MMT、もっと詳しく!(豪州投資家向けサイトから 2019年4月14日)

オーストラリアの投資サービス会社の方(ポートフォリオ・マネージャー)が、投資家向けサイトでMMTの紹介を始めています。日本ではありえないクオリティで、おもわず。。。

後半は来月とのこと。お楽しみに!

TTPS://WWW.LIVEWIREMARKETS.COM/WIRES/MODERN-MONETARY-THEORY-AND-WHY-YOU-RE-ABOUT-TO-HEAR-A-LOT-MORE-ABOUT-IT 


パート1 政府

米国政治に関心を向けている人なら、議会の「フレッシュマン」、アレクサンドリア・オカシオ – コルテスら、多くの米国の民主党議員が支持している新しい経済理論を知っているだろう。この経済のフレームワークは、一般的に現代金融理論またはMMTとして知られているものだ。

ここ数カ月間、MMTについては経済学者やジャーナリストからのいくつかの「熱い反応」があった。いわく、危険(ECB)、ゴミ(ラリー・フィンク)、新しくない(ポール・クルーグマン)すばらしい(ポール・マーキュリー)。

私がMMTと出会ったのは10年前、ビル・ミッチェルのブログに引っかかったことだった。金融の専門家として。自分自身や同僚が金融危機に驚愕してしまったことを後ろめたく思っていたのだ。どうして見逃していまったのだろう。そして次に起こったときに何らかの兆候を把握することができるだろうか?

2009年以来、私はMMTに関する何百もの記事(ビル・ミッチェルのおかげだ)、学術論文、書籍を読んできた。この記事の目的は、MMTについてよりバランスの取れた(マーケットベースの)視点を提供すること、そしてこれから数年間学べば、さらに詳しく知ることができるくらいのレベルに導くことだ。

MMTはとても深く、歴史も長いので、二回に分けて説明する。今月はMMTと政府の役割についてだ。

MMT は政策ではない

MMTの最大の弱点は、どうやらその名前だ。最後の「T」は「理論」のTだが、これでは初心者は、MMTは「まだ証明されていない概念または政策である」とか、「未知のものを解明する何か」でがあるように受け取ってしまう。 実はMMTは重力の説明のようなものなのだ。 つまりMMTは、事実に基づき、かつ、経験的にサポートされている現代(金本位制以降)金融システムのフレームワークなのだ。

その中核には、MMTはフレームワークであること、ほとんどの先進国において。金融システムが実際にどのように動いているかについての詳細な記述が位置している。読者のあなたがオーストラリア、アメリカ、イギリス、カナダ、日本、またはニュージーランド(そしてさらにいくつかの国)で読んでいる方なら、おめでとう – あなたはもうMMTの世界に住んでいます。そう、ジェローム・パウエル、あなたも!

MMTがシステムの説明に他ならないのであれば、それが主流の経済学とどう違うのか。

通貨の発行者と貨幣のユーザーを区別する

2011年、主流経済学思想の申し子ポール・クルーグマンは、日本とイタリアの金利がこれほどまでに違っているのはなぜか、という話をよくしていた。 彼は日本の政府債務がイタリアよりもはるかに大きいことを指摘した。にもかかわらず、日本の金利は常にゼロであり、イタリア(そしてヨーロッパの大部分)はソブリン危機に苦しむほどだった。

MMTの学者は何年も前にその答えを知っていた。

1990年代初頭にプロジェクトが始まったときから、MMTは通貨の発行者と通貨のユーザーには違いがあると認識していた。 通貨の発行者とは、アメリカ、日本、オーストラリア、イギリス、カナダなどの政府だ。 通貨のユーザーとは、イタリア、ポルトガル、ギリシャ、家計、企業、州、地方自治体などだ。

