あなたは合理的期待を「信じて」いるのか?(重要) by Scott Sumner

スコット・サムナーのブログ、TheMoneyIllusion の初期(2009年2月くらい)の重要エントリをぼちぼち紹介しています。今回は、自身で「important」と言うDo you “believe” in rational expectations? (important)(February 8th, 2009)を紹介します。

サムナー先生は、2008年10月におけるバーナンキFedの失敗をしばしば強調し、何とかするためにblogを始めたともよくおっしゃっていますが、その一年ほど前のお話です。このころからフラストレーションを溜め始めていらしたのだろうと推察。


多くの経済学者はリップサービスで合理的期待を語りはするが、それを心から信じるまでには至っていない。つまり彼らは理論モデルの中では合理的期待を使っているが、ふだん現実世界を分析する時には古い合理的期待以前のケインジアンモデルを使っているのだ。今回は合理的期待が重要だという話だ。

2007年12月11日、Fedは金利を0.25ポイント切り下げた。下はその時の国債市場の反応。

Table 1. 国債利回り, December 10-11, 2007.

満期     12/10引け時      12/11引け時
3 month                 2.89%                    2.80%
6 month                 3.14%                     3.04%
2 year                     3.17%                      2.91%
3 year                     3.15%                      2.87%
10 year                   4.15%                      3.96%

まるでFedが金利を引き下げたみたいじゃないか、任務完了!実際には全然違うのだが、この時実際に何が起こっていたのかを理解するためには2001年1月と2007年9月の0.5%切り下げを参考にするといいだろう。その二回とも経済が不況に近づいている時期の切り下げであり、長い下降サイクルにおける最初の切り下げとなった。どちらも切り下げ幅は予想よりも大きかった。どちらも株式市場の反騰につながった。どちらも短期金利を下げ(流動性効果)長期金利を上げた(所得効果と期待インフレ効果)。長期金利は緩和方向のサプライズに対して上昇するのだ。

2007年12月、我々は不況への崖っぷちに来ていた。Fedは決断するしかない状態だった。FF先物市場は引下げ幅が0.25ポイントとなる確率が58%、同じく0.5ポイントとなる確率が42%であることを示していた。いよいよ0.25ポイントの切り下げが発表されると、米国株式指数は2%以上下落した。これはFedの決定がUS株価を5%動かしたことを暗示している(訳注:切り下げが0.5ポイントであれば逆に2%強上ブレしたので差し引き5%と言いたいのでしょう)。外国市場でもほとんど同様の強い反応があった。Fedの決断によって3兆ドルの株主資産が全世界で失われたことになる。

国債市場の反応を別の面から見てみよう。引締め方向のサプライズだったので期待は弱気に振れ、国債価格は急騰し、利回りが下がった。しかも三カ月国債でさえ下落した。流動性効果はどうなったんだろう?3ヵ月満期という短期債券について、所得効果とインフレ期待効果が流動性効果を飲み込むということがあり得るだろうか?あり得ないが、それが起こった。この不況の始まりは2007年12月とされるが、2007年12月11日だったと言ってもいいのだ。このFedの決定後、事態は余りにも急速に悪化したためFedは予定されていた次のミーティングの前に75ベーシスポイントの切り下げをすることになり、1月末のミーティングではさらに50ベーシスポイントの切り下げに追い込まれた。Fedより先に市場がこれを予期していた。(2008年10月初めもそうだった)

当時私がこのことをいくら経済学者たちに話しても、彼らは私が何を言っているかを理解してくれなかった。Fedは金利引き下げで緩和しているから「彼らの仕事」はしているんじゃないのか、と。しかしFedの二つの目標(dual mandate)に照らせば、金利引き下げでも実態は引締めだったのだ。私は別に新理論を構築しているわけではない。16年前にロバート・キングがJAP論文 (pp. 77-78)でこのことを指摘している。

「マネーストックの変化が永続的ならば、総需要の永続的変化をもたらす。新古典的派の合理的期待付き投資関数では、最終産出需要の永続的な変化は、所与の実質金利での投資需要表において定量的に大きなシフトをもたらす。この効果は一般に重要で、金融緩和に対して実質金利は下がるのではなく、上がる。IS曲線の効果がLM曲線の効果を上回る。さらに、マネーストックの変化は永続的であっても、物価や給与の上昇への徐々にしか移転しないので、その分大きなインフレ期待効果が名目金利に上乗せされる」

今こそ合理的期待理論を真剣に語り始める時なのだろう。