オカシオ-コルテスは政策の財源をどうするつもりなのか?紙幣を(たくさん)印刷せよ!

オカシオ-コルテス氏とMMTに関連する情報が少ないのでゲリラってみました。図表は省略で。
ttps://www.bloomberg.com/news/features/2019-01-17/alexandria-ocasio-cortez-s-big-ideas-for-taxes-and-medicare


アレクサンドリア・オカシオ-コルテスと自由市場の唱道者ジョセフ・オバートンとはまだ顔を合わせたことがないかもしれない。しかし彼女は、よく知られている彼のコンセプトである「オバートンの窓」というものをしっかりと把握している。この用語は、無数にあるアイデアのうち公共の討論に値すると見なされているアイデアの一群を指す。 彼女の活躍で税率に関する「オバートンの窓」はかなり左に移動した。

ニューヨーク州ブロンクス出身のオカシオ-コルテス、このマスコミ受けする29歳は、史上最年少で下院議員に選出された女性だ。 1月6日に放映された番組、60ミニッツではグリーンニューディール政策について語った。これは2035年までに米国を再生可能エネルギー100%に転換させるというプランだ 。番組ホストのアンダーソン・クーパーは「そのプランは増税が必要ですね」と尋ねた。「人々が公正な分担金を払い始めなければならなくなる要素がありますね」と彼女は答えた。 その細部について尋ねられ彼女は言った。「いちばんトップにいる人、1000万ドルを持っている人なら、税率は60か70パーセントになるでしょう」。

70パーセント! ちなみに2017年12月に可決された税法の下での最高税率は37パーセントだ。 節度ある社会では誰もあえて言わないような極端な数字がいきなり議論の焦点になった。オカシオ-コルテスのファン – Twitterだけで240万人のフォロワーがいる – はこれを歓迎した。 一部の専門家は70%という数字を支持する学術研究を掘り出した。歴史的に見れば オカシオ -コルテスも控えめだとの指摘も現れた。1960年代という最近の時代でも最高税率は90パーセント以上だったのだ。低税率を擁護する人々は彼女に罵詈雑言を浴びせ、彼女の支持者たちはそれで燃え上がった。

オカシオ-コルテスは理解している。一つのアイデアが採用されるまでには、たとえ不十分であっても「語られるようになる」段階を経る必要がある(トランプ大統領もよくわかっている)。最近コロンビア大学から引退したピューリッツァー賞受賞の歴史家、エリック・フォナーは次のように述べている。「”無理だ、われわれには何も変えられない”と言うのは一番簡単なことだ」。 「アメリカの歴史における大きなアイディアの大部分は、”君たちには何も変えられないよ”と言われた過激派のグループから始まっていた。」フォナーは左傾化する民主党を、奴隷制度と戦った南北戦争前の過激共和党になぞらえる。「まず案を提示する。それがすぐに実現しないことは承知の上で。しかしそのアジェンダを推し続けることで政治的言説を変えていく。そしてその一部を望む誰かと行動を共にする。」

60分ミニッツでのオカシオ-コルテスはこの話題をさらに過激な方向に進めることはしなかった。そのかわりに彼女はこの機会を使って別の論点の「オバートンの窓」を動かしにかかった。財政赤字についてだ。彼女は現代貨幣理論(MMT)と呼ばれる学説への支持を表明した。これは若者や左派政治家や政策担当者の心を捉えつつある理論だ。そのコアにある考えは直観に反するもので、自国通貨の場合借金はインフレを引き起こさない限り問題にならないとするものだ。MMTの支持者はこう言う。「経済が過熱するリスクがなければ、新しい政府支出は別の支出を削ったり増税したりする必要はない」。

オカシオ-コルテスは次のように発言することもできたはずだ。「そうじゃない、アンダーソン。グリーンニューディールへの支出のために増税する必要はありません。でも私は増税もしたい。金持ちから貧しい人々にお金を分配すべきと確信しているからです。」と。そうすればインターネットですぐに大注目になっただろう。 バードカレッジのレヴィ経済研究所の上級研究者であるMMTの理論家ランダル・レイは、オカシオ-コルテスがグリーンニューディールに関連させて増税を持ち出したことに「少しがっかりた」と書いている。 別のMMT理論家でバーニー・サンダースの経済顧問でもあるステファニー・ケルトンは、オカシオ-コルテスが富裕層への増税を好む本当の理由は富の不平等を何とかしたいと思っているだと説明する。「所得と富の不平等は、1920年代と同等の水準になっているという認識があるのです。」

