ポール・クルーグマン:Quoraの解答から パート2

クルーグマンQuoraに再び現る。

経済学者ポール・クルーグマンが質問サイトQuoraに2020年1月30日に再び現れました。そのうちのいくつかを抜粋(パート1はこちら)。

Q:資本主義は世界中で失敗してる?所得格差の拡大、機会の平等、ビジネスにおける大企業の優位性など、現在の苦境に対する経済的な解決策は何になる?
A:「資本主義」が失敗しているとは思わないよ。規制されていない自由放任主義は、極端な不平等と環境破壊をもたらす。だが、社会的セーフティーネットがしっかりしている規制された市場は、今でもうまく機能しているよ。

Q:ベーシックインカムのこと、どう思う?
A:ベーシックインカムの問題は、全員に十分な収入を与えるには物凄くお金がかかるところだ。とい言うか、月々1000米ドルでは足りないだろう。だから極めて不十分になるか、政治的に不可能なレベルまで課税するか、どちらかになる。今のところは、必要としている人々に的を絞り〔政府等による〕資力調査に基づいたプログラムが必要だろう。理念ではなく、実際にできるかの実務の問題だ。

Q:資本主義に代わる最良の選択肢は何だと思う?
A:私たちが必要としている多くのものを提供する市場に依存することは、避けられないと思う。ただ、民間セクターより政府のほうがうまくやれることがあり、その範囲は広げるべきだろう。いくつか簡単な試算をしてみたんだが、経済の約4分の1を使って医療から教育にわたるサービスを政府が直接提供すべきだと私は主張することができる。
私が理解できていない政府でも市場でもない何かがあるかもしれないが、協同組合のようなものがそれほど大きな影響を〔ここで〕持つとは思わない。

Q:トランプ減税に効果がなかったのはなぜ?
A:減税自体が過大評価されているが、トランプ減税は特に効果がなかった。なぜなら遊休現金であそんでいる企業に焦点をあてたからだ。それら企業に現金をもっと与えて投資ブームを引き起こすのを期待して良い理由なんて決してないし、もちろんそれは起こらなかった。

Q:経済格差の拡大にどう対処したらいい?
A:私は両方に働きかけたい。つまり、労働組合化、最低賃金の引上げ、一般的な労働者保護政策を通じて労働者の権利を向上させること、そして富裕層に課税して所得の再分配をし、貧困層と労働者階級を援助すること。私たちが経験しているような極端な格差は過去に誰も経験していない、なぜなら私たちの社会がしてきたような労働者の権利を奪い社会的プログラムを削減するといったことは過去には起こらなかったからだ。

Q:国民皆保険はアメリカ人にとって良いもの?
A:もちろんだよ。すべての文明国にあるものだ。それにこれは正義のためだけじゃない。特に健康な大人に成長する健康な子供たちがいる健康的な人口は、生産性のある人口だ。すべての人に医療を保障しないのは経済的にも狂っているし、残酷だよ。

Q:アメリカ経済についてのどんな誤解が、財政政策に最も悪影響を与えたと思う?
A:稼ぎより消費は少なくなくてはならないという、経済は家計のようなものという考えだ。私の消費は君の収入になるし、君の消費は私の収入になる。だから不況期には政府は赤字を出すべきで、引き締めるべきではない。それと、人々は債務のことを気にしすぎだ。

Q:MMTは使える理論?
A:まず、MMTが何なのか誰かが私に説明しなくちゃならない。MMTが何なのか明確な説明が存在しないし、私のような者がMMTに取り組もうとすると、理解してないって言われるんだ。
正直言って、MMTは、車輪を再発明しているにすぎないのに革新的な思想家だと見られたい人たちの自己宣伝に包まれた、異なった用語を使っているだけの標準的ケインズ経済学だと私は考えている。

Q:マクロ経済学理論は予測力があるとデータは示してる?それとも、マクロ経済学が科学的に有効な理論かどうか検証するデータがないの?
A:マクロ経済学理論は、金融危機後に非常によく機能したよ。お金を刷ってもインフレにはならない、財政赤字でも金利は上がらない、緊縮財政は経済に打撃を与えると予測した。これらは多くの重要人物が言っていたこととは反対のことばかりで、すべて実際に起こったことによって裏付けられた。
もし政治的介入があまりなく、人々がゾンビ思想を信じなければならない状態になかったら、2009年から2015年の期間は科学としてのマクロ経済学の勝利として祝っただろう。

Q:経済格差はどのように民主主義を脅かしている?
A:富は権力を手に入れるのだから、集中した富は集中した権力を意味する。当然ながら、民主主義は脅かされる。

Q:新自由主義の世界的な失敗の答えは、民主的社会主義(democratic socialism)なの?
A:いや、社会的民主主義(social democracy)、つまりほとんど市場経済だが規制と強いセーフティーネットを伴う〔経済を持つ社会〕、が答えだよ。デンマークであって、ベネズエラじゃない。

