デフレ支持者へもう少し by Bill Woolsey

Bill Woolsey 氏は米シタデル大学の経済の教授で、Scott Sumnerブログのコメント欄の常連でもあり考えはSumnerにかなり近いですが、ふだんSumnerに輪をかけてエントリが長いです。最新記事「Sumner and Delong」ではサムナーとデロングのNGDP先物目標の議論を、クルーグマンを登場させて論じたりしていて面白いのですが翻訳するのはなかなか…。なので、最近の短やつをご紹介(^^)。このエントリは、他スレッドのアマチュア・オーストリアン氏に対するレスポンスなのだとか。原文リンクはこちらです More on Deflationists (November 20, 2010)


5つの同規模の産業(A~E)で成り立っている15兆ドルの経済があるとしよう。あるとき貨幣への需要が高まり、もっと沢山の貨幣を持とうとする人々が産業Aの製品への出費を減らすとしよう。産業Aの生産は変化せず、出費減に合わせて価格が下落するとする。他の産業B~Eの製品の消費・価格・産出は変化しない。保持される貨幣が増え、物価水準は下がる。保持する貨幣量は需要を満たすまで増えると。このとき産出の減少が無いことは明らかだ。産業BからEが崩壊するなどということは全くない。ただ産業Aのみ、減少した消費と生産量が見合うところまで価格を下げなくてはならない。産出は維持される。 

ここまではもっともらしい。しかし、いくつか数字を導入してみよう。総貨幣量は1.5兆ドルで、貨幣への需要が20%(3000億ドル)上昇したとする。つまり産業Aへの支出が3000億ドル下落する。これは産業Aの製品への支出の10%に相当する。産業Aの製品は産出量を変えないまま価格が10%下がる。 

その時、物価水準は2%下落している(経済全体の20%を占める産業での10%価格下落)。よって収支は2%強、改善するが、貨幣への需要が20%増えていることによる貨幣不足は残っている。A以外の産業にリソースを供給している人は、産業Aの製品への支出を減らした分、貨幣を蓄積している。貨幣の不均衡を普通に計算すれば産業Aの人々は得られる収入が10%減るので、産業BからEへの支出をその分減らす。このように最初は産業Aだった需要減少も、経済全体に広がる。 

こうして産業B~Eの製品の需要も下落し、それによって産業Aの需要も再度減り、最終的には貨幣需要の20%増に見合うように、物価水準が約17%減少することになる[1] 。ただし、(前提を変えて)相対需要が完全にシフトするのであれば、産業Aが縮小して他の産業が育つ。そうであれば、変化は他の産業の生産を増やし、資本収入を生み出だすだろう。 

しかし産業Aの製品の需要減少は、むしろ(相対需要のシフトでなく)産業Aの製品の価格下落をもたらすだろう。所得貨幣速度は1.25で、人々は所得の80%を保持していることを考えると。上の例で、貨幣の量が12兆ドルだったならば、20%の貨幣需要増により産業A製品への貨幣支出が2.4兆ドル減少する。それは価格が80%下がるということになる。産業Aは経済の20%を構成するから、価格水準は16%下落して20%貨幣需要と見合う。  

貨幣流通速度が非常に小さいというシナリオがある限り、「貨幣への需要が増えて数種の製品の価格が下落しても、不均衡は避けられ」という話は信用性がない。むしろ不均衡が広がる–販売が難しくなる–可能性が高く、それは一般価格の下落(デフレ)によってしか解決されないのである。

  1. 訳注:この計算はコメント欄で補足がある。リンクはこちら。「物価水準が100から80になると、その分で1000ドルの価値が1250ドル分になる。しかし、貨幣の需要増は20%なので1200ドルに調整されるべきだ。1000/1200=83.33、すなわち約17%の下落。」 []