名目GDP目標の始め方 by Scott Sumner

「鉄は熱いうちに打て」との心意気だそうなので、サムナーのブログから”Reply to Kevin Drum“(23. October 2011)です。タイトルの訳が違う? 


 

  あまり時間がないけれど Kevin Drum に返事をしよう:  

つまりいったいNGDP目標とインフレ目標とヘリコプターマネーと量的緩和がどのくらい違うのかがよくわからない。NGDP目標の提唱者はこれをはっきりさせてくれるとありがたい。聞きたいのは何を目標にするかとか、好きな政策は何と呼ばれるものかとかではなくて、次の三つ。

  • Fedに公に何と言ってほしいの?
  • Fedにどんな公開市場操作をしてほしいの?
  • その他に何かFedがすべきことがあるの?

NGDP目標がインフレ目標より優れているところを知りたいなら英国を見るだけでいい。英国のCPIは4.5%あたりで推移している一方、NGDP成長率は低めだ。インフレ目標ならBOEはすぐに引き締めをしなければならない。NGDP目標ならば緩和すべきということになる。Kevin Drum もこの場合ならNGDP目標の方が「正しい」答えを与えてくれることに賛成してくれるだろう。 

ではFedはどうすべきなのかという質問については二つ答えがある。一般的に答えるならFedはNGDP成長が5%の軌道を保つようにすると約束するべき。そして直近でオーバーシュートやアンダーシュートがあったらそれを修復することのコミットするべきだ。これが水準目標と呼ばれるもの。 

もう一つ、今すぐどうするべきかという答えの方はちょっと難しい。Fedの暗黙の需要成長目標は明らかにアンダーシュートしてしまっているから。私も以前はこれを2008年以前のトレンドに戻したいと思っていたが、今となってはそれはハッキリ(政治的に)不可能だし、賢明でもなさそうだ。まず向こう2年は6~7%成長として、そのあと5%にすることを最近は主張している。 

しかし大事なのは私がどう考えるかではなくて、Fedがどう考えるかだ。Fedは自身がコミットしたい目標を決め、多数票に基づいた公的なコミットメントをする必要がある。約束を守らないという気などとても起きないようにするために公的でなければいけない。幸いなことに今Fedは厳格なインフレ目標を採っておらず、ただ二つの目標(訳注:物価と雇用)があるだけだから私の提案でも過去の目標を放棄する必要がない。 

少なくともFedも今よりいくらか高いNGDP成長を望んでいることは明白だ。新聞にはFedが新しい戦略を懸命に模索しているという記事があふれているし、実際最近二つの実験を行っている(オペレーションツイストと二年間の低金利を約束したこと)。Fedは向う数年の間にどのくらいNGDPが成長するのが望ましいのかを決め、その目標を達成するまで資産を買い(もしくは売り)続ける約束をする必要がある。 

「実際の」政策ツールはどうするかという疑問については、この約束自体がこの力仕事(Nick Rowe のエントリ参照)の大部分を占める。いつも論じているようにロバストなNGDP成長目標(7%を二年間とか)を実施すればFedはマネタリーベースを増やすのではなく減らさなければならないだろう。マネタリーベースはすでに平常時のほぼ三倍の水準なのだから。ベースの需要がこんなにも高いことの説明は二つあって、準備金への付利(IOR)と低いNGDP成長期待だ。IORを廃止すれば期待NGDP成長は劇的に上がるだろう。人々や銀行がそれでもベースマネーをここまで高くしておきたいとはとtも思えない。ただもちろんここは自由な国なのだから、愛国者たちが金利ゼロでも政府に10兆ドルを貸したいと思うならば私としてもその需要を調整する理由はない。Fedが守らなければならない法がどうなっているか正確には知らないが、2008年以来Fedがやってきた粗野で狂った行為からすれば、Fedが米国と日本とカナダとドイツの政府負債全部の15兆ドル近くまでを買い上げることを許さない法はないだろう。もちろんこれは背理法の論法で、Fedが実際にこれを始めればNGDP成長期待は急速に跳ね上がるだろうし、遠からずマネタリーベースは今の膨らんだ水準から通常の水準に下がるだろう。 

ところで私はIORの撤廃が不可欠だとも考えていない。MMMF産業がそんなに心配なら水準目標へのコミットに加えて1兆ドルの購入を約束すれば十分だろう。資産価格を上方に爆発させるにはそこまで買えば十分。 

しかしながらもしFedが実際にNGDP目標を採用するとしても、過去は水に流し(訳注:水準目標でなく率目標になるとの含意)、しかも5%成長目標となる可能性が高い。目標が低いほどに市場歪曲的な公開市場操作の力仕事の要求はいっそう高くなる。そしてこの政策の場合は12か月後には4%のNGDP成長という結果に終わる可能性が高く、失敗と見做されるだろうね。 

追記:「ヘリコプタードロップ」についての議論は時間の無駄。そんな政策をまじめに考えるほどラジカルな中央銀行なら、そもそもゼロ制約に陥ることがない。それより余程コストがかからずラジカルでもなくリフレする方法がある。  

追記2:今ちょうど4日間のワシントン滞在から帰ったところだ。上院に行くことは叶わなかったが財務省でのプレゼンはうまくいったと思う。今朝はそのプレゼンを持って地上に戻り、大西洋経済学会の会議に臨んだ。しかし誰も現れず、プレゼンターも3分の5が来なかった。どうも私は自分が思っていたほどには人気がないようだ。 

私としてもNGDP目標についてたくさん書くのは楽しいが、大学業務がかなり遅れていてしばらくは時間がとれない。コメントへの回答も同様。「鉄は熱いうちに打て」だからフラストレーションがたまる状況だが、私自身のコントロールを超えた状況になっている。Eメールを送ってくれたとしても素早い反応は期待しないように。

  • http://twitter.com/buri17 MIURA Toru

    near term overshoots or shortfalls
    は「直近の」というより、「短期的な過不足」ではないでしょうか。
    あと、なぜか原文はここではアンダーシュートって書いてないんですよね…

    If you eliminate IOR, and dramatically raise expected NGDP growth, I don’t see where people and banks would want to hold all that much base money.
    「IORをなくしてNGDP成長期待を劇的に増加させたとしたら、人々や銀行がそれほど多くのベースマネーを保持したいと思うとは考えられない。」
    ぐらいでどうでしょう。

    level targeting commitment plus a vow to buy trillions if necessary would be enough. 
    一兆ではなく、数兆かな?
    「水準目標へのコミットメントに加えて、必要に応じて数兆規模の買いを実施すると名言するだけで十分だろう」

    It would cause such an upward explosion in asset prices that no purchases would be necessary.
    は宣言だけで、実際には買わなくて済むという意味かなと思ったのですが…

    (訳注:水準目標でなく率目標になるとの含意)
    はちょっと意味がわかりませんでした。
    単に5%が目標として現時点では低い(7%にせよ)、という話ではないのでしょうか?

  • http://twitter.com/buri17 MIURA Toru

    あ、あと、OMP=買いオペだと思われます。OMOなら売り買い両方ですが。