大げさな恐れ by Simon Johnson

New York Times の Room for Debate における “Should We Brace for Deflation Now” のエントリ訳出第二弾(第一弾はTyler Cowenのこれ)。 

原文は8月11日の Simon Johnson :  An Overblown Fear 

著者の紹介部分は翻訳していません


Simon Johnson, a professor at the M.I.T. Sloan School of Management and a senior fellow at the Peterson Institute for International Economics, is the co-author of “13 Bankers: The Wall Street Takeover and The Next Financial Meltdown.”

三つの理由から、米国ではデフレは起こりそうもない。

第一に、FEDは物価下落がとても危険なものであるということを理性的(philosophical)にも操作的(operational)にもはっきりと理解しており、これを避けるために何をすべきかを理解している。物価とは何よりもまず名目の問題であり、これは経済に循環しているマネーの量から直接的に決定されるのである。

マネーの循環メカニズムは異常な環境下では破壊され得る – それはたとえば1930年代にリテール預金を抱えた銀行倒産が広がったことで引き起こされた。しかし今日これは起こり得ない – 我々の預金保険制度は80年近くに渡りしっかりと持ちこたえている。

第二に、1990年代の日本(とそのデフレ)で中核だった”ゾンビ企業”問題には、今日の米国は明らかに直面していない。企業のバランスシートは健全なまま–  企業幹部は2008年秋の信用崩壊でショックを受けたが、労働者を迅速にレイオフし、現在ほとんどの大企業はとても収益力があるように見える。日本で過去20年に渡って見られた価格引き下げ – そして給与引き下げ – の兆候はどこにもない。

弱いバランスシートは今日では消費者の側にある。例えば住居所有者の約20パーセントは資産が欠損していて、この状況はここ一年ほとんど変わらなかった。しかしこのことが居住用財産が市場に投げ捨てられるのを増やす結果をもたらす兆候はない。

第三に、米国経済には深い復元力(deep resilience)と成長傾向があり、あたかも新しいアイデアを生み出してそれらを市場にもたらす、1%程度の人口増加を伴った(対照的に日本は人口が減少している)大陸サイズの機械だ。今年の成長は残念なものになるだろう  – 急激な景気後退と高い失業率に見舞われる – が、ゆっくりと失業率を下げながら2.5パーセント付近まで回復するべきものだろう。

加えて、中国での賃金上昇とドルの下落見通し(ちょうど対円の最安値を更新した)も、製品市場の価格圧力が多少なりともまだ上方であることを示唆している。