アメリカ企業の財務バランス「超過」の測定

Rebecca WilderのNEWS N ECONOMICSより“Evaluating the “excess” in the US corporate financial balance”を訳出。慣れない単語が散見されたので、訳語が適切かちょっと自信がないですので、指摘いただければ幸いです。


ニューヨークタイムズのOp-EdでRob ParenteauとYves Smithは民間部門の財務バランスは家計と企業の財務バランスに分けるべきことを指摘している。彼らは企業の貯蓄超過について次のように結論している。

よって、政府は予算の縮小を追求するのではなく、経済活動の結果得られる利益を再投資するインセンティブを企業に与えるべきなのだ。

私はそれほど単純な問題だとは考えていない(このような政策が簡単に可決される、という意味ではなく)。以下に示す通り企業は家計と同様にデレバレッジのサイクルに突入している。したがって企業の貯蓄超過はしばらく続くであろう[1]

ニューヨークタイムズの記事の中でRobとYvesは2005年のJP Morganの研究 “Corporates are driving the global saving glut” に言及している。この論文でJP Morganは世界的な貯蓄過剰はG6諸国の企業の貯蓄超過に主原因があって、途上国のそれはより低い重要性しか持たないとしている。アメリカでは企業の貯蓄超過は直近の2010年代2四半期に至るまで続いている。

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上の図は企業の財務バランスの総計をGDP比率で表したものである。JP Morganの論文が行ったものと同じ方法で総企業財務バランス(TCFB)を計算した。TCFB=経常収支ー(家計の財務バランス+政府の財務バランス)とした。この計算方法によれば2010年第2四半期のTCFBは概ね+3%、もしくは2008年〜2010年第2四半期までの平均である2.1%に対しては+1%である。

JP Morganがこの研究を発表したのと同じ頃、IMFOECDは世界的なTCFBの上昇の原因を探っていた。2000年代前半の上昇トレンドを説明する要因としていくつかの要素が挙げられている。

  • 配当に対して相対的に高い株式の再購入
  • GDP比率としてみた名目投資を阻害する資本の相対価格の下落
  • 1990年代に形成された行き過ぎたレバレッジ
  • 企業は1990年代の過剰な債務の多くは解決したが、2000年代の後半の債務の累積は急激であった。

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    家計部門のレバレッジと同様に非金融部門のレバレッジが高いため、企業の貯蓄超過が近い将来に減少する可能性は非常に小さい。非金融部門全体の負債は2009年の第1四半期にピークを迎え、現在は減少傾向にあり、2010年第2四半期には74.9%に低下している。

    歴史が何かの参考になるとすれば、2005年から2008年の「超過」借入が解消されるまではそれなりの時間がかかるであろう。2002年-2004年期においては非金融部門のレバレッジは2.5%低下して64%へと下落した。もしこの2年間のデレバレッジ期間がデバレッッジの「均衡」レベルであるとするならば、非金融部門はもう10年かけてGDPのもう11%分の負債を圧縮するための貯蓄超過を維持しなければならないだろう。

    もし企業が貯蓄超過を維持するならば、利益の上昇に対して賃金や雇用など資本への支出や限界費用を上昇を通じて得られる将来の利益への投資をしない、ということになる。だから、直接的に投資を促進するような財政政策を行うべきなのはもっともだが(Rob ParenteauとYves Smithの記事)、これらの方法は非金融部門の貯蓄およびバランスシートの回復へのインセンティブの強さを考えると効果が薄いと思われる。

    ここでさらなる議論をもたらしそうな図を一枚提示しよう:企業の財務バランスを金融部門と非金融部門の二つのセクションに分けたものである。

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    「illustration 2」の財務バランスは「illustration 1」から計算される残差ではなく“Flow of Funds Accounts, Table F.8″から直接とったものである。よって、総企業財務バランスはillustration 1のそれとは一致しない。

    ポイントはシンプルだ:illustration 1 における当企業財務バランスの超過貯蓄の小さな減少は金融部門に起因している。非金融部門は利益を資本投資にではなく流動的金融資産に投資することで貯蓄超過を増加させ続けていることが見て取れる。

    財政政策は企業と家計が持つ貯蓄への強い願望をターゲットとして設計されるべきである。ようするに直接的な流動性の移転(例えば減税・補助金など)を通じて家計や企業の債務負担の減少を「助ける」ことでデレバレッジプロセスを促進するべきなのだ。このようなことによってのみ健全な民間部門の成長が復活するのである。

    1. 注意:アメリカ企業の財務バランス(バランスがプラスの時には貯蓄超過)はおおざっぱに言えば「未処分利益ー企業の国内への総投資」に等しい []
    • http://twitter.com/himaginary_ himaginary

      こんにちは。
      [1]については注の訳の方が良いような気がします。
      [3]については2.5%下落して64%になった、ということかと思います。
      あと、グラフ2の上の日金融部門は非金融部門のtypoかと思います。
      以上、気付いた点を取り急ぎ。
      himaginary拝

    • 匿名

      himaginaryさん、ご指摘有り難うございます。早速直します!