Fedへの信頼:QE2はインフレを誘発しない by Mark Thoma 

The fiscal Times から、Mark Thoma の論説 Faith in the Fed: QE2 Will Not Spur Inflation(November 23rd, 2010) を翻訳


いずれ経済が危機を脱したとしても、とりわけ失業面ではゆっくりで苦しい回復が先行するだろうと多くのアナリストは見ている。Fedはこれを踏まえ、回復の見通しを改善するために追加の量的緩和を実施した。しかし多くの人々、特に保守主義者たちがFedの計画に強い反対を表明した。

どうして保守主義者は経済を救うFedのプランにそんなに反対するのだろうか。Fedの行動に反対する書簡にサインした23人の経済学者たちから明らかにしているように、主たる懸念はインフレだ。インディアナの共和党議員マイク・ペンスがFedの物価と雇用の二つの使命を物価安定だけにする提案をしているが、その背景にあるのもインフレの心配だ。

QE2と呼ばれるFedの計画では、新しく印刷したマネーで民間部門から国債を購入することになっている。この購入がマネーサプライが増やすことでインフレ率上昇の可能性をもたらす。

しかし、経済が回復するまではインフレは問題にはならない。経済が苦しんでいるし間は、新しい投資へのファイナンスや耐久消費財の消費のための借入需要がほとんどなく、Fedが創出するマネーは単に銀行の遊休残高に積み上がるだけだからである。つまりGOPが心配しているインフレ問題は、経済が改善してFedが約束して来た通りに政策を反転させることで避けることができるのだ。インフレが本当に心配になるとしたらFedが政策を反転させず、経済がよくなり始めても量的緩和をやめない時だ。つまり、量的緩和の予想コストはその人がFedにどの程度信認を置いているかに決定的に決まる。逆にそのプラスの評価も期待利益に依存している。 利益はどの程度だろう? 追加量的緩和が引き起こす長期金利の低下がどのくらい強く設備投資や耐久消費財の消費に反応するのか私はずっと懐疑的だ。また外国政府が実質的なドルの切り下げを放置するとも思えないので、量的緩和の輸出刺激効果にも大きな期待はできない。とは言っても私はこの政策がいくばくかの利益をもたらすチャンスだし、今は改善ならどんなものであっても貴重だと考える。

つまり長期金利の引き下げと為替の下落から多くの利益を得ることは期待できないとしても、経済を脅かすデフレを避けるという利益が残る。今、インフレ率は下落していて、ついには本当にデフレに陥る恐れがある。

物が安くなる物価下落はどうして悪いことなのだろうか。物価下落は賃金の下落を伴うが、デフレの期間、賃金は物価より幾分早く下落する。つまり価格が下落しても人々は以前ほど買い物ができなくなる。また、人々が負っている負債は減らないので、収入が減ると単純に重荷が増えることになる。物価下落は企業にも悪いことである。なぜなら企業は仕入れ値より安くモノを売りがちになるし、家計と同様に負債の負担が増す。歴史的に見ても物価下落期間は良い時代ではなく、デフレを避けること自体に大きな利益があるのだ。

Fedは長期的にはインフレを問題にしないだろうと私は確信している。私はどちらかと言えば、今Fedが慎重になりすぎたり、将来拙速に金利を引き上げてしまうことが心配だ。もしインフレが起こったとしても、前回インフレ率が許容できない水準まで上がった時ほどのコストはかからないだろう。我々が経験したインフレのコストで一番大きかったものとして思い出されるのは1970年代のインフレ問題だろう。当時は利子率、給与、年金などのインフレの自動インデックスがほとんどなされておらず、ひとたび経済をインフレが襲うと大きな予期せぬ影響があった。しかし、それ以来インフレは制度化されてきており、現在ではさまざまな利子率や自動収入調整といった多くの自動メカニズムが存在しており、1970年代に見られたようなコストにさらされることが避けられるようになっている。

つまり私の結論は、Fedの新しい量的緩和に対するこのような反対意見は思い違いだというものである。Fedのこの計画で予測されるコストは相対的に小さく、潜在的な利益は巨大ではないにせよ、経済を救うためのFedの選択を正当化するのに十分な程度には確実に大きいのだから。