何にせよ、オカシオ-コルテスは税率の引き上げを目指している。1980年代のレーガン革命以来、民主党員は共和党員と同じくらい増税アレルギーを持つようになっていた。 ヒラリー・クリントンは、2016年の大統領選挙キャンペーンで税率の引き上げの主張はしなかった。 バーモント出身のワイルドな社会主義者、サンダースでさえ大統領に立候補したときに提案した最高税率はたったの52パーセントだった。しかし、税に反対する保守派たちはオカシオ-コルテスの登場によってタブーが壊れつつあることを感じ取った。彼らが何十年もかけて建設し強化してきたダムの壁に亀裂が入った。全米税制改革協議会の代表であるグローバー・ノーキストは1986年に有名な「納税者保護誓約書」(Taxpayer Protection Pledge)を考案した人物だが、ツイッターで彼女の提案を奴隷制度に譬えた。「奴隷制度はオーナーが生産者から100%を奪い取るものだ。民主党の女性議員オカシオ・コルテスは70%(CNNによれば)がいいそうだ。70%の搾取は何と呼べばいいのかね”?」

ノーキストは、今は税率が70%に上がることはないと確信していると語る。なぜならあれはひどいアイデアだから、と。彼が言うには、これを喜ぶ民主党員が自分たち自身を傷つけているだけだ。 オカシオ-コルテスは自分の仲間を破滅に導く「ハーメルンの笛吹き」であると。しかし、金持ちに対する税率の引き上げが民主党における失われた問題になるかどうかがハッキリしたわけではない。1月12日と1月13日に行われたHill-HarrisXの調査では、登録投票者の59%が最高税率の70%への引き上げという考えを支持していることがわかった。これは共和党の有権者の45%を含んでいた。 おそらくオカシオ-コルテスと同じく自分自身を民主社会主義者と呼ぶサンダースの大統領選挙運動のおかげで、「社会主義」という言葉さえもダーティーなものではなくなっている。 8月のギャラップ社の調査レポートでは、民主党員と民主寄りの人々のうち57パーセントが社会主義について肯定的な見方をしていた。対して資本主義に肯定的な見方をしたのは47%だけだった。

70%の最高税率によって米国の経済と企業に何が起こるだろうか。最上位層のやる気をそぎ、非生産的な租税逃れを誘発するだろう。実際、金持ちの納税が少なすぎると考える多くの経済学者も、抜け穴をなくすことの方が良い解決策だと言っている。いろいろな所得に課税するようにした方が、狭い意味での所得に対する税率を上げるよりも効果がある。

ノーキストは、70%の最高税率は高収入者を米国から流出させる引き金になるだろうと主張する。以前に米国の税率が同じように高かった時代は、他の国の税率もまた高かったため移住するインセンティブは小さかった。 右寄りのシンクタンクであるTax Foundationは1月14日、1000万ドルを超える所得(キャピタルゲインではない)に70%の最高税率を課してもは「収入はあまり上がらないだろう」と発表した。「あまり上がらない収入」 とは、10年間で合計で1,990億ドル、あるいは、最高税率区分に含まれる人々は仕事を減らしたり非営利事業への投資を減らす可能性を考慮する前なら2,920億ドルとのことだ。

対して、オカシオ-コルテスを支持する経済学者は、デンマークの最高税率は56.5%で、年間約8万ドルを超えてる所得層に適用されるが、これは彼女の案である1000万ドルをはるかに下回る水準にもかかわらず、生活水準は世界最高レベルにあることをとすぐに指摘した。ノーベル賞受賞者のMITのピーター・ダイアモンドとカリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ氏による2011年の論文は、最高所得税率(連邦と州の合計)を73%とすべきだとの提言をしている(やはりキャピタルゲインは除いて)。彼らは、その層に対する余分な収入のドルは、低所得者が受け取るドルに対してほとんど価値がないと見なした。彼らの研究への批判者は、ダイアモンドとサエズは金持ちを毛を刈り取る前の羊のように扱っており、高い税率が高度な学位を取得したりビジネスを始めることをどれだけ妨げるかを過小評価しているとする。ダイアモンドはその批判を退けつつ、より多くの公共投資の必要性を挙げ、「私は完全に満足だ」とオカシオ – コルテスの70パーセントの提案を評価した。

