デフレを防ぐために: 90年代の日本の経験からの教訓

担当:erickqchan


本稿における第三の主要問題は、1990年代初期の日本において金融政策の経済への影響力が減退したか否かだった。我々は、この期間の金融政策が影響力を減退したかどうかについてはっきりしない証拠を見出せただけであった。1991-95年の期間、政策金利を引下げ続けたのに対し株価および為替レートは明らかに反応しなかったが、これはおそらく別の要因を反映したためであり、この期間、長期金利は一貫して下落した。1992-95の期間のマネタリーベースの成長は the broader aggregates のそれを上回っており「流動性の罠」の徴候が見られたが、この差異は1990年第後半までは特に注目されなかった1。また資産価格の崩壊とその結果としてのバランスシートの悪化が、企業の借り入れ意欲と銀行の貸出意欲をそぎ、金融政策が経済を刺激する力を減退させたであろうがこれを数量化するのは難しい。要するに、1990年代初期に日本の金融政策の効力はいくぶん落ちていたとみられるが、より早く鋭い緩和をしていればそうならなかったというほどではなかった。 

最後に、本稿の第四の主要な発見は、金融政策と同様に1990年代初期の日本の財政政策もまた従来比では積極的なものだったが、デフレ的な不況を避ける努力にもっと積極的になるべきだったということだ。1990年代前半の日本における構造的赤字の増大は、経済不況を経験していた他のいくつかの先進国を凌駕していたが、これは財政政策が効いていた証拠である。後知恵になるが、他の経済ではデフレのリスクがほとんど語られていなかったので財政刺激への圧力が強かったのである。FRB/Global モデルによるシミュレーションでは、経済活動にテコ入れしてインフレ率をマイナスにしないようにするためには、もう少しの財政緩和があれば十分だったと示唆された。より望ましかったのは財政と金融両方の緩和で、そうすれば一方だけに頼り過ぎることもなく、それぞれの道具が度を越してしまう問題点も緩和できただろう。 

日本において財政赤字と経済の弱さが共存していたことを指摘し、財政政策の経済活動への影響への効果が失われたと論じる観測筋もある。その見方をサポートする証拠はほとんどなかった。この期間における家計貯蓄率は下落しており、公的債務を賄うための増税への心配から消費者は節約していたという議論と矛盾している。同様に、公的支出が民間投資をクラウディングアウトしていたという主張にもほとんど根拠がない。この期間、長期金利は下落し不況の度合いは緩和されていたのだから。むしろ、日本の過去10年の民間消費の弱さが、公共支出の増加と予算不足を必要としていたと言うべきである。 

結論として、日本の経験の分析から、デフレ的な出来事を予測するのは簡単ではないので、迅速で継続的な政策刺激を通じてそれが起こる可能性を減らせるようにしておくべきだということが示唆される。特にインフレ率及び金利がゼロに接近し、デフレーションのリスクが高い場合は、将来のインフレ及び経済活動の見通しのベースラインから従来通り想定される水準を超えた刺激をするべきである2。 この処方箋は大部分、そのような環境における非対称的な性質にもとづいている。行き過ぎた刺激は、将来補正的な引締め政策で修正することができる。しかし、少なすぎる刺激は経済をデフレーションに導き、将来金融政策が経済を不況から脱出させる能力が大きく損なわれかねないからである。3

  1. 日本が流動性の罠にはまったという見方が最も関連しているのはクルーグマン(1998)である []
  2. これはゼロ金利制約下の適切な金融政策に関する多くの分析と整合的である。例えば Reifschneider and Williams (2000), Blinder (2000), Kato and Nishiyama (2001), and IMF (2002), Chapter II. []
  3. 本稿において我々は名目金利をゼロ以下にはできないという伝統的金融政策の制約に注目している。ゼロ制約に達したときの非伝統的な金融刺激を用いる可能性について議論するものではない。それらについては Krugman (1998), Goodfriend (1997, 2000), Bernanke (2000), Clouse, Henderson, Orphanides, Small and Tinsley (2000), and Svensson (2001)などを参照のこと。中でも Ueda (2001) はそのような選択肢に向けての日本銀行の見方である。 このような事情であるが我々は、一度ゼロ下限に達したら経済の再活性化がより困難で不確実なものになるという多くの識者に同意する。 []
  • http://twitter.com/orange7246 しんべー

    皆で翻訳してたのはこれだったのか。興味深い資料。必読。

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