名目GDP先物目標についてのデロングの記事 by Scott Sumner  

事の発端は、Scott Sumnerが持論である「名目GDP先物目標政策」の説明(自身のブログでの説明その翻訳)を、一般雑誌であるThe National Reviewに書いたこと。その記事について、デロングとコーエンが反応したので、それへの返答エントリ(”Reply to DeLong on NGDP futures targeting“  December 14th, 2010)の紹介です。…と思ったらMark Thomaにも反応なさってたり。 


ブラッド・デロングのブログにコメントしようとしたのだが、最新式のコメント欄に書き込めなかったので。よってここに書くことにする。(タイラー・コーエンのポストには同じようなコメントを残した)

デロングが、私がNGDP先物目標をとうとう「支持」することになったと書いているのは面白い。私はキャリアのほとんどをこのアイデアに充ててきたのだ。実際1987年のAEA meetingでこのアイデアをプレゼンしたし、先物目標について6本の論文にしている。

1995年のJMCB論文はあまり良くないもので、ほとんど放棄している。今は1989年と1997年の版に基づいている。しかし一番いいのは最近の二つだ。アーロン・ジャクソンと書いたEconomic Inquiry 誌の論文と、B-E Contributions to Macroeconomics 誌の論文 で、どちらも2006年のものだ[1] 。後者が今回書いた内容に近い。似たようなアイデアは多くの論文がある(トンプソン、ホール、ウールシー、グラスナー、ドード、ヘッツェル他)。かつてミルトン・フリードマンはヘッツェルの提案に賛成したが、あれは実際には他のよりも劣る。ホールのものはJME 誌。ドードのは The Economic Journal。私の論文のうちの一つは世界で最も優秀なマクロ経済学者の一人がレフェリーだった(ほとんど間違いない)。去年、ジョン・コクレインにもこのアイデアの話をしたが、彼は数ヵ月後には似たアイデアを支持するようになった。だからと言ってこれが正しいということにはならないが、このテーマには長い研究の蓄積があるのだ。けれどもデロングはこれを私が the National Review のために夢想した奇抜なアイデアであるかのように扱っている。

1997年にバーナンキとウッドフォードもこのコンセプトについて論評を書いた(この批評は下に書くバージョンには適応されない)。ガリソンとホワイトも同様のことをした。タイラー・コーエンもやっていたのを忘れていて恥ずかしい。彼の論文は再読する必要があるが、しばらくは時間がない。

The National Reviewの文章はすごく単純化したし、角をたくさんとっている。デロングが触れている3%の利子率は間違っていて、それは全然重要な要素ではない。十分な情報を出していなかったのだからデロングを攻めることはできない。提案の方法をスタートするには三通り方法があるが、私が好きなのは以下のような思考実験だ。

1.  政策目標を決める。例えば翌年のインフレ率や2%、のように

2.  FOMCの各メンバーはその目標を達成できると思うマネタリーベースの投票を行う。

3.  投票の中央値を採用する。

4. 一年後CPIが2%を超えていたら、ハトたち(もっと緩和することに投票した人たち)はタカたちにボーナスとして1000ドル払う。逆も然り。こうすると投票はより正確になる。

5.  FOMCメンバーを12名から7億人に拡張し(北朝鮮の人は妨害のために投票するから除く)、自主投票とする。

6.  一人一票ではなく、一ドル一票とする。

7.  賭けの報酬および罰は、実際のCPIからの乖離を比例配分する。

8.  投票者(投資家)は証拠金を預ける。これに対し、市場に十分な流動性を持たせるのに十分になるだけの利息を支払う。

9.  これでCPI先物目標ができあがる。

10.  5% NGDP 目標に切り替えればNGDP先物目標が出来上がる。

以上が私からの挑戦だ。私は現実世界の金融政策に近いものから始めた(ゼロ制約でない時なら短期金利を使っても構わない)。そして私が好む政策に向けてステップを刻んだ。どのステップが間違っている?

もちろん、いろいろな場所で誰かがサイドベット[2] で儲けようとすることが経済を動かしてしまうリスクの問題があるが、これは、個人や法人による大きな怪しいベットに対して中央銀行が逆のポジションをとるなどの現実的な方法で解決できる。

デロングの主張とは逆で、期待NGDP成長が目標になっているならばベースマネー需要はとても安定するからマネタリーベースの大きな揺れは起こらない。ただ経済の中で流動性のニーズが高まったら、それはそういうものだ。

銀行員への(負担となる)ヘリコプタードロップについてだが、この計画では銀行は何の役目をも果たす必要はない。Fed自身が、債券を持つ民間の個人に対して100ドル札のブリーフケースを交換することもあり得るわけだ。

この政策のポイントは、穴から脱出するための痛みのない方法を提供することではなく、まず第一に穴に落ち込むことを避けることにある。

  1. 訳注:別ポスト「名目GDP先物ターゲティングを説明する」の翻訳中に両論文へのリンクを張っておきました []
  2.  訳注: サイドベットは、例えばこちらの説明 []