MMTは、自国通貨を持つ政府が不用意に破産することはあり得ないことを理解する。 もちろん、それらの国が決して破産しないという意味ではない。破産はは政治的な選択であり、経済的に追い込まれるものではない。 たとえば、米国の債務上限ルールは政治的な制約だが、財政的な制約ではない。

イタリアなどの国は家計と同じだ。 イタリア政府には家計と同じく独自の通貨発行中央銀行がないため、「破綻」する可能性がある。 多くのMMT学者たちは、10年前にユーロ危機が避けられないということを正確に予言していたのだが、それはこの洞察からだった。

対して、オーストラリア、日本、イギリス、アメリカなどの通貨発行政府は、財政的な制約を受けない。 オーストラリアの赤字が100億ドルであろうと1000億ドルであろうと、借金が金利を上昇させたり、オーストラリアをギリシャ経済のような状況に追いやることはありえない。

注意してほしいが、通貨発行権限を持つのは連邦政府(中央銀行と協調)だけだ。 オーストラリアの州および地方自治体は通貨のユーザーであるから、連邦政府からの資金提供がなければ、州または地方自治体のプロジェクトは予算を調整しなければならない。

財政赤字が重要だ – 考え方が違うけれど

多くの批判者は、MMTが政府に財政制約がないと言っていると聞くと、「MMTの支持者(非公式にMMTersとして知られている)は財政赤字には全く問題ではないと言っている」と受け取ってしまい、そんなフレームワークはそもそもゴミだという結論に飛んでしまう。 しかし、MMTの学者たちは、むしろ財政赤字は常に重要だということを認識しており、長年にわたって多くの論文を書いてきている。 – ただし、人々が伝統的に考えるような道筋で、ではない。

MMTのフレームワークは、貨幣とは経済の中で財やサービスと交換されるものであるが、かといって財やサービスが無限に利用可能ということにはならない1。 つまり純政府支出の制約は、その金額ではなく、経済における実質資源がどれだけ利用可能なのかというところにある。 つまりオーストラリアやアメリカのような国は自国通貨を使い果たすことはない。しかし労働力、エネルギー、食料や水には限りがある。 別の言い方をすれば、財政の実質的な制約はインフレなのだ。

究極的には、国債を購入する貨幣は財政赤字が創出する

主流経済学の文献によると、政府が支出するためには増収が必須だとされている。MMTの洞察は、財政支出が先で、徴税は後でしかありえないというものだ。つまり、税が政府支出に充てられるのではなく、政府支出が税になるのだ。

よく誤解されるのは、財政を賄うのに税は不要だという話から、MMTは、政府が中央銀行に直接資金を供給するよう強制するものだと主張しているとするものだ。それは中央銀行の独立性を脅かし、中央銀行が政治的な道具として使われるようになり、経済における中央銀行の役割の信認が毀損され、外国人投資家が逃げ出し、その結果、通貨が無価値になるというものだ。

実はそのような批判は、財務省、中央銀行、商業銀行そして国債券行が日常的にどのように動いている
かの理解が不十分であることの反映だ。オーストラリアの中央銀行は、政府資金を常に支援しており、何十年もそうしてきた。これは、オーストラリアの金融システムの制度、規制および政策フレームに従ったものだ。このステップバイステップのプロセスはかなり技術的で、銀行の準備預金会計を理解する必要がある。関心がある人のために、この記事の添付の付録で概説している。

これが意味するところは、政府支出は民間部門を圧迫していないということだ。一般には、政府支出は金利を押し上げると信じられている。納得できませんか? 下のデータは、政府債務の水準が上昇したにもかかわらず、米国の金利は低下し続けていることを示している。

このようデータを見て「いや米ドルは世界の「準備通貨」だから、アメリカは特別なのだ」という批判もが多い。 しかしそれが本当なら、なぜ日本、イギリス、そしてオーストラリアでさえも同じようになっているのだろうか?

