日本の大不況の真実と重要性 by Adam Posen

以下は2010年5月24日付けのイングランド銀行のニュースリリース “News Release: The Realities and Relevance of Japan’s Great Recession” の要約の翻訳。PDFにある全文はtmpsoucageさんが取りかかっているようです。


本日LSEで行われた公開講座において、アダム・ポーゼン(金融政策外部審議委員、Peterson国際経済研究所上級研究員)は20世紀末の日本経済の経験と、その今日の先進諸国への重要性について講演しました。

アダム・ポーゼンの議論の要点は次の通りです。

  1. 日本の大不況はマクロ経済政策と金融規制の一連の失敗の結果だった。バブルが崩壊した後の最初のショックが過ぎた後についての低迷はほぼ回避可能であった。これは2002年から2003年にかけて政策が反転した時に見せた —過小評価されてはいるものの— 回復の強さによって示されている。
  2. 実は日本は数多くの構造的な強さを持っていて、不況を回避することが可能であった。特に、財政政策の余地があった。デフレが持続した時に日本の金融システムと企業のガバナンスの脆弱性がこれらの余地を相殺してしまった。
  3. 日本の不況の蛇行 —一定の回復ではなくのこぎりの刃のような動き— は成長[1] の結果ではなく、一連の政策のミスによって阻害された回復の結果として捉えるのが適切である。むしろ、回復が始まった後にも持続したマイルドなデフレの継続は驚くべきことである。これは一般に考えられているよりもずっとマクロ経済学の基礎への根源的な挑戦であり、より多くの研究が待たれるところである。
  4. イギリスとアメリカ経済はマクロ経済政策のミスによって再び不況に陥るという日本の轍を踏む可能性は低いが、デフレそのものが回避されたわけではない。イギリスはいくつかの点で日本と金融面[2] で類似点があるが、日本は財政政策の余地があったのに対してイギリスはあまりない。日本に比べてイギリスでは投資家はより積極的で市場は開放的であることが、この状況を挽回させることが出来るかもしれない。
  5. 日本が直面しなかった一つの大きな問題は海外の需要に働きかけて輸出を通じての資源の再配分に期待できない点である。イギリス、アメリカ、そして多くのEU諸国が正解経済の回復のペースと分け前を制限するかもしれないものの、同時にこの問題に直面することはないだろう。

アダム・ポーゼンは次のように言う。「私の分析の主な狙いは究極的には我々も「日本病」—一国の経済がある種の奇妙な状態に陥るという病— になる、という考えをやめさせることです。日本の大不況はほとんどが教科書的な経済学、むしろ古めかしいオールドケインジアンマクロ経済学の有効性を示しているものと考えるべきで、そのためこの不況は理解可能であるし、限界があるものの避けることが可能である、少なくとも改善することが可能なのです。」

  1. 訳注:自律的成長 []
  2. 訳注:原文は “Financial” とあり、これが「金融システム」を指すのか「政府の財政」指すのかちょっとわからない。どちらにしてもその後に続く文章とあまり整合しない気がする。 []