テイラールールの「危機」の持つ7つの顔 (第3節) by James Bullard

3 結論

2008年と2009年のシャープな景気後退から世界経済の回復が続いている。回復途上のアメリカ経済はインフレ予想を低下させるような負のショックに敏感になっている。結果として、意図せざる低名目金利定常状態へと陥らせる可能性がある。そのような状態から抜け出すことは困難である。もちろん我々はそのようなショックを受けないことを祈ることも出来るし、経済がもっと頑丈であることを祈ることも出来る。しかし、祈りは戦略ではないのだ。アメリカは近年にないほど日本タイプの状態に現在近づいている。

部分的にはこの居心地の悪い類似はFOMCが追求している現在の金利政策に責任がある。この政策は単に金利をゼロに近づけるだけでなく、「長期にわたって」それを保ち続けると宣言しているのだ。さらに悪いことに現在の経済環境で起きる負のショックへの対応はその期間をさらに長期化させるが故に、金利正常化がさらに遠い先まで持ち越されることになるのだ。これはまさに最近起きた出来事からの教訓であるように見える。2010年春のヨーロッパのソブリン危機によって世界経済が動揺し、民間部門はアメリカの政策金利の正常化が遅れることを予想した。これはインフレ加速的な政策であると考える人もいるであろうが、TIPS[1]ベースで測った5年、10年先のインフレ予想は50ベーシスポイント低下したのだ。

ゼロ金利を長期間続けることを約束する政策は諸刃の剣である。この政策はインフレとインフレ予想を上昇させ、図1のターゲット均衡へ復帰させることと整合的である一方で同時にインフレとインフレ予想は低下し日本がはまっているような意図せざる定常状態へと経済を導くような考えとも整合的なのである。

アメリカ経済がこのような状態になることを避けるには今後負のショックに対して異なる対応をとるべきである。現在の政策の枠組みでは負のショックに対してはより長期にわたってゼロ金利にコミットすること—それによって恒常的な低い名目金利をもたらすために反景気循環的になりうる—で対応することになるが、負のショックに対するベターな方策は国債の購入を通じた量的緩和を拡大することである。

  1. 訳注:Treasury Inflation Protected Security(物価連動債) []