透明性が彼女の最悪の敵になってしまうのだ。

そうなってしまうのはなぜか。2つの競合が合意の一部として独占価格を付けていたら、双方に価格を下げるインセンティブがないからだ。全くないのだ。値下げはすぐに競合に見つかって合わせられてしまう。容赦ない値下げを全くしないことで透明性は彼らに価格を高いままにしておくことを保証する。

価格を下げる唯一のものは新規参入者だ。そして多くの産業で、確立された市場にくいこむのは容易でない。透明性は価格を下げる優れたものになりうる―しかしそれが当然のことと考えるのは賢明ではないのだ。