支出が先、という認識には深い含蓄がある。これは、純政府支出が民間の黒字(債券を含む金融資産)を生み出すということを意味している。 つまり:

政府の赤字 = 家計貯蓄 + 企業貯蓄 + 外国貯蓄

これは経時的な部門の収支を通じて実証的に示すことができる。 下のグラフは1952年から2015年までの米国の収支を示していますが、データは家計部門と企業部門が「国内民間部門(Domestic Private Sector)」に合算されている。

いつもの読者は上のグラフはおなじみだろう。我々はいくつかのプレゼンテーションでオーストラリアの部門別収支を発表している。 以下は1998年以降のオーストラリアにおける四部門の収支だ。

 

これをさらに一歩進めて、純政府支出と家計貯蓄の関係を見ると、非常に強く関連している。

政府が黒字に近づくとき、同時に家計貯蓄がゼロに近づく事実は偶然ではない。これは会計だ。 政府が家計貯蓄を増やしたいならば、それだけの大きさの赤字を出さなければならない。

MMT と税の役割

オーストラリアが財政的に制約されていない(が資源に制約される)のなら、学校や病院は資金不足になっているのはなぜだろうかで?どうして失業がなくならないのだろうか?チャリティーは何のため?そして、税が政府支出を賄っていないなら、私たちはどうして税を納めなければならないのか?

私を信じてほしい。このフレームワークを理解しようとしてきた10年間の旅路のうちに、私は自分自身に何度も同じ質問をしてきた。MMTの下であっていも、税は経済の中で重要な役割を果たしている。政府に資金を提供するためではない。税の目的は二つある。

  1. 税は民間部門の購買力を低下させる。それによって経済資源が解放されるため、政府は自身の社会的・政治的目的を達成するために、インフレを避けながらて商品やサービスを購入することができるようになる。 たとえば、軍、司法制度、学校に十分な労働力を確保する必要があるわけだ。
  2. 税が通貨に価値を与える

「金本位制から離脱して以降」、アメリカやオーストラリアドルのような兌換通貨の価値を支えるものは「信認」だけになったという主張がある。従って、信認がなくなると(いつか必ずそうなると示唆する人もいる)通貨価値が破壊される。これを理由に「ハードマネー」の支持者は、ゴールドこそが唯一で真の貨幣形態であり、価値を保持できる媒体なのだと考える。最近では、暗号通貨の支持者も同様の議論をする。

MMTの観点からは、市民に税を課したときに通貨の需要が生じ、通貨の本質的な価値が生まれる。何なら、税務署で税をゴールドで払おうとすると拒否される。納税義務を果たすときに税務署が受け取るのはAUDだけだ。

税金を払わないとどうなるか。そうすると刑務所行きだ。 オーストラリア経済に参入するための代償として、税を支払うことが要件になっているのだ。

税が通貨の需要を生み出すろいう考えを支持するような歴史上の先例は、様々な時代に認められる。例えば、17世紀後半のマサチューセッツの植民地や、1800年代アフリカのイギリスの植民地だ。このような制度が失敗する事例は、一般的には、放漫的だったか、徴税制度が貧弱なためだった(つまり、財政赤字が重要)。

MMTの観点からは、税の役割とその本質的な意味は、徴収することによって潜在的な通貨需要を生み出すことにある。

MMT = ジンバブエ, ベネズエラ, ワイマール共和国? (ノー)

また、MMTの批評家はすぐにハイパーインフレに陥る経済との類似点を探す。ハイパーインフレは「MMTを実行」した結果だとしたいのだ(もうお分かりのように、MMTは実行したりするものではない)。

インフレの役割を理解することは、MMTフレームワークの核心だ。事実、MMTは量的緩和でインフレが引き起こされることはないことを正確に予測した数少ない学派の一つだった。
そして上述のように、財政支出は多すぎると経済の中の実物資源を圧迫し、その結果物価が上昇するので、MMTの観点からも財政赤字はやはり重要だ。また、歴史上のハイパーインフレは、経済が完全雇用で運営されている場合にはめったに起こらない – 多くの場合、ハイパーインフレは経済の生産能力が崩壊した結果だ。また、MMTの批評家はすぐにハイパーインフレに陥る経済との類似点を探す。ハイパーインフレは「MMTを実行」した結果だとしたいのだ(もうお分かりのように、MMTは実行できるものではない)。