Q:持っているスキルがひとによって違っていて、一部の人々のほうがより高いスキルを持っているとしたら、どうやって私たちは平等でいられるの?
A:完璧な平等は手に入らないだろう。だが、それは必要ないよ。一般的な家庭が豊かになって、共有した社会で生きていける程度に小さな格差ならいいんだ。
それと、所得の極端な格差がスキルの極端な差を反映していると信じる理由はない。CEOは会社を潰した後に巨額の退職手当を手に入れたりする。
高所得に高い税率を課税することもできる。社会主義者のドワイト・アイゼンハワーが大統領だった頃は、税金は91%にもおよぶ高さで、経済はうまくいっていたことを覚えておいてほしい。

Q:経済成長は人口増加があるときだけ関係あるの?人口が不変の場合に、 成長していない安定した経済がなぜ良いとされないの?そのようなシナリオでは経済成長は「強欲」とみなされるんじゃない?
A:Noだよ、なぜなら経済成長はモノをもっと持っているということを意味しないからだ。電気圧力鍋、好きな時にクラシック映画を観ることができる私の能力、地下鉄の性能を向上させる電子信号機といったモノを評価するのは強欲だとは思わないし、これらはすべて経済成長として計算される。
要は、生活の質の向上はGDPにカウントされるし、カウントされるべきだ。そしてそれの何が悪いというのだろうか?

Q:なぜアメリカ政府はアマゾンに税金を払わせないの?
A:これを法人税回避というもっと大きい問題として考えてみよう。残念ながら、多額の税金がかかるところから利益を消したり、アイルランドのようなタックスヘブンで魔法のように再出現したり、企業が合法的にできることはたくさんある。
技術的には、こういったものを取り締まるのは難しくない。だが、それにはアメリカ政府が取り締まりたいと思っていること(現在の執行部はそう思っていない)と、他国と協力すること(最近していないもうひとつのこと)の両方が必要だ。

Q:現在のアメリカ大統領のどんな経済効果に驚いた?
A:(他の条件を同じとして)経済を活性化するために、大きな財政赤字を出すだろうことはわかっていた。ここまで大きいとは思っていなかったし、インフレなしで失業率がここまで下がるとも思っていなかったが。だから、巨大な財政刺激と、思ってもいなかったほど財政赤字を出し続けられる余地、という組み合わせに驚いたよ。

Q:不況時や景気拡大時の財政乗数の大きさはどれくらいだと思う?
A:拡大か引き締めかということではなく、どれほどの不況か、FRBが財政拡張を相殺するほど金利を引き上げるか否かだと考えている。金融政策が反応しなければ、乗数はだいたい1.5というのは明確だ。過去10年の経験は、それをはっきり示している。

Q:(政治的な介入のない理想的な世界を前提として)気象危機を経済的にどう解決する?
A:炭素価格〔の設定〕+大規模なテクノロジー投資。そんなに難しいことじゃない。

Q:あなたはマクロ経済学の総需要の意義を強調することが多いけど、基本的に政治的な理由で金融政策より財政政策を推進している。政治的擁護で自分の経済分析を汚すことをどう正当化するの?
A:これは偏った質問だし、それはわかってるだろう。だが、答えるよ。私は不況に対する防衛の第一線として常に金融政策を重視してるし、それに変わりはない。だが、気付いていないといけないので念のために言うが、2008年にFRBは金利をゼロに下げたがそれは十分ではなかった。だから拡張的金融政策を私は支持し続けてきたが、財政政策の支援も必要だと主張してきた。FRBの中の人々も同じことを言っていた!これは基本的なマクロ経済学の教科書に書いてあることだ。
下限がゼロになったときの財政政策の状況は明らかで、政治とは何の関係もない。
もし政治的に歪んだ主張がどんなものか見たければ、失業率が9%に直面したときに財政拡大と金融拡大の両方に反対したすべての保守派を見ればいい。そして現在の彼らは財政赤字に無関心で、FRBに利下げを呼び掛けている。

Q:もしあなたが大統領で、所属政党が圧倒的多数を有しており両院であなたの法案が支持されされるとしたら、政策課題は何になる?
A:国民皆保険だよ。おそらくだけど、望むなら民間の保険に加入し続けてもいいが、人々をMedicareに加入することにするだろうし、ほとんどのひとは最終的にはMedicareに入るだろう。現在の痛ましいほど低い家族向け支出を3倍にする。炭素課税。大部分をグリーンエネルギーに割くインフラに数兆米ドル。
あとは、スーパーヒーローものの映画の生産を減らすためのキャップ・アンド・トレード制度。これで十分だろう。