ハイエク・ロビンズなどによるケインズ・ピグーなどへの反論

[訳者] 1932年の英タイムズ紙に掲載されたケインズやピグーなどによる支出を薦め、不況時の倹約の害を説き、政府も支出をふやすべきだという投書への、ハイエクやロビンズなどのロンドン大学教授陣からの反論です。当たり前ながら文章は古臭いんですが、最後の2段落などは現在の経済誌の論説や金融関係者のブログの中に挿入しても特に違和感なさそうで、笑えばいいのかなんなのか。

支出と貯蓄 税金による公共事業  タイムズ編集者へ 1932年10月19日

拝啓

コラムにおいて取り上げられました貯蓄すべきかそれとも支出すべきなのかという疑問は、自明なものではありません。それには3つの別々の問題が関わってきます:--(1)お金を使うか、それとも退蔵しておくか;(2) お金を消費に使うか、投資に回すか;(3)民間の個人による投資同様、政府も投資するべきか。こういった点について先に投書を送った我らの職業の同僚たちとの違いの性質を特に強調したいわけではありませんが、いくつかの点かにおいてその違いは、別の視点というものを明らかにするのが望ましいほどであります。

(1)第一の問題、お金を使うべきか退蔵するべきかについて、我々の間に大きな違いはありません。現金としてであれ、銀行で無駄に保蔵されるのであれ、お金が退蔵がデフレ効果をもつことは合意されています。デフレがそれ自身として望ましいと考えるものはおりません。

(2)消費に費やすべきか投資するべきかに関する疑問については、月曜のコラムに掲載されました投書の署名者達と我々のポジションは異なっております。彼らはお金が消費に費やされるか、あるいは実質的な投資に向けられるのかは景気回復に関して重要ではないとみなしているようです。それに対して我々は、今日の世界の主要な問題の一つは投資の不足であると、つまり直接的に消費の為の生産を行なう産業ではなく、資本の拡大などの為の生産を行なう産業の停滞のせいであると確信しています。よって我々は投資の復活こそをとりわけ望ましいものであるとみなしております。しかし、取り上げられた投書の署名者達は既存の証券の購入を、資金が実質投資への道を見つけ出す事が確実ではないということに基づいて軽視しているように見受けられます。我々はこのような見解を受け容れる事はできません。現代の状況において、証券市場は投資のメカニズムにおける欠くべからざる一部であります。既存の証券の価値の上昇は、新しい株式発行の為の欠くべからざる下ごしらえであります。既発の証券の復活とその他の復活の間にラグがある事は疑い得ません。しかしもし公衆が、現在言われている事により、既存の証券の購入や住宅信用組合(building societies)[1] の口座に預金する事などが、現時点では公益に反するとか、あるいは証券の売却やそういった口座からの引き落としが景気回復を助けるなどと考えてしまったならば、それは悲劇一歩手前であると我々はみなさざるを得ません。私的な貯蓄の習慣をさらに弱めてしまいかねないような事を述べるのは、極度に危険なことであります。

しかし、おそらくあの投書の著者たちと我々との違いがもっとも明らかなのは、三つ目の点、現在は国家や地方自治体がその支出を増やすべき時であるかどうかという疑問についてでありましょう。この点について、我々は月曜日の貴紙の一面記事と同意するものであります。我々は、現在時点での世界の困難の多くは、公的組織による無分別な借り入れと支出によるものであるという意見であります。我々はそういった行いが更新されるのを目撃する事を望むものではありません。最上でも、それらは将来世代の財政を抵当にいれているのであり、利子率を上昇させる傾向があります。民間産業への資本の供給の復活こそが間違いなく緊急の必要である現在の情勢では、確実かつとりわけに望ましくないプロセスであります。恐慌は、大規模な公的負債の存在が、民間負債の存在よりも再調整にとってずっと大きな障害であることをたっぷりと示しました。よって我々は、あの投書の署名者達と、今は自治体の新しい水泳場などを作るべき時である、それも単に人々がそういったものの快適さを「欲しがっている気がする」からというだけでというのには、まったく同意できません。

もし政府が景気回復を助けたいと望むのなら、行なうべき事は、その浪費という昔の癖に戻るのではなく、現時点において景気回復の始まりすら阻害している貿易や自由な資本移動(新株発行を含む)への規制を撤廃することなのです。

敬具

T・E・グレゴリー 経済学 Cassel教授

F・A・フォン・ハイエク 経済科学と統計 Tooke教授

アーノルド・プラント、商業 Cassel教授

ライオネル・ロビンズ 経済学教授

ロンドン大学、10月18日

  1. wikipepiaによると住宅関係の貸付を主に行なう組合員所有の金融機関であったとの事 []