MMT と経済政策

MMTは、通貨システムがどのように機能しているかを正確に説明したものに過ぎない。
要約すると:

  • 通貨発行者と通貨ユーザーとは異なる。
  • 通貨発行者(オーストラリア、アメリカ、日本など)は不注意で倒産することはない。 連邦政府には財政上の制約がない。
  • 政府財政の制約は、経済における実物資源の利用可能性、したがってインフレだ。 よって、財政赤字は重要だ。
  • 税は政府に資金を供給するものではない。 徴税の前に、先行する純政府支出がある。
  • とはいえ、現代経済においても税は重要な役割を果たしている – 頑強で強制力のある税制が本質的に通貨に対する需要をもたらす。

これらの現実認識から、多くの政策思想が生まれる。 最近、米国の民主党大統領候補は、「グリーンニューディール」、「すべての人のためのメディケア」、「大学授業料無料化」などの政策を提唱している。

MMTの観点からは、これらの提案は明らかに「資金提供可能」であり、それは2017年末に議会で可決された1兆5000億米ドルの減税が「資金提供」されたのと同じことだ。(それ以来、国債発行が急増したにもかかわらず、国債の金利が低下していることに注意)

MMTは、これらの野心的な政策アイディアは、結局のところ、目標達成に十分な実物資源が経済の中に存在するかどうかにかかっていることを理解している。 たとえば、米国経済を10年間で再生可能エネルギー中心に転換させるのに必要な労働力と技術はあるのか。 3億3000万人のニーズを満たすのに必要な医療サービスを提供できるだけの、十分な病院、看護師、医師がいるのか? 大学には、学生の需要増加に対応するのに十分な講義室と教師数があるのか?

「それにいくらかかるのか?」という問題では決してない。

MMT をもっと知っておくべき理由

最近、MMTについて書かれたものが増えている。その多くは「財政赤字をが問題にしない」ゆえに、次のジンバブエへのレシピとなる「悪い政策アイデア」であると却下してしまうものだ。誰でも時間をとってMMTの学術文献を読みさえすれば、そうした議論はほとんど重要ではないとわかるだろう。ほとんどの批判は、過去数十年に書かれた文献の核心部分の理解に届くものではない。

この「新しい」アイデアがすぐに消えてしまうことはないだろう。理解 と研究をしないでこれを批判する人々は、数年後ここに引き戻されることになるだろう。

もっと読みたいという方には、以下を勧める。

  • Seven Deadly Innocent Frauds of Economic Policy – Warren Mosler (bonus, the book is free)
  • Understanding Modern Money (1998) – Randall Wray
  • Introduction to MMT Macroeconomics Textbook (2019) – Bill Mitchell, Randall Wray, Martin Watts

References

  1. このフレームワークは「新しい」ものとは言い難い。研究のほとんどが1990年代半ばに始まっていたものだ。
  2. (リンク先参照)
  3. (リンク先参照)
  4. これは財政赤字がなぜ重要かについてのMMTの議論をうまくまとめている (VIEW LINK)
  5. (VIEW LINK)
  6. 通貨需要を生み出す税の使い方については、Warren Mosler 「命取りに無邪気な嘘」を読むことを勧める。 (VIEW LINK)
  7. (VIEW LINK)
  8. 私はハイパーインフレ現象の経済史の専門家ではないが、興味のある読者はビル・ミッチェル教授によるジンバブエについての優れた要約を参照することを勧める。 (VIEW LINK)
  9. ここでコピーがダウンロードできる(VIEW LINK)