Fedが準備預金に付利しなくなったら何が起きる? by ANDY HARLESS

以下はAndy Harlessの“What Will Happen If Fed stops Paying Interest on Reserves?”, Monday, August 9, 2010の翻訳。最後のdisclosureは未訳。


1. 銀行は、結局は失敗するけれども、彼らの準備預金を、短期国債等の安全で流動性があり満期の短い資産で入れ替えることで処分しようと試みるだろう。全体としてみると彼らの試みはうまく行かない。何故なら、そうした資産の前の持ち主たちが売却益をまた銀行に預けるので、準備預金のレベルは変化しないからだ。以前は超過だった準備預金の一部は、増えた預金によって必要な準備預金となるだろう。とはいえ、ほとんどは超過準備のままとなるはずだ。銀行はこのプロセスを、短期国債や同様の資産の利回りが低下し、ゼロ金利の準備預金よりも魅力的でなくなるまで続けるからだ。

2. その結果、短期国債の金利(今は3ヶ月もので約14ベーシスポイント)は(ほぼ)ゼロにまで下がり、同様の資産(長めの満期の短期国債、高い格付のコマーシャルペーパー、レポ等)のリターンもゼロ近くまで下がるだろう。しかしながら、どの金利も25ベーシスポイント以上は下がらず(何故ならどの資産も準備預金の完全な代替とはなり得ないので)、ほとんどはそれ以下しか下がらないだろう。

3. 更にその結果、ほとんどすべての資産の利回りは、準備預金をどれだけ代替出来るか、また準備預金へのゼロ金利が実際のところどのくらい続くのか(そしてどの程度まで可能性として織り込まれているのか)に応じて、ほんのわずかしか下がらないだろう。

4. 銀行は少し貸出を増やすだろう。貸出はハイリスク・ハイリターンの資産で、準備預金はローリスク・ローリターンの資産だ。これらはお互い全く代替しないが、かといって全く無関係という訳でもない。なので銀行は貸出の利率をわずかに下げて(25ベーシスポイントよりも少なく)、恐らくは信用基準を少し緩めて、貸出業務を少しだけ積極的に行うだろう。また、資産が増えたために(銀行へ短期国債等を売却した人々の預金のおかげで)、銀行は貸出により積極的になるかもしれない。けれども、この効果はまた、大きなものとはなり得ないだろう。今日の銀行の主要な制約は資本であって流動性ではないからだ。

5. 銀行はフェデラルファンド市場でのGSE (Government Sponsored Enterprise) からの借り入れを止めるだろう。準備預金の金利での裁定取引が不可能となるのだから。

6. その結果、フェデラルファンド市場は基本的に消失するだろう。銀行は、今日の状況では滅多に準備預金が不足とはならないので、資金を借りるいかなる理由もなくなってしまうからだ。

7. 同様に、GSEも(訳注: フェデラルファンド市場での貸出の代わりに)むしろ短期国債や同様の資産を購入することになり、既に述べた金利のわずかな低下に貢献するだろう。

8. 金利があまりに低下して経費を賄えなくなるため、ほとんどのマネーマーケットファンドは撤退することになり、わずかに残ったものは管理会社からの補助に大きく依存することになるだろう(管理会社は基本的に、他の商品を利用している顧客の便宜のため、または将来再び十分に経費を賄えるだけの収益を生むようになったときに利用できるようインフラや評判を維持する目的で、ファンドを運営する)。このリストの最初の点で示唆されるように、銀行がマネーマーケットファンドの役割を引き継ぐことになる(技術的には、これはM-2の小さな変化を伴うM-1の増加を意味する。もし未だにM-1に執着しているマネタリストがいれば、彼らはえらく興奮することだろう)。

9. 必要とする以上の預金が既にあるため、銀行は顧客に預金をすすめることを止めるだろう。手数料は上がり、新たな手数料が追加されるだろう。顧客サービスの品質は下がり、本質的でないサービスは停止されるだろう。銀行はもはや口座開設を容易にしようとはしなくなり、大口顧客が特別な扱いを受けることもなくなるだろう。

10. その結果、顧客は平均して、より多くのお金を預金ではなく現金で持つことになるだろう。余裕のない銀行の顧客は口座を開設しなくなり、口座を持った者も決済取引を少なくする、など(このことは、Fedが追加の貨幣需要に応じると仮定すれば、マネタリーベースの増加を示唆する。しかしこれは需要主導であるため景気刺激とはならない点に注意。Fedは増加した需要に十分なだけしか通貨を供給しないため、通貨の「価値」に変化は起きない)。

11. 銀行の顧客は、このリストの3番目の点で述べた金利の低下についても参加することになる。銀行の口座が不便でお金がかかるようになり、一方で多くのマネーマーケットファンドが撤退しているので、顧客は決済のために(短期債ファンド等の)他の資産を使うようになるだろう。

12. 私がまだ思いついてないことや、他の誰も考えていないような様々なことが起こるだろう。その一部は良いことで、一部は良くないことで、多くは破壊的なことだろう。

13. Fedの利益は少しだけ増えるだろう(そしてその結果財政赤字は少しだけ減るだろう)。準備預金に金利を払う必要がなくなるので。

全体としてみると、我々はマイルドな景気刺激を、一部の実質的な金融システムの崩壊と引き換えに手に入れることになる。もし2つが競合するのであるならば、私にとっては円滑に機能する金融システムの利便性は雇用の創出とデフレーションの防止よりも遥かに優先度が低いため、もしも準備預金への付利の停止が取り得る唯一の金融刺激策の選択肢なのであれば、私はこれを支持する。しかしながらこれは唯一の選択肢ではない。ひょっとすると、もしFedが準備預金に金利を払わないことで浮かせたお金を良く練られた財政刺激策に当てることにでもなれば、この選択肢はもっと魅力的になるかもしれない。でもそういうことは起こりそうもない。私は準備預金への付利の停止に反対すると言っている訳ではないが、しかし特にそれに賛成という訳でもない。より多くの資産を購入する方が良い。もっと良いのは過去にさかのぼって推定した名目GDPまたは価格水準ターゲットを(必要に応じ資産の購入と連動して)宣言することだ。しかし、そうしたことは実現するだろうか?