アラブからのスタグフレーションリスクについて

アラブからのスタグフレーションリスクについて

By Nouriel Roubini Published: February 1 2011 14:47

FTに掲載されたルビーニ教授の記事を訳してみました。訳す訳す詐欺で申し訳ないです。(中身も地震が起こったせいでやや旬を過ぎた感じが・・・)

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チュ ニジア、そして今起こっているエジプトでの混乱は、経済的にもファイナンス的にも重要な意味がある。だいたい全世界の推定石油埋蔵量のうち三分の二、そし てガス埋蔵量のほぼ半分が中東に眠っている。この地域の地政学的なリスクは、すなわち世界的な石油価格の上昇につながるのだ。

過 去の世界的な不況の5つのうち3つは、中東の地政学的ショックによる石油価格上昇のあとに起こった。残りの2つの不況でも石油価格は重要な役割を演じた。 1973年のYomKippur戦争は石油価格の上昇を引き起こし、世界的なスタグフレーション(不景気とインフレーションが同時に来ることだ)の原因に なった。1979年のイラン革命は同じようなスタグフレーション的な石油の上昇をもたらし、1980年の不況(米にとっては1980と1982年の二番底 不況)の引き金になった。

1990 年のイラクによるクエート侵攻は-当時アメリカは貯金とローン危機で不況の瀬戸際にいた-石油価格の上昇を引き起こした。そして、アメリカとその他の先進 経済諸国は、短い不況に入った。これは1991年の春に戦争が多国籍軍の勝利に終わるまで続いた。2001年の世界的な不況-ITバブルの崩壊による-の ときでさえ、石油は地味な役割を演じていた。パレスチナの二度目のインティファーダと中東の広い緊張で、地味だが意味のある値上がりをした。

つ い最近の世界的な不況でも石油価格は意味深い存在だった。サブプライム・ショックのあと、2007年の12月にアメリカが不況入りしたが、つい2008年 の秋まで世界的な影響はなかった。この世界不況は、リーマンの破綻の巻き添えだけが原因ではない。2008年までに、石油価格は12ヶ月で二倍のバレル当 たり$148になった。これは貿易にとってひどいマイナス要素だったし、アメリカ、ヨーロッパの大半、日本、だけでなく、中国やその他の石油/エネルギー の輸入国をである新興市場の収入に大きなショックを与えた。

今回の政治的混乱がどれだけ遠くまで広がるかわからない、中東に広がるかもしれないし、もっと遠くにさえ行くかもしれない(例えばベネズエラのようなメジャーな産油国はいわゆる「ジャスミン革命」の対象になるんだろうか?)。

た だ、今の中東の専制政治を倒しても、堅実な民主主義ではなく、もっとラジカルで不安定な政権が出てくるリスクがある。もちろん、腐敗、汚職、高い失業率、 所得格差、といった問題にまみれた支配者に同情する人などいないし、チュニジアやエジプトの出来事は自由な選挙や、抑圧された民衆のニーズや願いを代表す るような政府が出来るきっかけになると思うだろう。

け れど、中東で近年あった「自由な選挙のようなもの」や「民主主義のようなもの」はひどかった。イラン革命はイスラム原理主義者による独裁的で抑圧的な政府 ができただけだったし、ガザでの選挙は急進的なハマスの台頭につながった。レバノンではヒズボラ-急進的な武装国家-が国家の中にできた。米によるイラク への侵攻は内戦を起こし、現在の「民主政府のようなもの」は急進派とシーア派にコントロールされている。

こ の地域には別のリスクもある-核軍拡を巡ってのイスラエルとイランの軍事衝突、解決されていないイスラエルとパレスチナの衝突、地政戦略的に西側から離れ てイスラエルと衝突しているトルコ、バーレーンでぴりぴりしているシーア・マイノリティ、サウジ、イェメンその他のスンニ派諸国、等だ。
いまや、チュニジアやエジプトの混乱はヨルダン、アルジェリア、モロッコ、イェメン、バーレーン等に広がりそうだ。サウジやシリアでさえも次の候補に挙がりそうである。
中 東の最近の政治的ショックの前でさえも、石油は90ドル近くまで上昇した。世界経済の回復といったファンダメンタル的な側面だけでなく、そうでないもの、 たとえば新興諸国で「ほぼゼロ金利」政策や先進諸国の量的緩和のまっただ中にあって流動性を求める資産とコモディティ、モメンタムや群衆心理(2007年 から08年にかけて起こった)、原油の非弾性的で限られた供給キャパシティ等だ。いまや原油価格は100ドルに迫ろうとしている。

こ の上昇-そして、これに関連した消費財、特に食物の上昇-は新興国の経済を過熱しているインフレをさらに押し上げる。こういった地域では石油と食料価格が 消費バスケットの三分の二をしめる。やっと不況を抜け出して、弱々しい成長を遂げている先進国にとっても、貿易にはネガティブ要因だし、可処分所得も悪い 影響を受ける。

モ ノや労働力の余剰を考えても、消費財価格の上昇は第一段階のインフレ影響しかなく、第二段階のコアインフレへの波及はない。しかし、石油価格がさらに上昇 するようであれば、これらの経済は急ブレーキを踏んで、二番底不況に突入するところも出てくるかもしれない。最後には、上昇する消費財価格は投資家をリス ク回避的にし、消費者やビジネスの信頼指数にマイナスに響く。こう言ったことは実体経済にも株式市場にも悪い影響を与える。

チュ ニジアやエジプトの出来事は、安定した新しい民主政権へのスムーズな道筋だ、と思う人もいるかもしれない。しかし、もっと不安定で、ラジカルな政権ができ ることも否定できない。こういったごたごたとそれに伴うエネルギー価格の急激な上昇リスクは、最悪の金融危機と、「十年に一度」の不況から立ち直ろうとし ている世界経済にとって、深刻な危険因子だ。

元記事

http://www.ft.com/cms/s/0/50926296-2e05-11e0-a49d-00144feabdc0.html)