政府が消費者を護るには- Becker

今回は趣向を変えて消費者保護の記事です。ユッケやこんにゃくゼリーなど食にまつわる話が多い日本ですが、アメリカでは国内線での苦情が多いようです。荷物がなくなった、接続できなかった、ひどい場合は雪で10時間以上機内で待たされた、・・・などなど。最近この状況を鑑みてか、新しいルールが制定されたようです。これについての論説をBeckerとPosnerのブログから翻訳しました。


運輸局が航空会社に新しいルールを定めた。中でも、「ロストバゲッジがあった場合は預かり料を返す」、「運賃は税込の定価を表示する」、「客の意思に反して予約が取り消された場合は保証金を出す」、のようなルールは航空会社にとってそれほど面倒なものではないだろう。

ただ、当局はすでに色々なルールを付け加えてきた。航空会社は様々な値段を掲示すること、不意のキャンセルには補償をすること、加えて乗客を守るであろうもろもろの行為を行うこと。この旅客についてのルール(新しいものと古いものも)や、いわゆる金融規制をうたったDodd-Frank法の消費者保護の部分など、こういった規則は政府が「消費者は合理的な選択能力にかける」と思っている事のあらわれである。

この信頼の失墜は、政府が消費者を「自分の利益にかなうように、未来を見すえた選択ができない」と過小評価していると私は思っている。加えて、まずい選択から生じた悪い結果から消費者を守るような、競争の力を過小評価している。これからそれぞれ主張を議論していく。

70年代の規制緩和を境に、航空業界に新しい参入者がやってきた。緩和のおかげで、安い運賃と最小のサービスを売り物にした、LCA(格安航空会社)が大きく成長したのだ。LCAの成長ぶりは旅行者がいかに値段に敏感かわかる。安ければサービスが足らなくてもーー機内食なし、座席は全席自由席、等ーー構わないと考えているのがわかる。SouthWest航空は規制当局からの反対に会ったあと、つい最近の1970年代に創業した。いまや彼らは国内線だけで言えばアメリカ最大の航空会社だ。加えて、旅行者のどれだけが預かり手荷物に追加料金がかかるのを知っているか考えてみるといい。こういった追加料金は、広告や旅客約款に分かりやすく書いていない。こういった料金の変更以降も、受託手荷物は増え続けた(そのせいで出発が遅れることもある)。多くの旅行者はこの新しい追加料金のことをよく知りながら荷物を増やしている・・・・というわけなのだろうか? まさか! こういう追加料金に無頓着な人のために、SouthWestは「荷物の運賃は無料です」のキャッチ・コピーで、「SouthWestは1個目、もしくは2個目のチェックインが無料でできる数少ない航空会社だ」と広告で訴えている。

たしかに荷物や機内食の追加料金を気にしない人、航空運賃にかかる大量の税金に気がつかない人、機内で過ごす長い時間や飛行機が遅れてイライラしたことをすっかり忘れる人、飛行機を使うことでの金銭や精神的なコストの違った側面に気がつかない人、こんな人達の存在を否定するわけではない。しかし、大勢の利用者にこういった「本当の航空運賃」や、便の遅れなどの飛行機にまつわる経験をよく分かっていれば、結果として「無知な旅行者」がまもられる。無口な利用客と、声の大きな利用客を分けることはできない、よって航空会社は大多数の利用者の知識や反応をベースに値付けなどの判断を下すのだ。

こうした大多数の乗客が、前述のような「隠れた値段」や税金、飛行機を利用することで生じるその他のコストや経験等について反応をしめせば、航空会社は値段にむとんちゃくな乗客も含めて、すべての利用者に低い運賃や追加料金を提示するだろう。また、飛行機にうるさい旅行者の行動よりも航空会社同士の競争のほうが、はるかに無知な消費者を守ってくれる。航空会社はこの数十年、まずまずの利益を稼ぐのに大変な努力をしてきたのだ。だからPosnerが示したとおり、もし政府規制で航空会社にコストが生じれば、運賃は上がるだろう。

ちょっと競争の影響を考えてみよう。ある航空会社が旅客へのコストをチケット約款にびっちりと小さな字で書いたら利益が上がることを見つけた。多くの客がさも追加料金のことを知らなかったように振舞うからだ。すると競合他社も同じことを始めて、追加料金を小さな字で明示し始める。加えて、航空会社はもっと利益を出したいので、この程度のことで儲かるのであれば、空の旅のいろいろな部分の値段を下げようとしたり、サービスを良くしたりするだろう。例えば、全席自由席だったものを指定席にしてみたり、シートにビデオ用の画面を取り付けたりなどだ。結局こうした競争の圧力が、価格をさげたり、旅客サービスを改善する。それが同時に、小さな文字で書かれた文言を読まない客への埋め合わせにもなる。(ただほんの少しだろうが。)

よって、私はPosnerの「航空業界への新しい規制は間違いだ」という意見に同意する。消費者は航空会社にだまされやすい、という間違った信念のもと、このような規制は航空会社のコストと飛行機を利用するコストを上げる。それにもまして、規制当局は競争は無知な消費者を無知な行動の結果から守ってやる最良の方法だ、ということを見逃している。

過去三十年、多くの新規参入と古参が乱立したこと、規制の緩和で利益が薄くなったこと、これらを見ても航空業界の競争の激しさは明らかである。この業界の競争を奨励し、他の業界もそうすることが、大多数の消費者ーもちろん無知でだまされやすい人も含めてーを助ける最良の方法である。


元記事

http://www.becker-posner-blog.com/2011/04/how-can-governments-help-consumers-becker.html