ヒュームからウッドフォードまで…で、ヒュームに帰る? by Scott Sumner

スコット・サムナーのブログから、”From Hume to Woodford . . . and back to Hume?“(27. February 2012)


さかのぼること1750年あたりにデイビッド・ヒュームは金融経済学の大部分を開発した。その一部はただ部屋の中で座って思考することによって。ある朝目が覚めると英国の全員の財布の金貨が二倍に増えたら、という思考実験を彼は論じている。ヒュームはこう論じる。英国は実質的に豊かになるわけではないが、物価水準がただ二倍になる。そしてこの超過貨幣が使用され、売買額が拡大していく移行期間があるだろうと彼は記している。つまり彼は貨幣数量説(QTM)とフィリップス曲線を理解したのだ。1970年代にフリードマンは、過去200年にマクロ経済学が進歩したのは「ヒュームから微分一回」分だけだと言った。つまりヒュームは物価水準の変化に注目したが、フリードマンはインフレ率の変化に注目したという意味だ。

しかもヒュームは貨幣需要が増えること(もしくは貨幣循環速度の低下)の影響についても理解していた。

「物価について言えば、固く箪笥にしまわれたコインは消えて無くなったようなものである」 デイビッド・ヒューム 「貨幣について」

そして人々は貨幣の供給が増加するときには一時的に金利が低下するということに気付き始めた。これは短期的に賃金と価格が硬直的であることによるもので、物価が調整されるまでの期間、いくつかの変数は貨幣の需給を均衡させるために調整される必要があるのだ。従って賃金と物価が調整されるまで金利は変化し続ける。このことが経済学を著しく間違えさせてしまった。ヴィクセルの、後にはケインズの影響の下、経済学者たちは金利の変化を貨幣供給の増加に伴う付帯現象としてではなく、金融政策そのものだと見做すようになり始めた。これはウッドフォードによる貨幣のない金融モデルの開発で頂点に達した。このモデルで重要なのは金利だけである。

ただしウッドフォードの仕事はそれだけではない。彼は総需要は現時点の政策スタンスよりも将来期待される金融政策経路に依存するということを示した。後で見るように、この洞察がヒュームのマクロ経済学を甦らせる扉を開いたのだろう。

QTMはホットポテト効果をベースにしている。無利子な貨幣の供給を二倍にすると人々は超過した現金収支を手放そうと思う。しかしマクロで見れば、中号銀行がベースマネーの供給を支配するのだからこれはできない。超過現金収支を手放そうとする動きは、増大した現金収支分を手元に置きたいと人々が考えるようになるまで物価とNGDPを引き上げる。そうなるのは物価とNGDPが二倍になったときで、このとき実質の貨幣需要は自然に元の水準に戻っている。

ウッドフォードのマクロには欠陥がある。貨幣が入らないモデルではこの貨幣供給と物価水準の大変化を説明できない。これは第一次大戦後のハイパーインフレがヴィクセルとケインズを一時的に貨幣数量説に復帰させたのと同じ理由。このマネタリーアプローチならばマネタリーベースを87倍にしたとき(1970年代から1980年代に多くの中所得国家がこれを行った)の物価水準を大まかに見積もる(87倍になるだろう)ことができるのに対し、金利や不況からインフレーションにアプローチするのではこれは絶望的だ。このようにある意味今でも貨幣の量が物価を動かしていることにはほとんど疑いの余地がない。少なくとも長期については。ではこれをどうやって我々の目下の状況に対応付けられるだろうか。インフレ率がかくも低く、貨幣循環速度がかくも不安定な状況に。

ウッドフォードのアプローチがQTMを救い出す力を持っているように思われる。これを考えてみよう。QTMは長期の物価水準の変化しか説明できないと批判される。ウッドフォードが現在の総需要は金融政策の期待将来経路(すなわち長期の)によってほぼ決まると言っているにも関わらず。ケインズは長期的には我々は皆死んでいると言ったが、今ケインズは死んでおり、ウッドフォードは短期の総需要は長期の(期待される)変化で決まると言っている。

まずは準備金への付利の問題を横に置いて利子の付かない通貨に注目しよう。この不況以前(2007年)、通貨はNGDPの6%程度だった。もし2017年の金利がプラスだったら再び6%程度か1%ずれた水準に戻っているだろう。このことは2017年のNGDP水準が2007年よりどれだけ増えているかは、2017年にどれだけの通貨をFEDがセットしているかどうかでほとんど決まるということを意味する。正確にではなく近似的に。なるほど彼らは通貨ストックを直接制御はできないが、ベースを制御する。そして平時においてベースの90%以上が通貨だ。もしFEDがこの比率を引き下げたいならば、IORを増やし通貨がお望みの量になるようにベースマネーを供給すればいい。比率を下げたくないならばIORを引き下げればいい。場合によってはゼロまでに。

今から2014年までのNGDP成長は、人々が2017年のNGDPがどうなると考えているかということに強く影響される。Fedが金利経路を表明しても、人々は2017年のNGDPを概略予測することはできない。しかし彼らが2017年の通貨ストックを1.6兆ドル(2007年の二倍)に設定するつもりだと言えば、人々は2017年のNGDPはだいたい2倍くらいになるだろうとわかるだろう。そして向こう二年間にわたってNGDPは急成長するだろう。

もちろんFedはそんなことをすべきではない。その理由は二つ。第一に望ましいNGDP成長率よりも高すぎる。第二に、予測をターゲットとするのに比べて不正確だ。もっといいのは、2017年のNGDPを2012年より30%高くするのに必要なだけベースマネーを供給すると言うことだ。

こういう金融政策ならヒュームは理解するだろうし、賛成することだろう。

追記。どうして30%か?これなら今から2013年までで7%、そのあとは5%を割り当てられる。これは回復の劇的な加速させ、かつ政治的に許容できないインフレを招かずに2003以前のトレンドラインに戻す合理的な妥協点なのだ。
追追記。商業銀行?それについてヒュームが何か言ったか思い出せない。だから研究したことはないね。
このエントリをあらゆるMMTersに捧げる。