円について by Scott Sumner

スコット・サムナーのブログから、”A note on the Japanese yen” (March 18th, 2011)を紹介します。


先日の円についてのエントリにはたくさんの興味深いコメントが付いた。たとえば、Miguel Sanchez 氏は私の主張にこう反応した。

“円のことをよくフォローしていない人にとっては77円は狂気の高水準だ”

そしてこんな反応が続いた。:

言いたいことはわかるが言葉が適切ではない。円をよくフォローしている人にとって実質実効レートは歴史的な低水準だ。金融危機以来ずっとそうだったけれど。

「適正な」水準について膨大かつ現在進行形の議論があることは承知しているが、その国が貿易赤字を抱えているかどうかが通貨の過大評価の試験紙になっているようだ。そして日本は巨額の貿易黒字を抱えている。

これは世間に広まっている見方だが、二つの誤解がある。第一に、貿易収支は均衡しているべきだという暗黙の前提。しかし、人口動態が好ましい国々(例えばオーストラリア)は貿易赤字が、そうでない国々(日本やドイツ)は貿易黒字があってもおかしくない。実際に起こっているのは正にそういうことだ。日本が適正な財政政策をしていれば黒字はずっと多いだろう。

第二の間違いは、実質交換レートという変数で正しい分析ができると考えることだ。金融政策は名目交換レートに影響を与えるが、長期的に実質交換レートには影響しえない。ある通貨が過小評価あるいは過大評価されているかを判断する方法は貿易収支でなく、名目GDPを見ること。つまり日本の金融政策は過剰引締めであり、名目の円が強過ぎる。

Miguelではないが、「適正」交換レートの支持者たちは、弱い円が他国の職を奪うことで世界を傷付けていると主張している。しかし今日見られたように、他国は弱い円から実利を得るし、強い円が日本の経済を深刻に傷付けることは確実だ。

バンコク (AP) — 地震に襲われた日本のため先進七カ国が自国通貨高を抑制すると宣言したことによって歴史的な円高が緩和されたので、金曜日のアジア各国市場は利益を確保し、ヨーロッパの株は上向いた。

市場のこのような反応は、円が過大評価されているという私の「マネタリー・ビュー」を支持し「貿易収支ビュー」には反する。「貿易収支ビュー」では円はもともと過小評価されていたし、最近の出来事で円安にならなければならない。2008年暮れから2009年にかけて緩和的な金融政策を採った国々が不況から救われたのは中国が元を固定する政策を採っていたから。マクロはゼロサムゲームではないのだ。