あまり知られていないが、彼女がニューヨーク州ウエストチェスターカウンティーの高校生時代は科学オタクだった。2007年にのインテル国際科学工学フェアには46カ国から約1,500人の学生が参加していたが、微生物学の分野で四人に与えられた二等賞のうちの一人だった(線虫に対する抗酸化物質の効果についての研究だった)。 このことは、ブロンクスでプエルトリコ人の家系に生まれた少女が、一族で初めての大学進学者になったという物語に付け加えられるエピソードだ。 彼女が家を出て大学に通っていたころに父親が亡くなり、一家は破産の瀬戸際に追い込まれた。 「労働者階級の出身だったら、何か一つでも災いがあったら全部がバラバラになってしまうって感じること多いよね」約1年前、彼女はインスタグラムのビデオでそう語っていた。

オカシオ・コルテスは、バラク・オバマ前大統領と同様に2011年に大学を卒業するとコミュニティのオーガナイザーになり、ウェイトレスやバーテンダーとして生活費を賄った。2016年はサンダースのキャンペーンのために働いた。その後、物事が早く回り始めた。彼女はブロンクス – クイーンズ議会地区で民主党の指名選挙の出馬し、ジョー・クローリーを破る番狂わせを起こした。下院民主党議員幹部会の議長だったクローリーは、カリフォルニアのナンシー・ペロシ下院議長¥を引き継ぐ候補者と見られていた。 彼はオカシオ・コルテスの18倍もの費用を使い、ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ、ニューヨーク市長のビル・デブラシオ、そしてニューヨークの二人の上院議員から推薦を受けていた。 彼女は圧勝した

よほどのコミュニケーションスキルがなければ、どのテーマについてであれ「オバートンの窓」をシフトさせることはできない。オカシオ-コルテスはこの点、忍者レベルだ。彼女はソーシャルメディア上で批判に対応しサポーターをワクワクさせる。旧世代が街頭デモでやっていたことをここでやっている。「組織化に終わりはないと私は固く信じている」。60ミニッツのインタビューでクーパーにそう語った。選挙後の最初の行動の一つは、ペロシの事務所を訪問することだった。彼女に祝福してもらおうとしたのではない。まもなく下院議長になる彼女の事務所を占領していた気候変動活動家を支援するためだった。今、オカシオ-コルテスはペロシの部屋から二ドア離れた部屋で働いている – しかしペロシのためにではない。彼女は、民主党のに進歩派の議員連盟を作るというアイデアを提案したのだ。モデルは右側の強力な自由議員連盟だ。彼女の同調者には、最初のソマリア系アメリカ人議員の一人となったミネソタ州のイルハン・オマル、ネイティブ・アメリカン女性として初めて選出されたニューメキシコ州のデブ・ハーランド、初のパレスチナ系アメリカ人議員となったミシガン州のラシダ・トレイブがいる。「これはムーブメント。私じゃない。」 オカシオ-コルテスは、昨年インスタグラムのビデオでそう語った。

オカシオ-コルテスもトランプもソーシャルメディアの達人だ。 信頼性を攻撃された時の対応が上手だ。 事実に基づいた批判をしようとしても、 彼らの支持者たちに意地悪でアンフェアだと受け取られてしまう。外部の声を抑制しようというエスタブリッシュメントからのお決まりの反応ということになる。それで、オカシオ-コルテスは昨年ソーシャルメディア上で、ペンタゴンが21兆ドルの資金を紛失し、これは国防総省の年間予算の約30倍にあたるという間違った発言をした。トランプとは違い、彼女は自分の過ちを正す。昨年のインスタグラムでこう語った。「あらゆる問題とあらゆる物事についていつも完璧と思われてしまうのは大変」と彼女は昨年のインスタグラムで語っている。

