カール・W. スミス「MMTと主流派の“New View(新しい見解)”は共に『財政赤字を恐れるなかれ』と議会に参加する」(2019年11月21日)

経済学者、財政赤字を恐れるなかれと議会に参加する
2つの経済学派が新興しており、共に財政赤字の拡大を支持している―しかしながらまったく異なった理由に基づいている

Economists Join Congress in Not Worrying About the Deficit

Two emerging schools of thought favor more government debt — but for very different reasons.
By Karl W. Smith

少なくとも一世代にわたって経済学者たちは、過剰な政府債務の危険性について全員一致して議会に向かって警告を発してきた。ところが昨日、アメリカ下院議会の予算委員会は「政府債務はそんなに悪くないのでは」との公聴会を開催した――しかも主役になったのは、証人とした呼ばれた経済学者だ。

委員会は、最初に政府の借金について見解が一致がしているように思われる2つの新興の経済学派に関する証言を聞いた。ただ、いわゆる現代貨幣理論(MMT)支持者と、〔オリビエ・ブランシャールやローレンス・サマーズら〕“New View(新しい見解)”と呼ばれてしかるべきかもしれない理論の支持者とでは、経済がどのように機能しているかについて見解の深い不一致を抱えている。

まず最初に、いくつかの歴史的事実:経済学者の間では「財政赤字は時には(例えば戦争や景気後退の状況だと)必要だが、最終的には経済成長にとって脅威となる」との共通理解が長い間存在していた。政府が借金をすれば、民間セクターの投資を「クラウド・アウト(締め出し)」するからだ。この論点に立てば、政府の借金は以下の3つの事象の内1つを引き起こすことになる
①:政府の借金は、民間投資を減少させていく。なぜなら、貯蓄の蓄積をめぐって〔政府と民間は〕奪い合うことになり、借り手を市場から退出させるまで金利を上昇させることになるからだ。
②:政府の借金は、〔国内の有限の貯蓄を枯渇させるので〕海外からの融資資金で国内貯蓄の蓄積を補充・増加することになってしまう。
③:政府の借金は、①と②の組み合わせた事象を発生させる。
これらケースいずれが起こっても、将来のアメリカ人は、国内投資の減少か対外債務が増えることで、より困窮することになる。

そのため経済学者達は常習的に、議会は長期的には政府債務を削減することに真剣に取り組むべきだと勧告してきた。議会は大抵は無視してきた。ただアメリカ連邦政府は1990年代初頭の数年間には黒字運営を行っている。

2000年以降、全てが変わることになった。不況、減税、戦争、世界金融危機、大不況が重なって赤字は急増することになった。しかしながら、金利は上昇することなく、低下したのだ――そして、合衆国は外国に数十憶ドルの純支払いを抱え込むことなく、海外からの収入を得ることになった。

膨れ上がる借金と低位で安定する利払い
合衆国の連邦債務は2001年以降倍増しているが、利払いは増加することになっていない。

 

現代貨幣理論の支持者達は、これら事実に肯定的な根拠を見出している。MMTer(MMTの支持者)達は、過去20年の低成長は、政府債務が、巨額すぎるのではなく、むしろ非常に少額だったからだ、と主張している。MMTer達は、巨額の政府債務が本当に持続不可能だとするなら、それは景気後退ではなくインフレの上昇に繋がっただろう、とも主張している。そして1980年代以降、インフレ率は低迷を続けている。

このMMTの仮説は、経済は基本的に需要主導である、との見解に依拠したものである。投資は、金利の低下によっては起こらない。政府か消費者の追加的な支出が連鎖し、売り上げの上昇の結果、投資が行われるのだ。よって、MMTer達は、支出のフロー(流れ)を確保するためにジョブ・ギャランティ―(雇用保障)やグリーン・ニューディールのような政策を支持している。MMTer達は政府債務の削減を支持していない。

新しい見解を支持している人達は、政府債務の削減の不支持ではMMTと同意見だ。ただ彼らは、MMTと全く違う効力が働いていると見ている。人口高齢化、世界的な不確実性、技術変化が予測不可能になっている結果、国債のような安全資産に未だかつてない需要が存在している、と彼らは主張している。他方で、世界同時不況の余波が続いてることで、民間投資は拡張することが困難になっている。莫大な収益が得られる可能性がある科学技術への初期投資は魅力的な融資になっているかもしれないが、中小企業が融資を受けることができていないのだ、と。

これは究極的には供給サイドの問題――経済は、健全な成長に必要な設備投資を欠いているのである。この供給サイドの問題に対処するために、新しい見解の支持者達が推奨しているのが、政府による企業投資減税や、インフラへの支出を増やすことだ。これはつまるところ、新しい見解の支持者達は、政府を金融仲介機関――リスク回避によって滞留している貯蓄を、政府は安価で借り入れ、長期的な生産性を向上させるであろう投資に資金を出す金融仲介機関と見ている。

よって、MMTと新しい見解は両学派共に、政府債務を以前の経済学者達の共通理解よりも許容している。しかしながら、理論的根拠は異なっている。なので、経済学者の多くが「財政赤字は今は問題になっていない」と主張しているが、それはこの先も全く問題にしなくても良いと主張しているのと同じでないことを、国会議員は認識すべきだ。もっと一般的な言い方をするなら、政治家は、将来経済状況が変化した時の資金調達のあり方について考慮することなく、変革的な政府支出政策を承認するのは慎重であるべきだ。