QE(量的金融緩和)は効果があった―私からクルーグマンへの返信 by David Beckworth

Beckworth, David “QE Has Worked Before: My Reply to Paul Krugman” 

(MACRO AND OTHER MARKET MUSINGS, Oct.30,2010)の訳


日本の事例を基にしたミルトン・フリードマンの見解を、クルーグマンが不当にも退けていると私が述べた一つ前のブログポストに、当のクルーグマンが反応しているようだ。彼の返答をみると、フリードマンが1990年代の日本と1930年代初頭のアメリカに対して書いた金融政策の処方箋に効き目があったか疑問を呈している。それから、Fed(連邦準備制度理事会の略)に名目GDP目標というようなものを通して総支出レベルに目標を定めるよう求める、我々のような輩に対して疑問を投げかけている。(以下、太字は筆者)

しかし私は、日本についてのフリードマンの見解は間違っていたと指摘することも重要だと思っている。そして、同じ理由で大恐慌に対する彼の見解も間違っていたといえるだろう。フリードマンは、1990年代の日本と1930年代のアメリカのどちらにおいても、中央銀行がするべきことは、準備預金を積み増しマネーを市中の銀行へ回す、より一層の量的金融緩和だったと主張した。これがマネーサプライを押し上げる。より高いマネーサプライはいつもどおりの効果を発揮するだろう、と。

日銀はそれを実行した。にもかかわらず、マネーサプライは急速な伸びをみせず、デフレーションの状態に陥ってしまった。(中略)図からわかるように2000年以降、日銀はマネタリーベースを大幅に増やしている。これは、オリジナルの(そもそもの)量的金融緩和だよ。しかし、マネーサプライはまったく変動しなかった!私が「Fedがすべきことはただ名目GDPの成長により高い目標を設定すること」と主張する人々にとても懐疑的な理由はこれだ。流動性の罠の下では、Fedはマネーをコントロールすることができない。それでどうしてGDPをコントロールできるなんて安直に思い込めるんだろう?

それではクルーグマンや、他の金融政策懐疑論者で、もう少し金融政策の持つ力に肯定的な意見を持つ人々を元気付ける返答から始めよう。その理由はこうだ。QE(量的金融緩和の略)は、過去においてアメリカで非常に効果があった。それはFDR(F.D.ローズヴェルトの略)と財務省当局者が(1)金に連動していたドルの平価切り下げを行い、(2)金の流入を非不胎化すると決断した1934年の初頭に開始された。これは今日ある人々にとってQEがそうであるのと同じくらい、当時としては思い切った行動だった。金本位制はまるで神聖不可侵な制度のように見られていたからね。FDRはそれを弱体化し、物価を恒常的に上昇させようとした。よくもまあやれたもんだと思うよ!しかし、実際のところ、総需要の回復を促し、流動性の罠から抜け出し、そしてデフレスパイラルを止めるために、インフレ期待に対する強く永続的な刺激は、本当に必要とされていたものだったんだ。 そしてこの政策転換はマネタリーベースの特徴ある永続的な増加によって裏付けられている。マネタリーベースは政策変更前の約80億ドルから1930年代の終わりには約240億ドルまで経時的に上昇したんだ。下の二つの図はこの注目すべき量的金融緩和プログラムが効果を発揮していることを示している。以下はマネタリーベースとM2。

 

M2の増加がマネタリーベースの後にしたがっていることに注目してほしい。金融政策は、特異な形式のものであれ、マネーサプライに影響を及ぼすことができた。そして1937年にマネタリーベースの伸びが鈍化しているのを追いかけるようにM2の伸びが鈍化していることに注目してほしい。これはFedがFDRのQEプログラムを中止した年であり、1937年から1938年にかけての景気後退を引き起こしたのだ。(この景気後退についての詳細は、フランソワ・R・ヴェルデを参照)

それでは総名目支出はどうなっているのか?以下の図が示している。FDRのQEプログラムは名目GNPに見られるように総支出も刺激する役目を果たしている。

 

このグラフから、名目GNPがマネタリーベースの跡をぴたりと追っているのがわかる。FDRのQEは総支出を底上げした時点で大成功となった。だから我々には、Fedに名目GDPを増やしつつ安定化させてほしいと願い、それが可能であると考えるに足る理由があるのだ。それは以前にも起こったから。

ここで、要点をまとめてみよう。

(1)QEは流動性の罠にはまったかつてのアメリカで試行され、そして非常によく効果を発揮した。

(2)QEは有効であっただけでなく、1990年の日本や今日のアメリカの経済的環境の中においてよりずっと大きな効果が見られた。

(3)QEが有効である理由は、(ⅰ)インフレ期待を再燃させた。(ⅱ)マネタリーベースの有意な増加という裏づけがあった。

Fedは今日も当時と同じことをできるどころか、それ以上のことができる。確実にインフレ期待を再燃させることができるだろう。Fedのお偉方がQE2に関する声明を発表すると、先月かそこいらの間に何が起こったか良くごらんよ。明白になんらかの名目目標にコミットすることで、インフレ期待を作り出せれば、Fedはもっと影響力を行使していたかもしれない。Fedは今週、資産の買い入れ声明を出すことになっている(ざっくり言って今後5,000億ドル位)。そして、インフレの期待を奮い立たせ、ある意味将来に向けての確実性を作り出す必要がある。Fedは(1)明確な名目目標を発表し、(2)そのためにやるべきことは何でもすると言う必要がある。(すなわち、必要とされる限りの多くの資産を売り・買いする)。私はただ現在の総名目支出にレベル目標を設定してほしいと望むだけだ。