この言葉の裏には、オカシオ-コルテスにはシフトさせたい「オバートンの窓」がまだたくさんあり、批判されるかといってスピードを緩める意思はないということが読み取れる。 グリーンニューディールと富裕層への増税以外にも、メディケア・フォー・オール(国民皆保険)、連邦職業保証、移民・関税執行局の廃止、大学や専門学校の授業料免除がある。さらに、軍事費用の大幅な削減、攻撃用兵器の禁止、商業銀行と投資銀行を分離していた大恐慌時代からの法であるグラス・スティーガル法の復活もある。これらはすべて、トランプの下で規制緩和を享受してきたアメリカ企業にとってテールリスクになるように思える。オカシオ-コルテスのチーフスタッフであるサイカット・チャクラバーティはこう言う。「これは、ウォール街のエリート幹部に会いに行って飲んでもらえるような計画じゃない。まずは見せてやらないと。」

問題は、彼女がそれらを見せてやることができるかどうかだ。 オカシオ-コルテスがワシントンにやって来た1週間後、同僚の民主党議員は彼女は破壊的でチームプレーヤーではないと不満を述べた。一番罪深いのは 彼女の罪の中で最高のもの:彼女からみてリベラルさ十分ではない議員に対して、その対抗馬の側に付くと脅すのだ。「コルテス氏は良かれと思ってやっているのでしょうが、味方を攻撃するなというルールは絶対です。」と、ミズーリ州の民主党議員エマニュエル・クリーバーは言う。「われわれ民主党員の中で狙撃する必要はないというだけだ。」

オカシオ-コルテスと同調者たちが法案を通すためには、財政赤字を理由に使って反対勢力の支出案に対抗するという共和党の実績ある戦略を潰さなければならないだろう。そこでMMTが登場する。MMTは政府は増税せずに、さらには国債で民間から借り入れすることすらせずとも、支払いをすることができるとする。 政府は単に新しいお金を作って支払いにあてる。 MMTの下では、政府支出の上限は、政府が国の生産能力を使い尽くすところだ。それを超えれば高いインフレがもたらされるだろう。 現在のように、インフレ率が低い限り財政赤字は問題ない。普通の経済学者は、たとえ自国通貨建ての債務であっても、印刷機に頼らずとも債務を返済する能力があるという投資家からの信頼を失ってしまえば危機に陥る可能性があると答えるものだが。

依然として重要で、MMTなど全然重要ではない空間は、ペロシ下院議長の事務所だ。 1月3日、ペロシの指示の下、下院はペイアズユーゴ―原則を含む一連の規則を可決した。これには赤字を増加させる法案は、増税か歳出削減で相殺することを義務付けるものだ。 ペイゴー(PAYGO)として知られているルールだが、MMTの精神に反しており、リベラル民主党員の支出法案のほとんどを骨抜きにするものだ。 オカシオ-コルテスは、カリフォルニア州のロー・カンナとハワイ州のトゥルシー・ギャバードと共にこの規定に反対した三人の民主党議員の一人となった。

オカシオ-コルテスは、下院歳入委員会に入ることを切望していたがそれはかなわなかった。この委員会では税、社会保障、およびメディケアを扱うところだ。しかし、彼女は同僚の進歩主義者とともにカリフォルニア州のマキシン・ウォーターズが率いる強力な下院金融委員会の座を射止め、うまいこと失地を回復した。 ニューヨーク州の民主党議員、キャロリン・マロニー氏は、次のように語っています。 「かつての私も周りが抑え込もうとするような若者でした。誰に対してもそんなことをする人を私は信じません。オカシオ-コルテス議員は新しいエネルギーと新しいアプローチをもたらしています。私たちは皆これを受け入れるべきです。」

オカシオ-コルテスが政治的常識を無視していることは、活動家としての彼女の最大の美点である一方、それは代表としてのアキレス腱にもなりうる。 彼女が自分を抑える兆しはない。 「いずれにせよ...」経済アドバイザーのケルトンは言う。「言論がシフトしています。言論スペースが開放されつつあるのです。」